第二十五話 二人だけの開拓
ロラン達は荷物を下ろした。周りには岩山と海と森があり、平坦な広い土地があった。潮の香りがかすかに匂う。岩山からは少し離れた場所に海が見えていた。リーフェル領で新たな鉱脈を発見したことは貴重な資産となる事だろう。ただ、リーフェルが今は壊滅状態である。管理する所在が不明確な今、ロラン達はとりあえず許可を取らず、採掘を始めてみることにした。まずは畑を作り、食を安定させることにした。リーフェルから種を持ってきており、畑の区画だけを決めてガンテに畑を耕してもらうことにした。
「ガンテ、土を耕してもらえないか?その後、ガレスさん、種まきをお願いします。」
「キュィ♪」
「ゲイルは焚き火用の小枝集めと狩りもお願いしていいかな?俺は別の作業をやる事にする。」
硬い土はガンテのスキルによって、掘り返され何度も潜っては、地上で確認を繰り返していた。
ロランはというと、新たに手に入れた地脈感知のスキルを試していた。どのようなスキルなのか。ロランは楽しみにしていた。広い平野の真ん中に立って、確認をした。
(この辺で地脈感知使ってみるか…。)
ロランは目を閉じて水脈のイメージを念じてみた。静かに風がそよぎ、草のなびく音、木の葉のこすれる音、水の滴る音、湧き水のゴポゴポ音も聞こえたような気がした。すると、ぼんやりと水色の靄が近くの地下に眠っているのが見えた。かなり、掘り進めないと届かない。ただ広い水脈だった。
ロランはスコップも持っていない。掘り進めていくにはツルハシで硬い土をほぐすことしか出来ない。今後の事を考えて、スコップは必要だと感じていた。
「なぁ、ロラン!今後の事を考えて、斧が欲しいんだけど、隣の街まで買いに行ってもいいか?」
ゲイルからの提案だった。ロランは何故か嬉しくなった。考えていることが一緒で安心してしまった。
ロランは一旦、買うものを整理した。
「勿論だよ!行こう!他に買いたいものもあるし、銅鉱石もまだ換金してないから、お金に替えたいしね…。」
ロランは一緒に行こうと提案をした。しかし、ゲイルからの返答は意外なものだった。
「いや、お前は少し休んでおけ。リーフェルでも無理していたし、休んでいた方がいいって…俺、一人で行くからさ!」
「本当に大丈夫?強い魔獣に出遭うかもしれないよ?」
「大丈夫だって…。ガレスさんと帰りを待っていてくれよ。買い出しなら俺に任せろ!」
ゲイルは一人で行動することになった。ロランの持ち金を半分渡し、銅鉱石も預けた。隣町の名前は『サイナス』で交易が盛んな町だった。二日ほどで到着するだろう。そこまで大きくはない町だが、少しずつ発展しているようだ。ロランが持っている冊子の情報だ。
「干し肉と水筒と銅鉱石も持ったし、お金も持った。準備できた。俺、ちょっと行ってくるよ!」
「気を付けてね!あ、そうだ!何かあるといけないから、短剣も貸してあげる!俺はナイフ持っているし。森に入らなければ、魔獣に遭遇することも少ないから。」
「おぅ、わりぃな。借りてくぜ!」
「ゲイル、美味しい料理作って待っているから、ちゃんと帰って来いよ!」
ゲイルは旅立っていった。ゲイルが帰ってくるまで、ロランは岩山を掘り進めることにした。ガンテの畑の耕しが終わり、ガレスは種をまき始めていた。ガンテはロランの肩に飛び乗り、鉱脈感知のスキルで意識を通して伝えてきた。煌びやかに無数の光は色とりどりで、地下の方には激しく輝くものもあった。
まずは、まっすぐに坑道を掘っていった。
ーカッキン…カッキン…
