第十五話 輝く腕輪
翌朝、ロランは窓から入る朝の陽ざしで目が覚める。一番に頭に出てきたのはゲイルのことだった。急いで裏庭の洗濯場へと向かった。すると、そこには気持ちよさそうに眠っているゲイルがいた。少しロランはホッとして、ゲイルを起こすことにした。
「ゲイル―!朝だよー!ご飯食べに行こうぜ!」
「あぁ…うん?……朝か…ふぁーあ…。」
ゲイルはまだ寝ぼけていて、大あくびで返事をしていた。むくっと起き上がり、目をゆっくりとあけた。
「眩しい…ロランか…おはよう…。」
「おはよう!朝市に行こうよ。美味しいもの食べよ。奢るからさ。」
「ありがとな。でも、あとで換金したら返すよ。今日、ギルドに行くんだろ?」
「うん、わかった。ギルドで換金したら、返してもらうよ。」
「おぅ、わりぃな。」
ロラン達は朝市へと向かった。相変わらず、二人は目立っていた。ロランは先日食べた貝のバター焼きの店で購入して、裏庭で食べることにした。
「これ、うめぇな。何個でも食べられそうだ。」
「美味しいだろ?この貝のバター焼きが俺も好きなんだ。」
二人は幸せそうに口に頬張りながら、雑談をしていた。ゲイルもだいぶ元気を取り戻したみたいだ。相変わらず、ガリガリではあるが、そのうち、ご飯に困らなくなれば、少しは肉が付くだろうと考えていた。
「さぁ、冒険者ギルドで登録してもらおう。商人ギルドにも行くよ。」
「あぁ、まずは換金だったな。行こうぜ!」
二人は冒険者ギルドへと向かった。立派な建物に冒険者ギルドと商人ギルドが入っている。ゲイルは少し驚いている様子だった。
「すげぇ~、立派な建物だなぁ。」
「まだ、驚くのは早いよ。中はもっとすごいんだから。」
ロランはゲイルを連れて、中へと入った。窓口がいくつもあって、ゲイルはキョロキョロと辺りを見渡していた。広いロビーに無数の冒険者たちが依頼を見つめ、掲示板の前は人だかりが出来ていた。そして、ここでもドワーフ差別が少なからずある。陰口はもちろんのこと、行く先々で避けられる。一定の距離を保ち、近付いて来る人はいなかった。やはり、居心地が悪い。
「人間って、やっぱり鬱陶しいぜ。文句があるなら、直接言いに来いって思うよな。」
「まぁまぁ、落ち着いて。スペースが出来るから歩きやすくていいじゃない。」
ロランは楽観的にとらえていた。しかし、本心は悔しさもあった。平等に扱ってもらえないことが本当に悔しい。ドワーフというだけで、変な目で見られるそんな世界に疑問があった。
「まず、換金に行こうよ。」
「あぁ、換金場所まで案内してくれ!」
ロランはゲイルの手を引いて急いで換金場所へと向かった。
「お姉さん、また換金してもらえますか?今度はこのゲイルのドワーフ銀貨なんですが…。」
「はい、かしこまりました。ドワーフ銀貨3枚ですね。少々お待ちください。」
静かにお姉さんは金庫に手をやり、共通銀貨を持ち上げ、台の上に置いた。
「銀貨12枚のお返しです。」
「………。」
「ありがとう。お姉さん。」
ゲイルの頭の中に疑問がいっぱいだった。ロランは受け取り、窓口を離れてから、ゲイルに説明をした。
「ゲイル、最初は俺も疑問だったんだけど、この街ではドワーフ銀貨と物価が違うんだって。希少価値もあって、4倍の値が付くらしいぜ。」
「あぁ、そういうことか。間違いかと思ったぜ。良かった…。」
「俺と同じ反応してて笑った…。」
ロランはゲイルの姿を見て、ケラケラと笑っていた。なんだか、仲間がいたことで安心もしていた。
「お金も手に入ったし、ギルドの受付に行こう!」
「おぅ、まずどっち行くんだ?」
「それは、冒険者ギルドじゃない?戦いたいんでしょ?ついでに依頼も見てみようよ。」
ロランはウキウキとしていた。ゲイルのランクがどうなるのか楽しみだったからだ。二人でいると、ドワーフ差別も気にならなくなっていた。いくつもある受付には沢山の行列が出来ていた。二人も行列に並び、やっと順番がやってきた。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。どのようなご用件でしょうか?」
「すまん、ギルドに登録をお願いしたい。」
「かしこまりました。それでは新規登録という事なので、銀貨3枚頂戴いたします。」
「あれ?お姉さん?こないだ、俺の時は銀貨2枚だったけど、どうして高いの?」
ロランのちょっとした疑問をぶつけてみた。
「失礼ですが、装置にギルドリングをかざしていただけますか?」
ロランは言われたとおり、装置にギルドリングを当てた。すると個人情報が画面に映し出し、受付にも情報が表示されたようだ。
「ロラン様ですね。いつもありがとうございます。情報によりますと、商人ギルドに登録済みで、ギルドリングが装着済みだったという事なのでギルドリング代の銀貨1枚は引いてあるみたいですね。」
「そういうことか。教えてくれてありがとう。」
ロランは納得した。ゲイルもなんとなくだが、理解したようだ。ゲイルは銀貨3枚を支払った。
「では、新規登録をする部屋へと案内いたします。付いてきてもらえますか?」
受付のお姉さんの後を付いていく二人。すると、小さな扉の前へと案内された。
「こちらでお待ちください。係りの者が案内いたします。それでは。」
受付のお姉さんと別れ、扉の前で待機する二人。
「いよいよだな。俺のランク帯いくつなんだろうな…。」
「ゲイルは今まで、ギルドに入ってなかっただけで、魔獣とも戦ってきたんだろ?結構いいランクじゃないのかな?」
二人はランクの予想を始めていた。すると、扉が開き中を覗くと年配のおじいさんが立っていた。
「さぁ、中へどうぞ!ほぅ、これは珍しい!ドワーフ族か。なんだか懐かしい…。」
ロラン達は部屋の中へ入っていった。中央には水晶と歯車の付いた装置が準備されていた。炉都グランバルドで見たあの装置と同じものだった。ロランにとっては懐かしさもあるが、嫌な思い出の一つでもあった。
ギルドリングについての説明があり、ゲイルは真剣に話に耳を傾けていた。
「それでは、水晶に左手を乗せて、腕は装置に置いてください。」
「お、おぅ、ここに乗せたらランクが決まるんだな?緊張するぜ。」
ゲイルは静かに腕を置いた。すると、水晶が光り輝き、装置が動き始めた。
———カタカタ…ガチャン…
腕には綺麗なシルバーのリングが輝いていた。ロランも嬉しそうに喜び合っていた。
「すげぇ~!シルバーだぁ!」
「ゲイル=ボルガン。Dランク。これからも精進するようにな。」
「おぅ、ありがとな!じいさん!」
ロランは嬉しい反面悔しさもあった。何故かはわからない。喜ばしいことなのに素直に喜べない自分もいた。負けたくない思いもより一層感じていたのかもしれない。
登録も終わり、依頼の確認をする二人。そこには沢山の依頼書が掲示板に並んでいた。




