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シャットダウン・アンサーズ ‐答想聖解王と問題解決部の少年少女‐  作者: 羽波紙ごろり
【懐かしの、夏の日】
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#35 へえ、じゃあ君の名前は

 あれは、暑い夏の日の出来事であったと、少年は思い出していた。



「ふぃー、暑いなぁ……」



 彼はこの日、夏休みの宿題が嫌で、家から脱走していた。冷房の効いた部屋で、親にバレないように漫画を読むよりも、親の目が届かない家の外で堂々と漫画を読む方が、気楽であると感じていたからだ。それで、日光が当たらない涼しい場所を探していた。



「ここは、確か」



 そして、着いた場所。そこは四季市でも古い歴史を持つ、読神神社であった。



「丁度、良いや。ここで休憩しよう」



 階段を上がり、神社の境内に辿り着く。今日は特に祭りなどのイベントがある日ではなかったからだろう。境内には誰もいなかった。


 少年はとりあえず、何も考えずに賽銭箱へ五円玉を投げ入れる。彼なりの礼儀のつもりであった。彼は近くの石段に座り、漫画を読み始める。



「今月号も面白いな、『ハザードじいさん』」



 昔から漫画が好きであったと、この時を振り返り、その気持ちを思い出す。少年は他にもカードゲームとか、ゲーム機とか熱中していた。


 けれども本当に熱中していたことは実はなかったのかもしれない。漫画も、カードゲームも、全部現代の男の子なら喜んで熱中するものばかりだ。故に、これらにハマったのも彼が一般的で捻くれることもない素直な子どもだったからだろう。この素直さを少年の両親は褒めてくれるが、当時の彼には自分自身の素直さがピンとこなかったのである。


 だからだろうか。そんな素直な少年が彼女のことを気になったのは――



「ねえ……」


「あはは!」


「ねえってば……」


「うん?」



 後ろから呼ばれたような気がしたので、振り返る少年。そこには巫女服を着た、彼と同い年くらいの女の子が立っていた。



「わっ! びっくりした!」



 少年は漫画を閉じ、立ち上がる。



「あなた、誰……?」


「僕? 僕は兎耳砂雄うさみすなお! 君は?」



 少年は彼女に名前を聞いた。名前を聞くと皆答えてくれる。子どもの頃はそういうものだと思っていた。名乗りあえば、皆、その瞬間からお友達。信じており、疑っていなかった。



「え、私……?」


「うん! 名前は何ていうの?」



 でも名乗る名前が無いなら? 当然、答えられない。



「私、名前はないの」


「名前がない? それって、どういうこと?」



 当時の少年にとって、衝撃的だったこの言葉。彼女には名前がなかった。あったのは――



「私、皆には【禁書庫アーカイブ】って呼ばれているけど、名前は、ないの」


「あーかいぶ? どういう意味の言葉なのさ?」


「書庫っていう意味だって、大巫女姫様は言っていたの」


「書庫?」


「本棚のことよ」


「へえ、じゃあ君の名前はしょこちゃんだね!」


「しょこ?」


「うん!」



 これが彼女との――読神書子との出会いであった。




     †




「さぁて、帰ってきたよ! 四季市に!」


「そうね」


「テンション低いなぁ。メロンたちに心配掛けちゃうぞ?」


「低くもなるでしょう。あなたが市境の検疫所で他の女とイチャイチャ――」


「誤解だよ! あれは、書子さんの話をしていただけだよ!」


「へえ? どんな話をしていたの?」


「ふふん! 僕の彼女はこんなにも美しく、可憐で、最アンド強! ってことさ!」


「私、あなたの彼女になったことは一度もないけど?」


「問題ないよ。だって、これからなってくれるんでしょ?」


「あなたは昔から――ずっと、この先もそういう性格なのね」


「素直な兎耳砂雄ですからね!」




     †





「もう、いくつ寝ると~、お生姜ツー」


「ポアロくん? 何か、言っていることがおかしいですね」


「おや、お生姜ツーの様子が――」


「いや、様子がおかしいのは馬鹿兄貴の方よ」


「おめでとう! お生姜ツーはお生姜スリーに進化した!」


「おい、歩亜郎! 回転寿司のガリを必要以上に取るな!」


「ごめんなサーモン」


「ショウガないな!」


「ぶほっ!」


「キート、汚いわ」


「だ、だって!」



 拝啓――読神書子様。


 書子お姉ちゃんが砂雄お兄ちゃんに付き添ってから月日が経ちました。



「ん? 乃鈴様、何を書いているでござる?」


「お手紙なの」



 メロンと私は元気に過ごしています。お二人はいかがでしょうか。



「書子様たちに?」


「うん」



 メロンは相変わらず自分に厳しいですが、昔よりは柔軟になりました。周りの人たちの影響を、良い方向で受けているのかもしれません。


 お友達の葉子ちゃんとキートくんは喧嘩もしていますが、本当は仲良しです。私は二人が仲良くする光景を見て、ニッコリしています。ニッコリ、ニシニッコリ。ニッコリ舎人ライナーの勢いです。このダジャレは葉子ちゃんのお兄ちゃんに教えてもらいました。


 部活動では、部長のお兄ちゃんのおかげで楽しく過ごしております。


 最近、部活動に参加するようになった三角巾のお姉ちゃんたちはとても優しいです。きっと書子お姉ちゃんたちとも仲良くなれると思います。


 もうすぐ年末年始です。ご都合よろしければ、一緒に神社を盛り上げませんか。



「ほほう、きっと喜ばれると思います」


「そ、そうかな」


「ジンジャーは、デンジャー!」


「よっ! 笑いのトリプルアクセル!」



 神社を応援で、ジンジャー・エール作戦――こほん、慣れないダジャレは言うものではありませんね。いえいえ、こちらの話です。それではお待ちしております。


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