第九話 冒険者登録
ロラン達は換金場所に到着した。ドワーフ硬貨を全額、換金することにした。
「ドワーフ銀貨5枚、ドワーフ銅貨5枚ね。ちょっと待っててね。」
ロランは受付のお姉さんにドワーフ硬貨を渡した。周りには灰狼の牙が守ってくれていて、睨みを利かせてくれているからか、ロランを蔑む声はもうしなくなっていた。
「お待たせ―。はい、銀貨22枚ね。」
ドンと置かれた麻袋の中に22枚の銀貨が入っていた。少しズッシリとして、重さを感じられる。ロランは頭が追い付いていなかった。硬貨10枚渡しただけなのに、それ以上に換金でお金が返ってきて、少々、パニックを起こしていた。
「これ、間違っていませんか?」
「ロラン、間違ってないぞ。ドワーフ硬貨は希少って言っただろう?4倍の値が付くんだよ。」
「でも、なんか貰いすぎている気がしちゃって…」
「大丈夫だ。大事に持っておけよ。」
リクが親切に教えてくれた。
ロランは早速、換金した硬貨を持って、冒険者ギルドの登録に向かった。
「お姉さん、換金してきました。銀貨2枚でしたよね?」
「はい、銀貨2枚で登録が出来ます。こちらにお名前の記入をお願いします。」
受付で渡されたのは冒険者ギルド登録証だった。そこに、ロラン=オージャーと記入し、商人ギルドに加入済みの事も記入した。そして、最後にギルドリングに情報を登録する。
「ロラン=オージャーさんは商人ギルドに加入済みという事なので、左腕のギルドリングをこちらの端末にかざして数秒お待ちください。」
ロランは端末に左腕をかざした。すると、端末の表示に冒険者ギルドの記録が表示されていった。端末には商人ギルドランクF、冒険者ギルドランクFと表示されていた。
「はい、これで、登録完了です。ランクFのメンバーは有効期限が1か月しかありませんので、依頼を受けて、早めのランクアップをお勧めしています。ご注意くださいませ。」
「ありがとう、お姉さん。それから、冒険者ギルドで鍛錬も出来ると聞いたんですけど、何か手続きはありますか?」
「はい、ございます。鍛錬施設は月額銀貨3枚になります。ご利用なさいますか?」
ロランは、頷き銀貨の準備を始めた。
「はい、確かに。それでは、再度、ギルドリングをかざして、お待ちください。登録いたします。施設の中に入る際もギルドリングをかざすだけで利用できるようになります。」
「色々、ありがとう。」
ロランは無事に登録が済み、安堵していた。
「良かったな、ロラン。あとは宿屋だな。俺たちの宿屋を紹介してやるよ。マスターもいい人だからよ。安心していいぜ。」
「ありがとう、みんな。付き合ってくれて。」
「いいってことよ。さすがに依頼には付いていけないけどよ。これくらいは出来るからさ。」
ロランは灰狼の牙のメンバーが大好きになっていた。そして、信頼できる友人、または家族のような安心感を持ち始めていた。
入口を出て、宿屋へ向かう一行。元気いっぱいなアレルとリク、そして、冷静で現実的なジン、物静かでクールなリンカ、素敵なパーティーに出会って、ロランは嬉しかった。
喧騒を抜けて、少し静かで落ち着いた場所に着いた。海が目の前で景色もいい。立派な建物、ここが宿屋である。
「いらっしゃいませ。海の見えるロゼの宿屋へようこそ。」
「マスター、悪いが、こいつの部屋を用意してやってくれるか?」
「これは珍しい。ドワーフ族ですか。かしこまりました。一泊は銅貨3枚です。一週間まとめて払うと少しお安くなって、銀貨2枚です。どちらになさいますか?」
「一週間分、まとめて払います。」
「ありがとうございます。こちらの鍵をお持ちください。階段上がって一番奥があなたの部屋になっております。食事は出ませんので、外でお願いしますね。」
ロランは鍵を持って、部屋に向かった。灰狼の牙は2部屋借りているみたいだ。男と女で分かれていた。ロランと同じ階に灰狼の牙の部屋はある。
「また、時間が合えば話そうな。今日はゆっくりしろよ。」
「うん、またね。」
「キュィキュィ♪」
ロランは部屋に入った。部屋の中にはちょっとしたテーブルと椅子。そして、ベッドが部屋を占領していた。トイレや風呂は共同で部屋の外にある。どうやら、屋上に浴室が設けてあり、男湯と女湯が分かれているみたいだ。
ロランは靴を脱ぎ、ベッドに寝転んだ。疲れた体を癒すがごとく、そのまま目を瞑っていた。ガンテも共にベッドで休んでいた。
翌朝、リーフェルでの初めての朝を迎えた。この街は海も近いせいか風と共に磯の香りを運んでくる。ロランはベッドから起き上がり、朝の散歩へと向かっていった。すると、店が立ち並ぶ通路は大賑わいで人の波が出来ていた。この街リーフェルは海が近いのもあって、朝から漁師が取ってきた魚たちを新鮮なうちに調理して、販売する習慣があるらしい。焼き魚や、干物、そして海藻類や貝も並んでいた。どれも美味しそうでロランは目移りして、買うものを悩んでいた。
「ガンテ、お前はミミズ以外に何か食べられるのか?」
「キュィ?」
そう言うと、ガンテは混雑している人の波をかき分けて、路肩に落ちている石ころをガリガリ食べ始めた。
「え?おい?ガンテ…、それ…石……だぞ?」
ロランは驚きすぎて、言葉がうまく出てこなくなっていた。ガリガリと食べるガンテを見ているとあっという間に完食してしまった。一応、ガンテのステータスを確認してみた。すると、そこには『岩モグラの皮膚の硬さは石が原料となっている』と書いてあった。たまに食べて皮膚を強固にするという事だろうか…。この世界には不思議な生き物が沢山いることをガンテと出会い、知ったのだった。
お腹が空いたロランは大きな貝のバター焼きを食べることにした。バターのいい香りが店の周りでしている。それにつられて、買うお客さんも結構いる。網の上で貝が口を開けた時に、バターを投入して、販売をしていた。これは溜まらない。ロランも口の中がバターの香りのせいで、よだれが溢れそうになっていた。
「おじさん、貝のバター焼き貰える?」
「お、珍しいなぁ。ドワーフ族じゃねぇか。旅行か何かかい?」
「いや…ちょっと…貝のバター焼き2個頂戴。」
「……2個ね。え~と、銅貨6枚だな。」
店主に聞かれたときに上手く返す事が出来ず、変な間が生まれてしまった。でも、ロランは正直なことを話すつもりはなかった。人を信用することは今はまだ出来ない。心を許せる相手は灰狼の牙だけだった。
「熱いから気を付けろよ。銀貨1枚貰ったから、銅貨4枚のお返しね。ありがとよ。また来てくれ。」
「おじさんありがとう。」
沢山の店を周る中で、焼き魚とスープも買って、宿屋に戻ることにした。ご飯を食べた後は商業ギルドで依頼を探す予定をしている。採取で何か出来そうなことを探して、どんな依頼があるのか確認しようと思っていた。初めての依頼で何が起きるのかもわからない。でも、ロランは生活のために稼がなくてはならなかった。




