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魔王の娘に召喚された俺氏  作者: 星屑の涙
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第3話:この世界は平和ではない


 さて、パーティーが始まるまで何をしようか。正直かなり暇である。

 日本にいた頃はスマホやゲームで時間を潰すことができたがこの世界には電波は通っていない。ポケットの中のスマホは今やただのガラクタも当然である。たとえ使えても充電器はないのでやはりガラクタである。

 仕方がないので例の呼び鈴で朝食を持ってきてもらうついでに何か暇を潰せそうなものを頼もう。

 しばらくしたらレミがやってきたので朝食と暇を潰せるものを頼んだ。


「お待たせいたしました。朝食と教本です」


 教本か。この世界の文字や数字は全くわからないからなかなかありがたい。

 だが、聞かなくてはならないことがある


「この本に載っている文字って共通なのですか?」


「ええ、一応魔文字というものもありますが、教養があるものでしか読めず難しいので基本はANCARE(誰でも読める文字)(アンカレ)と呼ばれたものを人間や魔族に限らず使います。ちなみに発音などは文字に触れれば発してくれますのでご安心を。一応高価ですので大切にお使いすることをお願いします。あと、メモ用紙もご用意しましたのでご自由にお使いください」


 この世界では本は高価なのだろうな。今の日本はやはり恵まれているな。そういえば、サラさんは日本に来ていたようだが機械などの文明の利器を導入しようとは思わなかったのだろうか。いや、思っても日本の貨幣を持っていないか。なら、結婚したあと様々な機器を導入してみよう。やはり現代に生まれたからには機械に恋しいのでな。

 さて、これはこれとしてまずは数字から勉強するか。


 1:ウノ      11:オンセ        21:ベインチウノ

 2:ドス      12:ドーセ        22:ベインチドス

 3:トレス     13:トレセ        23:ベインチトレス

 4:クアトロ    14:カタルセ       24:ベインチクアトロ

 5:シンコ     15:キンセ        25:ベインチシンコ

 6:セイス     16:ディエシセイス    26:ベインチセイス

 7:シエテ     17:ディエシシエテ    27:ベインチシエテ

 8:オチョ     18:ディエシオチョ    28:ベインチオチョ

 9:ヌエベ     19:ディエシヌエベ    29:ベインチヌエベ

 10:ディエス   20:べインテ       30:トレインタ


 意外に難しい。本当に共通語かよ......

 そう思いながらペラペラとめくっていくとよくわからない文字列を見つけた。

 先程言われたように文字に触れてみると


「 あ 」


 ほう、これは「あ」と言うのか。ということはこれは?


「 か 」


「か」か~、そこは「い」だろ~、と一人ツッコミをしながら本をめくり続けているうちに昼が過ぎた。

 さすがに腹が減ったのでまた呼び鈴を鳴らし昼食を持ってきてもらった。

 その後、俺はできるだけメモ用紙に使えそうなものは書き込んだ。

 文字のほうはなんとか覚えられそうだが問題は数字だ。馬鹿みたいに長ったらしくて覚えられない。まぁ、文字のほうも不安なので同じくメモしておいた。

 そうこうしているうちにパーティーの準備は終わったようで渡されたスーツを着て俺はパーティー会場へ連れられた。

 正直こういうことは初めてである。どう振る舞えばいいのだろうか。

 わからなかったのでしばらく一人でふらついていたが突然、


「春月様、どうなさりましたか?」


 この人は確か......


「えっと、シアさんでしたっけ?」


「はい、そうでございます。わざわざ私の名前を覚えていただき恐縮です」


「いえいえ、名前を覚えることは当然ですよ。ところでサラさんはどこにいますか?」


「サラ様が春月様が暇なら連れてこいというご命令がございましたので丁度よかったです。こちらです」


 そういうと人混みを避けながらパーティー会場の波を切り抜けた。

 ただでさえ羽が生えていたりして後ろとか通りづらいのによく簡単にこの人混みを避けられるな......そうこう考えているうちにサラさんのところまで案内してくれた。

 

「サラ様お待たせしました。春月様をお連れしました。それでは失礼します」


 俺はシアにありがとうの意味をこめたお辞儀をした。


「パーティーの方はどうで......と聞くまでもないようですね......

パーティーは疲れますからね、リラックスするために何か飲むものを持って来ましょう」


 そんなに疲れたように見えたのだろうか。

 まぁ俺はわかりやすい人間らしくよく顔に出ると言われるし、自覚してなくても休ませてもらおう。


「春月殿はコーヒーと紅茶どちらが好みで?」


「あー、そうですね......コーヒーにします。

ちなみにどちらとも僕の世界のものと味は同じかもしくは似ていますか?」


 同じ名前で得体の知れない飲み物だと困るからな。聞いておくことに損はない。


「ええ、全く味も見た目も同じでございますよ」


「それなら良かった」


 ちなみに俺は通ではないがコーヒーは大好きであり、特にタイガーコーヒーの匂いが好みである。

 味はよくわからんが......


