第17話 新たな戦力
必要なのは”分断”と”各個撃破”。
敵の連携を断ち切り、パニックに陥れ、孤立したところを……狩る!
そのためには……洗練された「戦略」と、戦況をひっくり返すほどの「切り札」が必要不可欠だ。
俺の目は、スキル【魔物合成】の文字に吸い寄せられる。
1日1回限定の切り札。
準備期間の日数は3日。
つまり合成チャンスは3回。
俺の脳内で、パズルのピースが組み合わさっていく。
必要なのは、敵の後衛を潰すための「遠距離火力」。
敵を混乱させ、足止めするための「状態異常」。
そして……ゴブいちと並ぶ、あるいはそれをも凌駕する「決戦兵器」。
「……よし、方針は決まった」
だが、俺はここで重大な「仕様変更」に気づくことになる。
【魔物合成】のアイコンを長押しした時だった。
今まで見落としていた――いや、レベルアップで開示されたのか?
そこには冷酷なルールが記載されていた。
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【魔物合成コスト一覧】
合成を実行するには、素材となる魔物のDPとは別に、以下の「合成実行DP」が必要です。
・Eランク同士の合成:40DP (同じ魔物同士の場合+10DP)
・素材に「E+ランク」が含まれる場合:50 DP
・素材に「Dランク」が含まれる場合:70 DP
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「……は?」
俺は思わず声を上げた。
つまり、ただ魔物を二体召喚するだけじゃダメってことか。
しかも、強い魔物を使えば使うほど、合成コストは跳ね上がる。
俺は冷や汗を流しながら、コンクリートのように冷たい床に座り込んだ。
……落ち着け。計算するんだ
俺は頭の中で計算する。
所持金は370DP。
日数は3日。
つまり合成チャンスは3回。
今回の戦う敵はCランク。
半端な戦力では勝てないだろう。
必要なのは、「遠距離火力」「状態異常」「切り札」の三本柱だ。
よし!
俺は立ち上がった。
まずは初日。
テーマは『遠距離火力』だ。
俺は召喚リストから2体の魔物を選んだ。
ベースにするのは『スケルトン:E(30DP)』。
疲れを知らず、感情もなく、命令を忠実に実行するアンデッド。
そして、掛け合わせる素材だが……。
普通にスケルトン同士を混ぜれば、スケルトンの上位種になるだろう。
だが、相手はCランクの冒険者たち。
ただの攻撃では、重装歩兵の鎧は貫けないし、魔法使いの防壁も破れないだろう。
もっと、効果的な攻撃手段が必要だ。
俺の視線が『アシッド・スライム:E+(40DP)』に止まる。
アシッド……つまりは酸。
触れるものすべてを溶かす溶解液。
「合成開始!」
俺はスケルトンとアシッド・スライムを召喚し、合成を選択した。
意味があるかはわからないが、遠距離から攻撃できる魔物を想像する。
『合成を開始します。消費:50DP』
消費DPは合計120。
残り250DP。
目の前で白い骨と緑色の粘液が、光を放ちながら渦を巻く。
ジュウウウゥッ……という、肉を焼くような不穏な音が響く。
やがて光が収束すると、そこには異様な姿の骸骨が立っていた。
骨格はスケルトンだが、その骨の表面は常に緑色の粘液で濡れている。
肋骨の内側には、心臓のように脈動する酸の塊が収まっていた。
そして手には、自身のあばら骨を加工したような弓を持っている。
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【合成完了】
スケルトン×アシッド・スライム → 『アシッド・アーチャー』
ランク:D
スキル:【射撃範囲+】
体白い骨格に緑の粘液が絶えず滴る異形の射手。
その矢は鉄の鎧さえも数秒で腐食させる。
肋骨の奥で脈動する酸の塊を体内で精製し、あばら骨を加工した弓から溶解の矢を放つ。
その矢は、鉄の鎧さえ数秒で腐食させる強酸の一撃となる。
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「……えげつないのができたな」
俺は思わず顔を引きつらせた。
鉄の鎧も腐食させるほどの「溶解」属性。
これなら、どんなに硬い鎧を着た戦士でも、一発食らえばパニックになるはずだ。
だが、思った通り、遠距離攻撃ができる魔物ができたようだ。
「よし、お前の名前は『サン』だ」
サンは、顎をカチカチと鳴らして一礼した。
その動作のたびに、ポタポタと床に酸が垂れ、石畳が白煙を上げて溶ける。
……これは取り扱い注意だな。
***
2日目。
制限時間は残り48時間を切った。
昨夜は興奮してあまり眠れなかったが、ダンジョンの冷たい空気が頭を冷やしてくれる。
今日のテーマは『状態異常』だ。
俺は『ゴブリン:E(10DP)』と『ポイズンモス:E(30DP)』を召喚した。
どちらもEランク。
合成コストは最安の40DP。
計80DPの出費となる。
「頼むぞ。敵の魔法使いや回復役を、影から狩るアサシンになってくれ!」
合成の光の中で、緑色の小鬼と、巨大な紫色の毒蛾が融合していく。
ギャァァッ、というくぐもった叫び声のあと、光が晴れた。
そこに立っていたのは、人間大ほどの細身のゴブリンだった。
だが、肌の色は禍々しい毒の紫色。
両手には自身の体液から精製したであろう、紫色の雫が滴る短剣を逆手に構えている。
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【合成完了】
ゴブリン×ポイズンモス → 『ベノム・ゴブリン』
ランク:D
スキル:【隠密】
特性:【奇襲】(未発見状態からの攻撃時、状態異常付与率が大幅に上昇)
影に溶け込む毒の刺客。
禍々しい紫の肌から滴る自らの毒液を短剣に塗し、逆手に構えて闇を這う。
隠密のスキルで敵に近づき、音もなく奇襲する。
動きは速いが、耐久力は通常のゴブリンよりも劣る。
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「……これはいい。忍者みたいだ」
暗闇に潜み、すれ違いざまに毒刃を叩き込み、敵を屠る。
ゴブいちとは別のベクトルで、凶悪な強さを持っている。
「お前は『ドク』だ。ゴブいちと一緒に俺を助けてくれるか?」
ドクは、音もなくその場で一礼すると、スッと岩の影へと溶け込んだ。
【隠密】スキルの効果か、マスターである俺から見ても、どこにいるのか全く分からない。
これなら、Cランク冒険者の目も誤魔化せるかもしれない。
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