岩を砕く音が心地よくもあった。父親の作ってくれたロラン専用のツルハシで力いっぱい振り下ろし、大きく岩を砕いていった。岩がゴロゴロと転がり、大きな岩をロランの怪力で持ち上げて、岩を集める場所も作った。
ロランは力が強いとはいえ、一つ一つの作業が大変で一日に進む事が出来る量も微々たるものだった。始めてしまったものは後戻りが出来ず、ロランは少しだけ後悔もしていた。
しばらく、作業をしていると遠くの方からガレスの叫び声が聞こえた。急いで、ガレスの方に駆け寄ると、そこにはブラッドウルフがガレスに襲い掛かろうとしている場面だった。腰が引けながらもガレスは包丁を強く握り、目を逸らさず対峙していた。
ロランは大きめの石を持ち上げ、ブラッドウルフに向かって投げつけた。すると、ブラッドウルフはロランの方へ襲い掛かってきた。ロランは腰に付けていたナイフで切り付けていった。ガンテも体当たりで応戦する。そして、ロランはナイフでおでこを刺した。骨をも砕き、緑の血を吹き出しながら、黒い靄を出して消えていった。
「ガレスさん、大丈夫?」
「あぁ、ありがとう!まさか、ここにもブラッドウルフがいるとはね。」
ロランはこの時、怖さも無くなっていた。ゲイルはいなかったが、沢山の経験がロランを強くしていたのだ。ロランは周りを警戒し、魔獣の気配がないことを確認をした。
「あとは、大丈夫そうですね。」
「ロラン、今日食べる分の作物だけ育ててもらっていいか?あとは自力でやるからよ。」
ロランは芋と野菜を一株ずつ再生のスキルで成長させた。みるみると、緑の葉が大きくなっていき、土の中では大きな芋が出来上がっていた。
「綺麗な芋だ。艶があって、新鮮で。料理し甲斐がある!」
妙にガレスは嬉しそうだった。料理人としての誇りのようなものだろうか…。ロランもそんな姿を見て嬉しく微笑んでいた。
「もう少し、採掘してくるから美味しい料理を期待していますね。」
「任せろ!いい調理台があればもっと旨いもの食べさせてやるんだけど、今はスープが限界だな。」
「ガレスさんの料理はなんでも美味しいから、なんだっていいよ!」
二人で笑いあっていた。ガレスが仲間になってくれたお陰で美味しい料理が食べられることに嬉しくもあり、感謝もしていた。畑の土の香りがほのかに香る夕暮れ時。ロランはもうひと頑張りする。
再び、採掘を始めた。そろそろ、初めての鉱石が近付いていた。鉱石感知は本当に便利だ。ガンテの偉大さをつくづく感じる。
「ガンテ、いつもありがとな。あと少しで、最初の鉱石が出るぞ!」
「キュィキュィ♪」
ロランはツルハシを振り下ろし岩を砕いていった。
―カキン…
ツルハシが鉱石に当たった音がした。腰に付けたノミに持ち替えて、細かく岩を砕いていった。
―トン、テン、カン、トン、テン、カン…ゴロッ…
塊が零れ落ちた。鉱石が発掘された。鉄鉱石だ!灰色に輝く石は純度の高い鉄の塊だった。品質も良く、あまり見た事のないぐらい大きな鉄鉱石を掘り当てた。新しい鉱脈はどうやら当たりのようだった。街に行くときに鉱石を売りに行けば、かなり高値で売れるのは間違いなかった。ロランは初めて掘った鉱石をガレスに見せた。
「ガレスさん!凄く良質の鉱石が出てきましたよ。」
「凄いじゃないか。俺も詳しい訳じゃないんだが、素人の俺でもわかるぞ。やったな。」
「はい!これを隣町で売れば、高値で買い取ってくれますよ。」
「今日は祝杯だな。スープしかないけどな。ハハハ。もう、出来ているから、食べよう!」
「はい、いただきます!」
新しい土地での鉱石採取は苦労したが、美味しい料理に心も体も癒すこととなった。翌日も坑道を整備するため、ツルハシを握りしめ、採掘を行っていた。
ゲイルの帰りを待ちわびる二人だった。




