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行き場のない冒険家であります!

 掲示板の依頼は、アカネさんの言っていた通り様々な種類が見られる。

 その中から、初めてでもできそうな依頼を探したいのだが、剣術を教えてほしいだとか、雑草を抜いてほしい。庭の掃除、さらには部屋の掃除まで。

 最後のは自分でやれとしか思えないが、とにかくお手伝い系が多い。


 せめて、せめて採取を……。


「ん? なにこれ。『初心者歓迎、アットホームな冒険を一緒にしませんか。依頼内容:一日一緒に冒険するだけ』……うわぁ」

「え、面白そうじゃない??」

「いや、これダメなやつでしょ。なんか怪しいよ」


 アットホームな冒険ってなんだよ。一日冒険するだけって、依頼だからそっちの命令は絶対ってことじゃん。それなら何も受けずに薬草採取するね。


「やーやーやー! 吾輩の依頼に興味があるでありますか!」

「え……!?」


 誰!? いや冷静になったら依頼主だってわかるんだけどいきなり話しかけてこないでよ怖いよ。

 メガネを掛けた銀髪の女の人だ。服装は茶色いポケットの多くついた服に、同じく茶色の帽子。帽子には何やら白い宝石がはめ込まれている。何それ、それも防御力上げる装備だったりする?


「吾輩の名前はアバンであります! ぜひぜひ、吾輩の冒険に参加してほしいのでありますよ!」

「エファです。お断りします」

「ポコンでーす! 参加したいです!」

「ちょっと?」


 何を勝手に言ってるんですかねポコさん。絶対関わっちゃいけませんよこういう人は。

 女だからって信じちゃダメよ。


「本当でありますか!?」

「いや、嘘。ほらポコ行くよ」

「え、うん。ごめんねー、えっちゃんがダメってさー」


 ポコは私の言うことを素直に聞いてくれた。ふふん、見知らぬ怪しい変人よりも私の方が信頼されてるんだぜ。いや、それは当然では? ふふん、当然なんだぜ。特に嬉しくもないぜ。


「待つであります! 待って! ほんと待って!!!」


 肩を掴まれるが、それを無視して強行突破。しかしアバンは諦めない。語尾にありますを付けられなくなるくらいには焦らせることはできた。

 ここまでしてお願いするとなると、何か理由があるのかもしれない。


「なに」

「ヒェッ……いや目が怖いでありますよ」


 仕方がないと振り向きながら声を出したのだが、思ったよりも睨んでしまった。邪魔すんなみたいな心の声が伝わった可能性がある。以心伝心できてんねぇ!


「話は聞いてあげる。困ってるんだよね?」

「お、おお……ちっちゃいのにしっかりしてるでありますな」

「よし、帰ろう」

「すまないであります! すまんなんです!!」


 再び肩を掴まれるが知るか。私は帰るぞ。小さいのとしっかりしてるのは関係ないだろう。


「とまっでえええーーー」

「ちょっ!! やめてよ!」


 ついに掴まれるのは肩ではなく腰になっていた。両手を腰に回して全体重を掛けてくる。お、重い。

 ずりずりと引きずる。く……いつまで掴んでるんだ。


「あーもう! 話だけだよ!?」

「ありがとうであります! ありがとうであります!!」


 うん、これで失礼な態度はとらないだろう。


「実は、吾輩は冒険家で、世界を探索することが好きなのであります。荷物持ちや運搬も極めて、いざ仲間と探検しようと思ったのに、数回の探検の末に追い出されてしまったのであります……」

「アバンちゃんかわいそう……」

「そうだね、ちょっと酷いかも」


 それだけ聞くと、なんとも可哀想な話だ。ただ弱いとか、使えないって理由だとしても、それで追い出されるのは可哀想だ。少しは戦えるようにするとか、やりようがあるだろうに。


「ちなみに、なんで追い出されたの?」

「吾輩が色々な場所に行ってしまうからであります。珍しい場所を見つけると、仲間を置いて先に行ってしまうんであります……」

「あー、冒険家さん、そいつはあんたが悪いよ」


 冷静に考えて、年上のおじさんのような態度で話した。好き勝手いろんなところに行ってしまう仲間。私だったらよっぽど仲良くない限りは呆れる。


「なんででありますか!?」

「だって数回で追い出されたんだよね? なら注意されても治らなかったってことじゃん?」

「だって、自分じゃ止められないんでありますよ。気を付けたいと思っても、気付いたら突っ走っていて……」

「そいつは厄介だね」


 仲間だからこそ怖いだろう、そんなのは。

 それこそ心配するし、毎回そんなことをされたら心臓が持たない。


「で、ここまで聞いてどうでありますか? 行きたくなったでありますよね?」

「そんなわけないよね」

「行きたーい!」


 黙っててくれ。


「何かメリットが無いとね」

「荷物持ちができるでありますよ!」

「お疲れ様でーす」


 またもや立ち去ろうとする雰囲気を察したのか私が動く前にアバンが掴んでくる。はぁ。


「荷物持ちと言っても、ただの荷物持ちじゃないであります!! 吾輩は精霊の加護を受けているんであります! 魔獣程度なら、簡単に街まで運べるんでありますよ!」

「な、なんだってー!」

「てー!」


 ポコと一緒に勢いよく驚いてみたが、すごいのかどうかわからない。でも魔獣を運べるのはすごいよね。

 なら、なかなか有能なのでは?

 私は一旦自分の中のアバンの評価を改め、しっかりと話を聞くことにした。

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