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居眠り卿とナルファスト継承戦争  作者: 中里勇史
悲劇の終わりと始まり

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ウィンの帰還 その3

 「デズロント卿の告白についてです。彼はフォルゴッソ卿がナルファスト公を殺したと言っていました。でもウィン様はそう思っていないでしょう」


 「フォルゴッソが本当にサインフェック副伯を推していたのであれば、悪手だよね。ナルファスト公を暗殺できるなら、もっと簡単で確実な方法がある」


 「ロンセーク伯を殺すことですね」


 「そう。それで終わり。長子が死んでしまったら次子が継ぐしかない。継承権がサインフェック副伯に移行して、フォルゴッソたちの目的は達成される」


 「しかし死んだのはナルファスト公で、結果としてナルファスト公国は割れ、アルテヴァーク王国の介入を招くことになった、と」


 「ロンセーク伯は父と弟を失い、サインフェック副伯はそもそも死んでしまった。両派閥も処断され、アルテヴァーク王も敗戦処理に追われることになった。宮内伯もリンブルン公女の子をナルファスト公にすることに失敗した。誰も得をしていない。実に馬鹿馬鹿しい結末だよ」


 そういいつつ、ウィンは1人だけ損をしていない人物に思い至った。ワルヴァソン公だ。結果的に、カーンロンド系のレーネットがナルファスト公を継ぐことになった。


 だが、怜悧、狡猾、老練などと噂されるワルヴァソン公の陰謀だとしたら、無駄が多過ぎる。レーネットをナルファスト公に擁立するだけのためにここまでするとは思えない。それとも、ナルファスト公国を戦場にした皇帝軍とアルテヴァーク王国の全面戦争でも企図していたのか?


 「ではナルファスト公を殺したのは一体……」


 「みんな陰謀論に染まり過ぎだよ。新事実でも出てこない限り、現時点では『自然死』が最も合理的ってもんじゃないか。単に、最悪の時期に死んでしまったというだけのことさ」


 「ではなぜデズロント卿は、必要のない嘘を言ったのでしょうか」


 「さあ? 知らない。そもそも彼は本当にそう信じていたのかもしれない。『フォルゴッソのせいでこうなった』と思いたかったのかもしれない。希望が真実にすり替わることもあるさ」


 ウィンは、自分に言い聞かせるように言った。


 「それで、なぜその話をロンセーク伯にはしなかったのですか」


 「それでロンセーク伯が救われるとは思えない」


 「それから……」


 「まだ何かあるのかい? ナルファストの話はあまりしたくないんだけど」


 ナルファストの件について話すとき、ウィンはずっと不快そうな顔をしていた。スハロートはウィンが到着する前に死んでおり、ウィンにはどうすることもできなかったとはいえ、何もできなかったという思いが強い。ただ、ウィンの指揮下で死んでいった者もいるので無駄骨だったとは決して言わない。


 「最後に一つだけ。皇帝陛下は何をお望みだったのでしょうか」


 「ええ? そんなの本人に聞いてくれよ、と言いたいとこだけど……。まあ、本当にどっちでもよかったんじゃないかな」


 「どっちでも?」


 「騒乱を治めて、次期ナルファスト公が決まりさえすればいい。誰がナルファスト公になるかは問題ではなかった」


 「そんなことでよかったんですか!?」


 「まあそのうち分かるさ。ただの予測だけど」


 アデンも沈黙したので、ウィンはルティアセスの話を思い出していた。ルティアセスは一体誰の指示を受けていたのだ?

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