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居眠り卿とナルファスト継承戦争  作者: 中里勇史
ナルファスト継承戦争

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アルティリット会戦 その5

 台地から降り注いでいた矢もいつの間にかやんでいた。台地の上の弓兵も一掃されたようだ。矢を防ぐことに専念していた傭兵たちもスハロート軍への反撃に参加できるようになり、スハロート軍は左翼をフォロブロン麾下の騎兵、正面を傭兵部隊に押さえられた。スハロート軍の右側は台地になっており、行動が制約される。フォロブロンはスハロート軍の背後にまで騎兵を展開しつつある。


 「どうやら勝てそうですな」とラゲルスがつぶやき、続いて明確に、ウィンに問い掛けた。

 「あの中にサインフェック副伯(スハロート)もいるかもしれんですな。どうします?」

 ウィンは横目でラゲルスを一瞥し、10数えるくらいの間、目を閉じた。再び目を開けると、表情を消して応えた。

 「そうだね、そのときは……討て」

 「討て」という指示がいつになく明確な意志を含んでいることに、ラゲルスは驚いた。逡巡はしたようだが、最後は迷いを振り切ったと感じた。

 「よろしいんで?」

 「捕らえてロンセーク伯(レーネット)に引き渡すのかい? 実の弟を処刑しろなんてロンセーク伯に言えないよ。アルテヴァークを引き込んだ時点でサインフェック副伯の処刑は確定だよ。助命はできない。なら、処刑されるより討ち死にした、って方がましだろう」

 「討ち死に……確かにそうですな」

 「ロンセーク伯はこれからナルファストを治めていく。アルテヴァークからナルファストを救った英雄としてね。彼の手を汚させるわけにはいかない」

 「で、サインフェック副伯殺しは旦那が引き受けるってんですかい」

 「私のことはいいから、サインフェック副伯の件、前線に伝えてよ。サインフェック副伯以外は生かしたまま捕まえてね」

 ウィンの説明はラゲルスに対してではなく、ウィン自身に向けたものだったようにラゲルスには聞こえた。ベルウェンが、ウィンのことを大して評価はしていないが気に入ってはいる、ということが少し分かったような気がした。


 スハロート軍を包囲したことで、監察使軍の勝利は確定した。降伏勧告によってスハロート軍の兵の多くが戦意を喪失し、投降した。ルティアセスも捕らえられたが、スハロートは発見できなかった。

 勝ったものの、監察使軍はかなり疲弊していた。傭兵は2000人ほどに減り、生き残った者も疲労が深刻だった。フォロブロン麾下の騎兵は健在だが、500騎程度ではアルテヴァーク軍に抗し切れない。

 とはいえレーネット軍に合流しなければならない。ウィンは残存兵力を再編すると、レーネット軍が戦っているであろう地点を目指して全軍に南下を命じた。

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