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『愛』なんて無いから  作者: ギプス


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23/39

sid 水無月しあ「贈り物(パンドラ)」

「いらっしゃい。おふたりさん。また悪だくみかい?」

「ええ、そんなところよ。」

「カフェオレお願いします。」

「あいよ。」

「ふふっ寝れなくなるわよ。」

「今日はもとより寝れなさそうだからいいんだ。」

「さすがにあのこを見くびりすぎだったわね。あの子が欲をかかなかったら、面倒くさい事になってたわよ。」

「そうだね。今日は何も言えない。」

 ふふっ、珍しくしおらしい彼に嗜虐心が働く。

「単純な相手だから大丈夫、って、ふふっ。かわいいところがあるのね。」

「やめてほしいな……本当に、この計画ができてから、初めて。」

 わなわなと震える簗型君

 さすがに少し苛めすぎたかしら。

「初めて……興奮した。」

「ふふっ」

 問題なかったみたいね。

「で、音声と写真はとれたのかい?」

「ええ、いいのが撮れてるわ。」

「それはよかった。今日の醜態は君の攻撃さえ済んでしまったら取り返すよ。」

「攻撃だの計画だの、物騒だね。はいカフェオレ、デカフェだから安心しな。」

「お気遣いありがとうございます。」

「ふふっ、それじゃあ。この写真と音声、これだけじゃあ無理でも私がいればいい。

 まったく信頼をしてくれてるのね。」

「まあね。僕を一番ゾクゾクさせてくれたのが君だからね。」

「ふふ裏切るとは思わないの?」

「その時は一番ゾクゾクするのにしてくれ。」

 その目はまるで少年の純粋な瞳のようで、かわいくて仕方なかった。

「まあ、今回は、はなたばちゃんの絶望した顔のほうが、気持ちいいでしょうから、計画どうりにしてあげる。」

 そうして私たちは解散した。

*************************

 計画当日

 授業はつまらないから楽しいことを考える。それが日課なの。

 簗型君の芯からおびえる顔、はなたばちゃんの恐怖にまみれた顔、あじさいちゃんの放心した顔

 あぁとっても、とっても、とっても、スウィート。

「水無月、これの答えは何だ。」

「マリー・アントワネット、ルイ16世、ギロチン。」

「正解。フランス革命は……」

 つまらない授業だわ

 教師の顔は、少し悔しそう。

「年上はタイプじゃないわ。」

 誰にも聞かれないぐらいの声でつぶやいた。

 キーンコーンカーンコーン

 ふふっここからは私の独壇場

 はなたばちゃんの事シアワセにしてあげる。


「ねえはなたばちゃん。今日少し付き合ってくれない?」

「はぁ?なんでさ。」

「久しぶりに遊びたいのよ。」

「はぁ、まあいいですよ。今日はあおちゃま予定あるみたいだし。」

「ありがとう。じゃあ.deepに行きましょう。」

「……うん。」

 はなたばちゃんは何だか嬉しそうだった。


「いらっしゃい。いつものでいいかい?」

「うん。それでお願い。」

「……はい。」

「で、はなたばちゃん。」

「……なにさ。」

「チョーカーつけてくれてたのね。嬉しいわ。」

「はぁ!そんなとこみんなよ!キモ!キモー!」

 キャンキャンと泣き叫ぶワンちゃんはそれでも首輪をちぎらない。

「それでね。新しいプレゼントを用意してきたの」

「へぇー……やるじゃん。」

 かわいいかわいい猫ちゃんみたいに居心地がよさそうに悪態をつく。

「目を瞑ってこれを付けてくれる?」

 イヤホンを耳に付け、つけていたネクタイを外して彼女の目に巻き付ける。

『それじゃあ行くわよ』

 イヤホン越しに私の声が響いているのがビクビクと震える体で理解できる。

 そうして、

『紫陽花あおとつむぐ君の会話よ。』

「へ?」

『そうだ。』

『なんだい?』

『やーくんの好きな匂いはどんな匂い?』


 彼女の思考を嫌な方へ導く

『甘ーい声女の子の声、こんな声聞いたことある?』

「……やめろ。」


『そうだね。僕はこれかな』

『へー、いいじゃん。センス良し』

