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移動手段が欲しいよ……

 魔獣を運べる。そんな人が旅に同行すれば、楽になるなんてものではない。運べないことで無駄になってしまう素材や肉などを安全に街まで運ぶことができるのだ。荷物運びが楽になるだけではなく利益も上がる。

 そうなると話は別だ。この子は今仲間がいない、一緒に冒険をして、役に立ちそうならば仲間に誘ってみてもいいかもしれない。


「詳しく聞かせて」

「きゅ、急にグイグイ来るでありますな。おほん、先程も言った通り、吾輩は精霊の加護を受けてるんでありますよ」

「うん、なにそれ」


 まず精霊の加護ってなに。単純にパワーアップですか?


「えっちゃん、精霊の加護って言うのは、精霊が素質がある人間と契約して、手助けしてくれることを言うんだよ」

「つまり、その精霊に手伝ってもらって、魔獣を運ぶと?」

「そうでありますな。あ、でもその場合は手伝ってもらうと言うよりかは空間を提供してもらう、の方が正しいと思うでありますよ。もちろん手伝ってもらうこともありますが」

「なーるほど」


 つまりは、素質がある、天才でありますな?

 ふむ、評価が変わりまくってるぞ。その暴走気質、この目で確かめてやろう。


「じゃあ、少しだけならいいよ。一緒に冒険しよう」

「ほ、本当でありますか!!! いよっしゃあああああああああ!!」


 天に向かって吠えるアバン。そんなに嬉しいか。


「一緒に冒険するの? わーい! 行こう行こう!」

「やったでありますなぁ!」


 ポコと一緒にハイタッチするアバン。こうしてる分には面白い人なんだが、果たして冒険に出たらどうなるのか。


「とりあえず、依頼主はそっちだからどこに行くか決めていいよ」

「え……? じゃあ、今日は東へ進むであります! いざ、太陽の沈む方角へ!」

「おっしゃー!」


 んー曖昧だけどまあよし。そして太陽は西に沈んでいた気がするがここはツッコミポイントだろうか。

 元々城下町の外に出る気満々だった私達は、いつでも探検ができるようにしていた。抜かりはないぜ、さあ冒険に出よう!


「吾輩が隊長であります! ついてくるであります!!」

「サー! イエッサー!」

「はいはい、隊長、早く進んでください」


 城下町から出て広大な草原を進んでいく。

 ここで気づいたんですけど、隊長を先頭に立たせるのは危ないのではないだろうか。だってそうでしょう? 突っ走るんだから、後ろにいた方が絶対にいい。

 まあ、今回は依頼主という立場だから仕方ないか。大体、旅をしていたらそういう状況だってあるだろう。最大限危険な状態で、暴走を受け入れる……は無理でも止められるのなら十分だ。


「何もないです隊長」

「ま、まだ出発したばかりでありますよ!?」


 いやー、移動手段がないのも問題だね。冒険は楽しいものだが、こういう何もない場所での移動は退屈なのだ。

 次の国に移動するまでに入手すればいいや、みたいに考えていたが、お金稼ぎもあるしこういう時にあると便利なのだ。なんなら荷物持ちよりも馬車を手に入れる方を優先させてもいいかもしれない。


「馬車借りればすればよかったのにー」

「えっ、借りられるの!?」


 初耳である。


「うん。貸し出してる馬小屋があるはずだけど。え、隊長に従うんでしょ? 隊長が言わなかったから必要ないのかなって」

「あります! ありありでーす!」


 足痛いよおおおお!!! やだよおおお!!! もう歩きたくないよおおおお!!

 ないよっ!! 馬車ないよぉぉぉぉ! ついでに剣もないよっ! 別に必要ないけど。そして毒武器もない。別に必要ないけど。


「だって、あの山まで行くにしても結構歩くよ!? しかも、しかもだよ? 今から戻って馬車を借りるのも大変すぎるよ!! やっべーい!」

「ふむ、ではこれを渡すであります」

「なにこれ」


 隊長……じゃなくてアバンがビンを取り出す。ビンの中には黄色い液体が。なんか見覚えあるんだけど。


「疲れにくくなるポーションであります。苦痛に耐えられぬ時に飲むであります」


 グイっと一気に飲み干す。ふいー、効くわー。ちょっと酸っぱいのは何なんだろう。果物かな? ポーションに味求めてるのすごいね。


「もう飲むでありますか!?」

「だってさあ、もうそろそろ草原じゃなくなってくるんだよ? 歩きにくくなって疲れやすくなるんだから、早めに飲んだ方がいいでしょ」

「うう……吾輩なりのお詫びの気持ちだったんでありますが……まあ使い方は人それぞれであります」

「あーなんかごめんね。さ、早く行こうぜっ!」

「絶対その元気はポーションのせいだ!」


 アバンから聞いたアバンの暴走話よりも、私の方が暴走してない??

 これはまずい、冷静になれ。KOOLになれエファ! 私はそういう担当ではないはずだ!

 そう、私はいつも冷静で清楚な凄腕ハンター。こここっ、この程度で取り乱したりしない!! してるねこれ。


「とにかくっ! 今はから元気を出してでも進むしかないと思うんだよね」

「まあ、そうだねぇ」

「というか、隊長は吾輩でありますよ!!」


 どういうわけか全員が元気を取り戻した。ふむ、三人だとにぎやかさがまるで違う。ポコも今まで以上に楽しそうだ。これなら、仲間に誘ってみるのもありかな。

 そう考え始めたタイミングで、山の奥から獣の叫び声が聞こえた。叫び声ではあるが、悲鳴ではない。ただ、大きな声で叫び、縄張りを主張しているような声。


「今の……」

「魔獣の可能性もあるけど、普通の獣かもしれないよ。いずれにしても気を付けないとだけど」

「俄然やる気が出てきたであります! うおおおおおおお!」

「隊長!?」

「待ってアバン!!!」


 アバンの初暴走は緩やかなものだったが、突っ走ってしまうという特徴はなんとなくわかった。

 その後は、アバンの後ろを歩きつつ、いつでも追いついて止められるように気を付けながら歩いた。

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