第八話 海の街リーフェル
「よし、準備が整い次第出発だ。リンカもそろそろ戻ってくるだろう。」
「おぅよ。あと少しだからな、夕方には森も抜けるだろうし、楽しくいこうぜ!」
「アレル、ちゃんと気を引き締めていけよ…。まったく…。」
灰狼の牙のメンバーはなんだかんだバランスのいいチームだ。気を許し合っているのが見て取れる。ロランも最高のチームに出会えたことが嬉しくなっていて、リーフェルで別れるのが惜しいとまで考えるようになっていた。
順調に森を抜けると、そこには平野が広がっていた。空と太陽と草の緑が素晴らしいコントラストでロランを出迎えた。そして、ずっと先の方にかすかに見える海とリーフェルの街が見えていた。
「ねぇ、あれがリーフェルだよね?それに、あれ…海…初めて見た…。」
「あぁ、そうか。海を見るのは初めてなんだな。海の水は飲むなよ。しょっぱいから…。」
「海ってしょっぱいの…?なんで?ねぇ、なんで?」
「し、知るかよ。しょっぱいからしょっぱいんだよ。」
うまく説明が出来ないみたいで話をはぐらかされてしまった。
(でも、ちょっとぐらいはいいよな…後で飲んでみよ。)
リーフェルが見えてからだいぶ歩いてみたが、なかなか到着せず結局、森を抜けてから半日が経っていた。
大きな街に塀で囲われており、門には兵士が立っていた。
「あそこの兵士にギルドリングで身分確認してから入る事が出来るんだ。色までは見ないはずだから安心していい。」
「そうですか…でもなんだか緊張してきました。初めてだから…。」
「大丈夫だよ。何かあったら、庇ってやるからよ。」
ロランは胸の高鳴りを感じていた。灰狼の牙のメンバーより先に身分確認出来るように一番前にもしてくれた。何かあれば後ろから庇ってくれるのだろう。
兵士の近くには身分確認のための装置があった。ギルドリングをかざして、みんな通っている。いざ、ロランの番が来た。ドキドキしながらギルドリングをかざす。すると、兵士の眉間にしわを寄せて見つめてきた。
「お、お前…。」
(え、バレた…。なんで…ここでも…。)
「従魔がいるな。岩モグラ?珍しい従魔連れているな。ちゃんと見張っておけよ。街で暴れたりしたら、討伐するからな。」
「キュィ♪」
「大丈夫だよ。今まで一緒に旅してきたけど、悪さなんかなかったぜ。」
「灰狼の牙かお前らが一緒だったんなら心配いらねぇか。」
無事に門番を通過する事が出来た。ロランの心臓は今にも飛び出そうになっていた。中に入ると人間たちが溢れかえり、混雑していた。賑やかな声が響き合い、香りも海が近いだけあって磯の匂いで充満していた。グランバルドとは違う香りで、新鮮な気持ちとなった。そして、日差しが入り、明るく空も見えている。灰狼の牙と街の中を散策する。すると、何故かロランの方にみんな目をやり、こそこそと話をする場面が見受けられた。注目され、ロランは居心地の悪さを持ちつつ、灰狼の牙に付いていった。
「ハハハ、皆ドワーフ族が珍しいんだろう。大変だな人気者は。」
「そんな…。」
アレルは場を和まそうと冗談を言ってくれていた。ロランは恥ずかしくなって、顔を赤らめている。
まず、灰狼の牙と向かったのは、冒険者ギルドだった。店が立ち並ぶ先に冒険者ギルドの建物があるらしい。繁華街に立派な建物が目立っていた。
「よし、ロランはここでギルド登録するんだろ?これから頑張れよ。俺たちは依頼の報告をして終わりだから。ここでさよならだな。」
「ありがとうございました。助かりました。」
「いいってことよ。また会ったら、話をしようぜ。ガンテもまたな。」
「キュィ~♪」
最後にリクが優しくガンテの頭をなで、灰狼の牙と別れることになった。初めての地上の街リーフェル。見るものすべてがロランにとって、新鮮でワクワクしていた。客引きの声、笑顔のお客さん、そんな姿をロランは遠くから見つめていた。
いざ、冒険者ギルドへ。そして、商人ギルドで採取の依頼も見て回ろうと思っていた。まずは冒険者ギルドの登録をしよう。鍛錬をお願いして、一人でも戦えるように強くなることが目標だった。
冒険者ギルドの入り口の扉を開くと、異様な雰囲気でロランの方を見る冒険者たち。
「なんだ、あのチビ…。ドワーフ族じゃねぇか…何してんだ、こんなところで…。」
「おいおい、なんだあいつ…いっちょ前に冒険者か?」
「なんだあいつ…アハハハハ……」
入口に入ってすぐ、大人の冒険者たちに蔑まれ、からかわれ、変な目を向けられるロラン。そんな目線も気にしつつも、受付に冒険者登録をする。
「はい、いらっしゃいませ。リーフェル冒険者ギルドへようこそ。」
「あの…冒険者ギルドに登録したいんですが…」
「はい、ギルド登録ですね。ギルド登録には銀貨2枚になります。」
「え?お金要るんですか?ちょっと待ってください。」
ロランは入れた記憶のないお金を探すふりをしていた。すると、小さなリュックのポケットに見覚えのない麻の小さな袋と紙切れが入っていた。そこには母の字で『必要な時に使いなさい。大好きよ、ロラン。』と、一言書いてあった。袋の中身を確認すると、お金が入っていた。銀貨5枚、銅貨5枚が入っていた。母に感謝をしながら、受付に銀貨を2枚差し出した。
「申し訳ありません。この硬貨は利用できません。」
「え?なんでですか?お金ですよね?」
「それはそうなんですが、こちらの硬貨はドワーフ硬貨と申しまして、私たちが流通している硬貨と違うんです。よろしければ、別の窓口で硬貨交換しておりますので、そちらに行ってみてください。」
ロランは交換してくれるという窓口に向かっていった。すると途中で話しかけてきた冒険者がいた。
「おい、坊主!俺が交換してやるから、金出しな。」
「いや…でも…。」
「ドワーフ銀貨をこっちの銀貨で交換するだけだぜ?大丈夫だろ?」
ロランは、静かに拒否をする。ただ、しつこく言い寄られ、断り切れない。しかし、そこに現れたのは灰狼の牙のメンバーだった。
「ロラン大丈夫か?嫌がってんじゃねぇか。さっさと散れ。」
突然のことで、ロランは驚いたが、灰狼の牙の登場で安心感を得た。取引を持ち掛けた冒険者はその場から立ち去った。
「何があったんだ?大丈夫か?」
「え~と、持ってきた硬貨が使えなくて…交換の窓口に向かおうとしていたら、冒険者さんに捕まって…。」
ロランは事の顛末をすべて話した。ドワーフ硬貨の話をして、登録が出来なかったことも話した。
「危なかったな。あいつに騙されるところだったぜ。ドワーフ硬貨ってあまり世に出ない硬貨で希少価値があるんだ。もし、あいつと交換していたら損していたぞ。なんせ、4倍の価値があるというからな。」
「そうだったのか。母さんがこっそり入れてくれていたんだ。」
「それは母さんに感謝だな。ロラン、今日の宿屋も決まってないんだろ?どうせ、俺たちも依頼が終わって休みだから、付き合ってやるよ。」
「ありがとう、みんな。」
思いがけぬ再会し、再び行動を共にすることになった。




