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プロフィールの一番上





 当日。


 青葉野コーラスコンクール。


 会場。


 決して大きくはないけど。


 ちゃんと舞台。


 審査員もいて。


 三位までは順位がついて。


 表彰がある。




 新田先生。


 当然、いる。


 立花奈緒と一緒。


 並ぶと。


 おじいさんと、孫。


 実際。


 新田先生の知り合いに。


 間違われた。


 並んで座って。


 パンフレットを見る。


「三人」


 少し笑って。


「本気できたね」


「本気でしたよ」


 立花奈緒が答える。


「美冬先輩が一位取るって言ってたから」


「ああ、それは本気だ」


 舞台に目をやって。


「楽しみだね」


「はい」


 立花奈緒は、前日練習まで付き合ってたから。


「きっと、期待以上ですよ」


 自信を持って言った。




 舞台袖。


 出番直前。


 楠木七菜が浅い息を吐く。


 小早川千紘。


「緊張する?」


「します」


「今さら?」


 榊原美冬が笑う。


「それでもしますよ」


 先輩二人が笑う。


 楠木七菜が二人を見る。


 ずっと。


 教えてもらった。


 榊原美冬。


 小早川千紘。


 いまから。


 同じ舞台で歌う。


 最初。


 どうかしてるくらい歌が上手くて。


 びっくりして逃げた。


 動画を撮らせてもらって。


 なにがなんだかわからなくて。


 榊原美冬が教えてくれた。


 質問して、練習して、上手くなって。


 でも。


 目標との距離は全然縮まらなくて。


 毎日。


 すこしずつ。


 一週間にひとつ。


 上手くなって。


 指揮もやって。


 色んなことをやって。


 いま。


 歌う。


 緊張もするけど。


 楽しみ。


 三人で歌うのが。


 楽しみ。


 チーム名が呼ばれて。


 三人が舞台に出る。


 拍手。


 横に並んで。


 客席を見渡す。


 いる。


 新田先生と、立花奈緒。


 新田先生は腕を組んでいる。


 楠木七菜、少し笑う。


 肩の力。


 抜けたかも。


 伴奏が始まって。


 三人。


 息。


 吸って。



 歌う。



 最初に先導するのが。


 榊原美冬。


 綺麗。


 そこに小早川千紘の声が重なる。


 柔らかい、本当に優しい声。


 楠木七菜は。


 それを聴いて。


 自分も歌う。


 三人でひとつ。


 自分だけで歌わない。


 意識。





 客席。


 新田先生、腕組み状態。


 目を見開く。


 腕をほどいて。


 身を乗り出し。


 聴く。




 曲が進む。




 練習で。


 榊原美冬を小早川千紘に寄せた部分。


 小早川千紘の。


 柔らかい歌声に。


 榊原美冬の綺麗な声が包まれるように。


 そして。


 楠木七菜がその後ろ。


 でも、隠れて見えないのではない。


 ひとつの歌が。


 きちんと三色。




 声が重なって。


 響く。


 響く。


 響く。




 楠木七菜。


 歌いながら。


 思う。


 ちょっと。


 指揮に似ている。


 二人の歌を聴いて。


 自分が入る。


 それで、ひとつになる。


 でも。


 前に立って。


 ひとりでやるんじゃない。


 いま。


 三人。


 最高に。


 楽しくて。


 最高に。


 気持ちいい。




 最後。


 声が重なって。


 ゆっくりと。


 消える。




 静寂。


 そして。


 拍手。


 大きい。




 楠木七菜は。


 少し息を吐いて。


 榊原美冬を見る。


 小早川千紘を見る。


 少し、笑う。


 三人で。


 礼。





 客席。


 立花奈緒はまだ拍手している。


 三人が舞台から見えなくなってから。


 やっと拍手を止める。


 隣。


 新田先生が笑っている。


「前より、三人になってた」


「ですよね」


「前から三人とも上手かったし、合唱も上手かったけど」


「はい」


「今日は本当にひとつだった。驚いた」


「でしょう」


 立花奈緒。


 ご満悦の。


 後方腕組み状態。


 どやっ。




 結果発表。


 参加者並ぶ。


 楠木七菜、やっぱり緊張。


 小早川千紘、普通。


 榊原美冬、普通。


 楠木七菜、小声。


「美冬先輩」


「なに?」


「緊張しないんですか?」


「する理由ある?」


「ありますよ」


 できるだけ、小声。


「一位じゃなかったら?」


 榊原美冬。


 少し考えて。


「次、もっと良くする」


「……」


 そうだった。


 そういう人だった。


「そうですね」




 司会が順位を発表していく。


 三位。


 二位。


 どちらにも、三人のチーム名は呼ばれなかった。


 そして。


「第一位、最優秀賞」


 間。


 間。


 間。


「青葉野高校吹奏楽部歌うま女子高生!」


 三人の。


 チーム名が。


 呼ばれた。


 三人とも笑っている。


 楠木七菜。


「取りましたね」


 榊原美冬。


「取ったわね」


 小早川千紘。


「うん。良かった」


 楠木七菜、嬉しい。


「一位です」


「だから言ったでしょう、一位を取るって」


「言っていましたね」




 表彰。


 大きな拍手。


 新田先生。


 また腕を組んで。


 頷いている。


 口元。


 にやにやしている。


「先生」


「なに?」


「なんでそんな得意げなんですか?」


 立花奈緒の。


 容赦のないツッコミ。


「いいでしょ、別に」


 笑う。


「僕が誘ったんだから」


「そうですね」


 立花奈緒も笑う。


「でも、君だって」


 立花奈緒を見て。


「同じ顔してる」




 こうして。


 青葉野コーラスコンクールは。


 終わった。




























 数年後。


 芸能事務所。


 部屋。


 榊原美冬。


 大人になって。


 歌手になって。


 活躍している。


「美冬さん」


 マネージャー。


 女性。


 榊原美冬より年上。


「はい」


「ホームページとかコンサートパンフレットに記載するプロフィールなんですけど」


 プロフィール。


 定番。


 名前、生年月日、来歴。


 など。


「受賞がとにかく多くなっちゃって」


「ええ」


「情報量も多いので、一番上からいくつか省略しようかと思うんですが」


「駄目よ」


 即答。


「え?」


「一番上は、消さないで」


「はあ……」


「他のは消してもいいわ」


「そうですか」


「ええ」


「……」


「これって、そんなにすごい大会なんですか?」


「さあ」


 榊原美冬は、それだけしか答えない。


 マネージャーは、まあいいかと。


 そんな表情で。


「わかりました、一番上は残してそれ以外で調整します」


「ええ、それでお願い」




 いまや。


 日本を代表する歌姫になった。


 榊原美冬。


 輝かしい経歴と。


 多くの受賞を積み重ねている。


 そんな。


 榊原美冬の。


 プロフィールの一番上。


 決して消されることがなかった。


 一行。





 青葉野コーラスコンクール 一位・最優秀賞






これにて、青葉野高校吹奏楽部歌うま女子高生の物語は完結です。

お読みくださりありがとうございます。

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