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愚者たちの輪舞 ―ブランタール公の凱旋―  作者: 中里勇史
二人の未来

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カーンティーエ

 カーンティーエに最初に到達したのはニレロティスが率いる騎兵たちだった。到着直後に泡を吹いて絶命した馬もあった。それほどまでに追い詰められた帰還だった。


 ニレロティスらがカーンティーエの前に布陣したとき、スソンリエト伯軍が現れた。ガウェイトスの抵抗がわずかでも短かったら、ニレロティス隊は間に合わなかっただろう。

 スソンリエト伯軍は、カーンティーエの前面に展開している公爵軍が二〇〇〇人程度であることを見て取ると、当初は戦う姿勢を見せた。


 スソンリエト伯軍の布陣が終わったとき、その背後にラゲルス隊が到着した。そこに、一五〇〇のポロウェス軍も南西から出現し、スソンリエト伯軍は三方向から包囲される状態になった。


 ニレロティスの使者から、スソンリエト伯軍であることは露見していること、その旨を知らせる使者が帝都に向かっていることをスソンリエト伯軍は知らされた。

 公爵軍を全滅させたとしても、カーリルン公を殺せたとしても、帝国による討伐は必至となった。スソンリエト伯がカーリルン公位を継承する可能性は完全に絶たれた。

 スソンリエト伯軍は全ての失敗を悟り、降伏した。


 武官首脳陣は一堂に会して今後の方針を確認し合うと、杯にぶどう酒を満たした。


「ガウェイトス卿が時を稼いでくれたおかげだ」


 ニレロティス、レンテレテス、ポロウェスらは、杯を空に向かって捧げて、飲み干した。

 ニレロティスはその日、ガウェイトスについては何も語らなかった。


 スソンリエト伯軍は武装解除した。

 騎士以上の貴族は捕らえられ、平民は在所への帰還を命じられた。

 スソンリエト伯の家臣は他諸侯の領地に侵攻した罪を帝国法によって裁かれることになる。


「やれやれ、彼らを帝都まで連れていかなきゃならないのか」


 ウィンはぼやいた。


 ベルウェンは、帝都に送致されるスソンリエト伯家臣らの中にマクマソルを見つけた。

 マクマソルは絶望と諦観が入り交じった顔で、虚空を眺めていた。


「騎士として仕官先を求める」


 そう言って傭兵稼業から足を洗ったマクマソルを、ベルウェンは心から応援していた。マクマソルの成功を願っていた。それだけに、このような結果になったのは残念だった。


「運がなかったな」


 と心の中でつぶやき、何も言わずにその場を後にした。マクマソルに掛ける言葉など何もなかった。


 メンエロントの家臣は、カーリルン公の領主裁判権に基づいて処罰される。君主たる公爵の領地に攻め込んだばかりでなく、公爵が居る街を攻撃しようとしていたのだ。

 斬首でも文句は言えないが、アルリフィーアのことだから死一等を減ずるのだろう。


 南部三郡の領主デベルロント、トンゾロント、メンエロントはアルリフィーアの前に引き出された。事前にベルロントやニレロティスらと話し合って結論は出ており、簡易裁判の体裁は取っているが判決の言い渡しが目的だった。

 宿老のデベルロントが簡単に経緯、罪状を読み上げた後、アルリフィーアが刑を言い渡した。


「デベルロント、トンゾロント両名は斬首。一族は領外に追放。メンエロントは領地没収の上、一族とも追放とする」


 アルリフィーアの表情は硬かった。だが、死を与えることも君主の責務である。

 先に斬首された北東部領主のスウェロントと同じくするため、出頭命令に応じず武力で抵抗したデベルロントとトンゾロントは斬首にするしかなかった。


 メンエロントはスソンリエト伯に幽閉されており、武力による抵抗を主体的に行ったわけではないので助命された。

 ただしスソンリエト伯に捕らえられたのは出頭期限後であるため、出頭命令で定めた通り領地の没収は実施される。


 こうしてカーリルン公領はアルリフィーアの下に統一され、カーリルン公は膨大な直轄領を手にした。

 これらの地は統一戦争で活躍した功臣に加増するための原資になるだろう。

 ベルロントとニレロティスをはじめとする家臣団の助言に基づいてアルリフィーアが方針を定め、決断を下し、家臣団がそれを実現するという体制が固まりつつあった。

 これからも、アルリフィーアは苦しい決断を下さねばならないことがあるだろう。迷うことも多いだろう。だがそれはカーリルン公領が解決していくべきことだった。


 ウィンの役目は完全に終わった。


 木陰で昼寝をしていたウィンに、アデンが語りかけた。


「ウィン様、これからどうします? カーリルン公領にとどまりますか? 少しくらいなら領地をもらえるかもしれませんよ」


 アデンの提案は魅力的だった。

 このままカーリルン公の家臣となって、アルリフィーアを支えるのも悪くない。

 あの表情豊かな公爵のそばに居たら、きっと楽しいことだろう。


「そうだね……。それもいいのかもしれないね」


 秋の木漏れ日が、ウィンを優しく包んでいた。

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