『ふふ。』


『こんなにフランクに話したことはある』

「……やめろ。」


 ゆっくり光を受け入れさせるようにネクタイをほどく。

『こんな笑顔の彼女の顔を見たことはある?』

 そこには蜂蜜の匂いの香水と

「見たことない。あおちゃまの表情。」

虚を突かれたみたいな顔。私の大好物の顔

「これはつむぐ君からはなたばちゃんへの贈り物だそうよ。」

「なら!この写真はその時に撮っただけで!」

「ほんとうに?本当にそう思ってるの?じゃあ何でそんなに怒っているの焦っているの。」

「なんでそんなに悲しそうにしているの?」

「くっ!それ……は……だって!あおちゃまは、あおちゃまは!あんな顔しなかった。あおちゃまとの会話はあんなに青くなかった!なのに。なのに、なのに!

 思い出すはお前の顔!初めてのデートも初めてのキスも全部、全部、甘くて、甘かったのに、甘かったはずなのに。」

「お前の名前が浮かぶ、お前と食べた味が浮かぶ、お前の顔が、幸せだったいくつもの瞬間、そのすべてに浮かぶ!否定しない自分とにじり寄るお前がいつも視界を埋める。

 その罰なんだろ!ちょっとでもあおちゃま以外のことを考えた!」

「可哀そうに、可哀そうに。可哀そうに!こぉんなに優しいのにはなたばちゃんのことを見ない。理解しない。思考すら奪おうと思わない。

 私はねはなたばちゃん。あなたにシアワセになってほしいの、なのに紫陽花あおは貴方にこんな顔させるんだもの、こんな、間抜けな、乙女にあなたは宝の持ち腐れ。」

 私はネクタイの取れたシャツの胸を押し当て写真を見せる。

 紫陽花あおとキスをしているはなたばちゃんの顔。

「紫陽花あおはあなたをシアワセにできない。」

「ねえ、はなたばつぼみ。私にしてみない?あなたの事シアワセにしてあげる。」

*************************

 ずっとあおちゃまに見てもらいたいと思ってた。

 こっちを見て、私を見て、私だけを見て、他の誰も見ないで、


 そう何度願ってもあおちゃまはたまに構ってくれるだけだった。

 もちろんそれでもよかったし、嬉しかった。

 でも、水無月しあと出会った。

 嫌なやつで、いじわるで最悪。だけどずっと私を見てくれた。あいつは他の奴隷がいるにもかかわらず。ずっと見てくれていた。

 あおちゃまはちょっと要領が悪いところがあった。そういうところも可愛かったけど。私は勝手に嫉妬した。

 でも、理解はできた。あおちゃまは人気者だから。

 でも、同じぐらい人気者の水無月しあは私のことをずっと見ていた。

 勇気を振り絞った告白の前後水無月しあが浮かんでは消え浮かんでは消えた。

 いつからか、あおちゃまの横より。水無月しあの下の方が、心地よかった。

 付き合った後もあおちゃまは時々構ってくれるだけだった。遊び相手は気づいたら増えていた。

 デートだと張り切ってもそれが急にほかのお友達と一緒になるということもあった。

 キスはあの後していなかった。あまりさせてくれなかった。

 おうちも今日は別の友達がいるとかで遊んでくれない日もあった。

 そのたび水無月しあが脳裏をよぎる。

 良いのかな、いいのかな、ちょっとぐらい


 だって私だけを見てほしかった!

 私だけ……わたしだけ……


 最低だな……

 堕ちるなら早く落ちてしまいたい……

 ……もう何も考えたくない……


「ねえ、はなたばつぼみ。私にしてみない?あなたの事シアワセにしてあげる。」


 シアワセ……いいなぁ。がんばらなくてもいいのかな。


 もう見られないのは嫌だな


「私を」


 あおちゃまが先に裏切ったのかな、それなら不可抗力だし、いいよね。

 つむぐんが話してた()()()()

 私が先に見つけちゃった。


私の口の中にあった蜂蜜が流れていく、珈琲の長い匂いが流れてくる。


「私だけを見て、()()()()


*************************


 こうしてつぼみちゃんは私のものになった。

 ふふっ

 これから沢山、愛してあげる。

 ()()()……()()()()()

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