「どうぞ、大したものではありませんが」


 それでは早速頂こう。

 ふむ、この芳ばしい香りはなかなか好きな方であり、味も美味しい(多分)。


「気に入られましたか?魔界では最高級のコーヒーなのですが」


「ええ、とても気に入りましたよ。特に香りがいいですね」


「それなら良かったです。実はこれは私の菜園で作ったのですよ。魔界最高級などと言いましたけど......」


 見栄を張ったためか少しはにかんで笑った。


「そうだったのですね。でも、俺は好きですよ?」


 実際好きな香りだったしな。もちろん俺のバカ舌では味はわからんがな。


「あ、そうそうサラさんは何か御用があったのでは?あまり急ぎではなさそうでしたが」


「実はですね、春月殿を一週間後にプリメランに転移することになっていましたが、先程通信魔法による伝達で人族を主体とした連合軍により砦の一つが陥落したようです......

そういうわけでプリメランへの出向は今日になりました」


 言葉を失った。

 砦が陥落......?

 ちょっと異世界の住人さん、まだ俺はこの世界に来たばかりなんですよ。

 いきなりイベント発生は待ってくださいよ(汗)


「ちょっと待ってくださいよ!かなり急ぎの部類なのになんでそんな悠長にしているんですか!」


「いえ、外の方はかなり緊張が走っています。ですが、簡単に表沙汰にすると確実にパニック状態に陥ることが予想できるのです。

なにせ、[地獄の番犬]ジェフの部隊が壊滅し、ジェフ自身も重体らしいのです......

ジェフも衰えたとはいえ300年前の勇者一行によるもの以来の異常事態です」


 ぶっちゃけかなりマズイのでは......


「ちなみにこのことはパーティーの参加者はお知りになっていますか?」


「一部の者はすでに伝えられております。参加者は基本我々の傘下の者が多いので、その傘下の統率者に伝えればあとは転移魔法により安全に送れます。転移魔法自体妨害されることはないので」


「それなら良かったです......がサラさんたちはどうするのですか?」


「......父の命令により、私も春月殿と供にプリメランに赴きます。つまり、亡命です。せめて私だけでも生き残らなければいけませんからね......」


 どこかの異世界転移者ならこんな事態を簡単に打破できるのだろうな。

 なんて俺は無力なのだろうか......

 あまりにも急展開すぎて頭が追いつかない。だが冷静になれ、いずれ俺もこのような局面に直面するのだ。ここはもう平和な国日本ではない、別のものなのだ。今から慣れろってことだ。

 そう自分に言い聞かせ深呼吸をし、


「それではサラさん、プリメランへの仕度をしましょう」


「ええ、それではレミたちを呼び早急に仕度の準備をし、春月殿を召喚した召喚の間へ集合しましょう」


 そこからは大急ぎで準備をし、レミに連れられ召喚の間へ到着すると魔王様がサラさんと供に待っていた。


「春月殿よ、転移されて早々にこんな騒乱に巻き込んでしまい申し訳ない」


 魔王様は片膝をつき頭を下げて謝罪した。

 俺は思わぬことで慌てて手を振りながら、


「いえいえ、攻め込んでくるなんて誰も予想つかなかったのでしょ?なら、仕方ないですよ」


「そう言っていただくとありがたい。

 それでは早速転移魔法を行うので位置についてくれ」


 俺はおとなしく位置についた。

 出来るだけ早くここからサラさんと供に抜けた方が魔王様のほうは気が楽であろう。

 もちろん人の世界に踏み込むので、サラさんは危険な目に会う可能性は高い。

 だが、いつ攻められるかわからないこの現状、プリメランとやらへ逃げ込んだ方が安全であろう。

 などとあれこれ考えているうちに


「準備は完了した。それでは発動しようとするがサラよ、春月殿に抱き着きなさい」


 今なんと!?


「春月殿、何を照れている!中学生ではあるまいし」


「なんでそのネタを知っているんですか......」


「気にするでない。それより、ほれ、早く!転移の時下手すると離れ離れになってしまうぞ!」


 そんなこと言っても......

 女性とこんなことは初めてである。

 だが、意を決して痛くないように抱きしめた。

 女性というものはこんなに柔らかいのか(特に豊満な胸が)......

 これを知らずに俺は生きていたのか、生きてて良かった!

 サラさんも満更ではなさそうに嬉しそうに見えるし、まぁ、童貞なんでそう見えただけかもしれませんけど?だが、俺を転移させたくらいだし負の感情はないであろう。


「ゴホン、それではよろしいかな?」


 そういえば魔王様はおそらく心を読めるのだったな。

 ということは......すみませんでした。


「......それでは転移魔法を発動させる」


 そいういうと床に紫色の二重の円と五本の柱が浮かび上がった。

 改めて思ったが俺を転移するときこんなことが起きていたんだな。

 全く覚えていないが、そんなことは今はどうでもいい。


「サラを頼んだぞ......!」


 はい


 そう答える前に視界は滲み、俺はプリメランであろう町の外にサラさんを抱きしめながら突っ立ていた。


数字はスペイン語をまるまるパクりました。

誤字・脱字があればご指摘お願いします。

意見・感想お待ちしております。

文字数:3978文字

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