表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
居眠り卿とナルファスト継承戦争  作者: 中里勇史
ナルファスト継承戦争

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/77

アルティリット会戦 その2

 「来るぞ、耐えろ!」とレーネットが叫ぶ。

 長槍の列にアルテヴァーク軍が突入した。ある者は馬や体を長槍に貫かれ、ある者は長槍を飛び越えてナルファスト歩兵の列に馬ごと飛び込んでナルファスト兵を踏み潰した。

 あちこちで人馬の悲鳴が上がる。歩兵たちは3列目、4列目からも長槍を繰り出し、アルテヴァーク兵や馬に突き立てる。馬に踏み潰されて動かなくなった兵をどかし、あるいは踏みつけながら後列の兵が前に出て陣形の穴を埋める。

 突入してきたアルテヴァーク軍が引き始めた。レーネット軍の弓兵がアルテヴァーク軍の背後に矢を射かけて何人か射倒した。

 この段階になると、レーネットは何も言わない。戦闘が始まった以上は個々の指揮は部隊指揮官に任せるしかない。

 「なんとかしのぎ切ったな」とレーネットはつぶやいた。だが、騎兵突撃を仕掛けてきたのはアルテヴァーク軍の一部に過ぎない。恐らく次の部隊がもうすぐ突撃してくる。あの騎兵突撃を何度も受けなければならないとは……レーネットはこれから始まる戦いの凄惨さを思って戦慄したが、無表情を貫いた。レーネットがやるべきことは、兵たちの後ろで巌のように屹立していることであった。

 レーネット軍の騎兵は、歩兵の左翼から動いていない。歩兵の左側面を守らせるにとどめて温存している。アルテヴァーク騎兵と正面から激突させても被害が増えるだけだ。騎兵が本当に必要な局面で使い物にならなくなっていたのでは困る。


 アルテヴァーク軍が遺棄していった人馬の死体をどかして隊列を整えている間に、アルテヴァーク騎兵の第2陣が迫ってきた。

 「槍を構えておりませんな。……騎射のようです」

 遠目が利く者が、レーネットに注進した。

 「騎射だと?」

 アルテヴァーク騎兵が得意とする、騎射による波状攻撃か。

 「前衛! 盾で防げ!」

 歩兵たちが前や頭上に盾を構えて防御しつつ、長槍を前に突き出す。アルテヴァーク騎兵は歩兵の戦列に突撃せず、巧みに馬を操ってレーネット軍の直前で馬を反転させ、後ろに矢を放ってそのまま走り去った。

 こうして小部隊が一撃離脱を繰り返し、敵の損害と疲労を誘うのだ。アルテヴァーク騎兵は制止しているレーネット軍を射るのに対し、レーネット軍は移動し続けるアルテヴァーク騎兵を狙わねばならないので効果的に反撃できない。アルテヴァーク騎兵は長槍が届かない距離で反転するため、前列の長槍隊は何もできない。矢がどこに飛んでくるのか分からないので盾を捨てるわけにもいかない。レーネット軍は、軽微ではあるがじわじわと損耗が拡大していった。

 「騎兵に迎撃させろ。出る頃合いはバルデールに任せる」

 レーネットの命令を騎兵に伝えるため、伝令が左翼に走った。こちらの騎兵が動けばアルテヴァーク騎兵を牽制できる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