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居眠り卿とナルファスト継承戦争  作者: 中里勇史
帝国監察使

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リッテンホム城攻略 その5

 「デズロント卿の旧臣と話して、ロンセーク伯(レーネット)は父殺しに関与していないと確信した。ロンセーク伯は生じた事態に明らかに振り回されている。となるとやはりロンセーク伯の下から出奔したデズロント卿の動きがおかしい」

 「デズロント卿が殺したとお考えなのですか」

 「それは分からない。だがレーネット派のデズロント卿がサインフェック副伯(スハロート)の下に逃げ込むというのは不自然だ。スハロート派に寝返る理由が何かあったはずだ」

 「その証拠がこの城にあると? だからこの城を落としたのですか」

 「それも分からないよ」


 アデンと話しているうちに、デズロントの居室に着いた。しばらく誰も入れないようにと周囲の兵に伝えて入室した。

 蝋燭の灯りを頼りに、室内を軽く見回す。あまり大したものはない。窓の前に執務机がある。手始めに机の引き出しを開けようとしたが、鍵がかかっていて開かない。一瞬躊躇したが、破壊することにした。

 短剣を取り出すと、引き出しの隙間に突き刺して梃子の要領でこじ開けようとする。

 「短剣の使い方が間違っていますよ」とアデンはあきれた。

 「いいんだよ。人間が相手じゃどうせ当たらない」

 「机は避けませんからねぇ」

 領主の城の調度品だけに作りは頑丈だが、何度かやっているうちに鍵と引き出しが同時に壊れた。ついでに短剣も刃こぼれしたが、使う機会はないから構わない。


 壊れた引き出しから大量の書状が出てきた。夜明け近くになって空が白み始めている。文字の判読もかなり容易になってきた。

 「大体は調略の返答ですね。一応証拠として押さえておいた方がいいでしょう」

 「うん……ん? こりゃ宮廷で使われてる紙だね。多分だけど」

 「分かるのですか?」

 「手触りがね、宮廷の紙は上質なのか滑らかなんだ」

 「ということは宮廷の発給文書ですか」

 「公式なものじゃないね。印も押されていない。私的なものだ。私信に公用紙を使うなよ。差出人は……変な記号しか書かれてないね」

 「何です、これは」

 「こういう記号なら誰から、と事前に取り決めていたんだろう。これだけじゃ差出人は分からないな。周到なことだ」

 「ウィン様、これ。スハロート派に寝返って指示に従えば士爵にしてやると書かれてますよ」

 「帝国爵位をエサに調略されていたのか。なるほど」

 「こんなことを提示できるのは宮内伯くらいですね」

 「そうだね。差出人が分かればなぁ……。とにかく、これでデズロントの動きはおおよそ説明がついた」

 「ただし、レーネット派からスハロート派に寝返っただけでは罪とは言えません。サインフェック副伯の動きとも直接関係ないようですし」

 さらに室内を物色したが、めぼしいものは見つからなかった。サインフェック副伯の居場所については依然として手掛かりがない。

 ウィンらがデズロントの居室をあさっている間も、城内設備の接収は順調に進んでいた。レーネットの下に取り残されたデズロントの旧臣が城兵に事情を説明し、城兵もレーネット派に組み込まれた。以後、この城はレーネット派になったデズロント旧臣たちが管理することになる。

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