第十一話 新たな鉱脈
ロランはツルハシで通路を作っていった。ロランが通れそうなスペースを作り、しばらく掘り進めていった。すると、広い空間へとつながった。まだ、誰も入ったことのない空間は自然と出来たものだろう。鉱石感知のスキルのお陰で無数に光を纏っていた。ただ、少し壁のもろさが気になっていた。床は水で濡れ、壁は湿っている。危険を察知したロランは採掘を中止して、街に戻ることを決断した。採掘して崩落の危険があったからだ。商人ギルドで相談してから、もう一度来ることにした。
「必要数は採れたし、一度街に帰ろうか。ガンテ、ありがとな。」
「キュィ♪」
ロラン達は無事に街へと帰ってきたのだった。そして、商人ギルドに赴き、成果を見せて、報酬を貰う。
「8個の鉄鉱石ありがとうございました。1個につき、銅貨2枚なので、今回の報酬は銅貨16枚になります。今後ともよろしくお願いします。」
「あの~…廃坑に行ってきたんですけど…どうも…鉱脈っぽいのを見つけてしまって…ただ、崩落の危険があって…掘らずに来たんですが…」
「え!?しょ、少々お待ちください。ギルドマスターに確認してまいります。」
受付のお姉さんは慌ただしく奥の部屋へと入っていった。しばらくすると、ギルドの役員と思われる人たちも受付に集まってヒソヒソと話している様子だった。そして、奥の部屋からは身なりのちゃんとした中年の男性が受付にやってきた。
「ドワーフ族とは珍しい…。商人ギルドマスターのレントだ。よろしく。」
「あ、え~と、ロランです。」
「廃坑で、新たに鉱脈を見つけたと聞いたんだが、本当かね?」
「はい、確かではないのですが、鉱石がまとまっていました。ただ、床に水たまりが出来ていたり、壁が湿っていて崩落の危険があったため、採掘を辞めて報告に来ました。」
「そうか!いい判断だ。さすがドワーフ族というべきかな…。一度、見に行きたいのだが連れていってもらえるかな?」
「はい勿論です。ただ、ちょっと狭い所もあるので気を付けてください。」
「では、早速頼む!」
商人ギルドを出発して、再び廃坑へ向かった。廃坑の中に入り、ロランが掘り進めた穴に到着する。
「この先にあるのか?ちょっと狭いな…」
「はい、ここの奥で見たんです。頭に気を付けてください。」
姿勢を低くして、先に進むと広い空間に出て、ギルドマスターが声を発した。
「これは見事だ…。こんなの初めて見たぞ…。紛れもなく鉱脈だな…。しかし、ここが本当に崩落の危険があるのか?信じられない…。」
と、その時。ギルドマスターが壁を触っていると大きな地鳴りがして、砂が落ちてきた。
「危ない!!!逃げてください!!!!!」
ロランは急いで、ギルドマスターの手を取り、出口へと向かった。
———ゴゴゴゴゴッ………
大きな音を響かせて、石も砂も床に落ち、崩落していった。間一髪で危険を免れた。ただ、この崩落をきっかけにして、鉱脈が露になったのは嬉しい誤算だったようだ。
「危なかったな。ありがとう…。それにしてもこんな鉱脈がまだ眠っていたなど信じられん…。ほとんど掘り尽くしたと思っていたのに…。」
「俺も信じられなかったですよ。見た時は…でも…ガンテのお陰で見つける事が出来たんです…」
「キュィ!」
ロランもガンテも嬉しそうだった。誰かの役に立てたことが嬉しかった。
「よし、帰って報告書だな。しばらく調査やら補強やらの手配もしないといけないから、しばらくは出入り禁止だ。」
「他に採掘場所はあるんですか?」
「あぁ、それなら大丈夫だ。いくつか廃坑はあるから。」
「今度そっちにも行ってみます。」
「何かあれば、報告頼むよ。俺たちよりドワーフ族の方がそっちの知識はありそうだしな。ガハハ。」
ロランはギルドマスターと別れ、宿屋へと向かった。久しぶりに採掘をして、ちょっと、疲れが出たようで、ベッドの上で眠ってしまった。
目が覚めた頃には、日が沈みかけていた。ひとまず、ロランは廃坑で汚れた体を洗い流すため屋上にある大浴場へと向かった。そこには何人もの宿屋利用客が訪れていて、みんな思い思いに自分の時間を過ごしていた。それにしても、ドワーフというだけで、みんなの視線をいつも浴びているロランは裸でいるのも恥ずかしくなって、お風呂を楽しむ余裕はなかった。早々に風呂から上がり、新しい服に着替えて、さっさと部屋に戻っていた。この宿屋には裏庭に共同洗濯場がある。そこで、服を洗うことにした。廃坑の崩落のせいで、服は砂ぼこりでザラザラしていた。
裏庭へ行くと、長いロープが何本も張ってあった。そこには利用客の服がずらりと並んでいる。洗濯をして、干しているようだ。この辺りは海が近いのもあって、海風が吹いている。風で乾きはいいものの塩のべたつきも多少なりある。そんな土地柄であった。
(外で洗濯するんだな。グランバルドでは考えられなかった…。)
そう、グランバルドでは家の中で洗濯物を干す習慣があった。と、いうのも、鉄が焼けた匂いや土埃もまっていて、空気が良いとは言えなかったからだ。
「じゃ、洗濯するか…ガンテ…水遊びしとくか?」
「キュィ♪」
タライに浅く水を張って、ガンテを中に入れてあげた。すると、ガンテは嬉しそうにピチャピチャと遊び始めた。微笑ましくガンテを見つめ、ロランは洗濯を始めた。一生懸命に力を入れて洗濯板にこすりつけて、汚れを落としていった。すぐに水が茶色く濁り、何度も何度も洗い流していった。ようやく、水の色が落ち着き、ロープに干した後、ガンテの入っていたタライを覗くとガンテが居なくなっていた。
「ガンテ―!!どこーーーー!?」
必死に探すロラン。ガンテの声が聞こえない。不安になってきたロランは裏庭を隅から隅まで探し回った。すると、土の中からモソモソっと出てきた。ガンテだった。
「ガンテ!綺麗にしたのにまた汚して!もう一回やり直し!!」
「キュィ…。」
ロランは呆れてはいるも、妙に憎めない可愛さのガンテを見つめて笑っていた。




