表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
居眠り卿とナルファスト継承戦争  作者: 中里勇史
ナルファスト継承戦争

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/77

アルテヴァークの追跡

 アルテヴァーク騎兵8000がナルファスト公国を疾走している。リッテンホム城を出てデルドリオンに向かうであろう監察使軍を捕捉し、殲滅するためである。

 スハロートと交渉することが目的だったので、ウィンは常に自分の居場所を喧伝してきた。これが裏目に出た。スハロート-スルデワヌト同盟成立時にウィンがリッテンホム城にいることは誰もが知っていた。たった3000の監察使軍がスハロート-スルデワヌト同盟と単独で戦えるわけがない。となれば、ウィンがレーネットに合流しようとすることもまた、誰もが考える。

 合流を阻止して各個撃破すれば、今後の戦局は大いに有利になる。

 監察使軍に手を出せば皇帝を刺激するだろう。皇帝軍、最悪の場合は帝国軍が出てくる可能性もある。だが既に帝国領を犯しているのだ。どのみち帝国と事を構えることになる。ならば敵戦力は削っておいた方がいい。


 問題は、監察使軍がどこを通ってデルドリオンに向かうのか、だ。スルデワヌトは、最短経路を採ると読んだ。スハロート派貴族とレーネット派貴族の領地は綺麗に分かれているわけではない。両派の領地は斑模様のように公国に広がっている。スハロート派の領地を迂回するのはかなり遠回りになる。であれば抵抗されるのを覚悟の上でスハロート派の領地を突っ切るに違いない。

 経路を予測して騎兵の機動力で先回りし、粉砕する。監察使軍は歩兵主体で3000と号しており、監察使軍の目撃者の話でそれは裏付けられている。これを確実に殲滅するため、スルデワヌトは保有兵力の大半に相当する8000を出すことにした。兵力を出し惜しみして逃げられたのでは意味がない。

 スルデワヌトはアルテヴァークの将軍の一人、スチトルニエトに指揮を命じた。

 アルテヴァーク騎兵の速さなら、デルドリオンの南東20キメルの辺りで監察使軍に遭遇するはずだ。スチトルニエトは作戦をより確実にするため、騎兵1000を先行させた。この戦力で監察使軍の先頭を押さえ、本隊で半包囲して叩く。アルテヴァークが得意とする戦法である。

 リッテンホム城とデルドリオンの間には、ポルテンの森という深い森がある。監察使軍はこの外側を通る街道を通るしかない。この街道をさらに遠巻きに回り込む。騎兵のみで構成されているからこそできる機動だ。

 先行させた前衛は、既に予定地点に到達したはずだ。本隊も監察使軍の背後を押さえるために進路を街道に移行させる必要がある。スチトルニエトは隊列を横に展開させつつ街道を押さえろと本隊に命じた。

 機動力のある単縦陣を包囲戦用の横陣に再編するため多少時間がかかったが、前衛が時間を稼いでいるはずだ。


 再編を終えて進軍を再開したとき、前方から伝令らしき騎兵が1騎近づいてくるという知らせが入った。スチトルニエトは本隊に停止を命じて伝令を連れてこさせた。


 「先発した前衛1000騎、全滅!」

 スチトルニエトは、伝令が発した言葉に凍り付いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