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愚者たちの輪舞 ―ブランタール公の凱旋―  作者: 中里勇史
敵は天才公爵

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259/265

対峙

副伯(フォロブロン)、追い付かれました!」

「分かっている」


 背後にニークリット公国軍の騎兵が見える。彼らが追ってきているということは、ウレスペイルは――。

 彼の献身を無にしないためにも捕まるわけにはいかない。だが、フォロブロンらの馬はもう限界だ。

 しかし、敵の馬にはまだ勢いがある。


 ――ここまでか。


 フォロブロンは覚悟を決めて、ウレスペイルに心の中で詫びた。


 そのとき、前方からも騎兵が迫ってきた。

 この方面にはまだニークリット公国軍はいないはずだ。


「カーリルン公の旗が見えます。オルドナ方面軍です!」


 フォロブロンよりも遠目が利くヨーレントが叫んだ。

 騎兵を率いているのは、ニレロティスとレンテレテスだ。

 彼らは、フォロブロンと擦れ違うと麾下の騎兵を展開した。


 エグバーレントはすぐに反応した。麾下の騎兵を停止させ、ニレロティスらと睨み合う。エグバーレントは自軍の方が少ないとみて、交戦を避けた。

 新手の敵をどうするか。そんなことはニークリット公(ソルドマイエ二世)が考えればいい、とエグバーレントは即断した。


 彼は、騎兵の効率的な運用に特化した専門家を自認している。騎兵に何をさせるかは、君主たるソルドマイエ二世が考えるべきことである。エグバーレントは、その点に関して一切責任を負うつもりはない。


 フォロブロンの前に、遅れて到着したウィンらが現れた。


「何とか間に合ったね。重畳重畳」

ラフェルス伯(ウィン)、オルドナ伯領は?」

「グライス軍に任せてきたよ」

「ヌヴァロークノ軍はどうなったのだ」

「クーデル王は捕らえた。オルドナ伯領での私の仕事はもう終わりさ」

「王を捕らえたのか!?」


 フォロブロンは愕然とした。


 ――自分は一体何をしているのか。

 ヌヴァロークノ王国との戦いにも参加せず、ナインバッフ方面軍の戦いにも間に合わず、家臣と士爵たちを失った。

 無能の極みではないか。


「取りあえず話は後にしよう。戦いたくないけど、ニークリット公(ソルドマイエ二世)もそう思ってくれるかなあ。できればここで彼らとはお別れしたいんだけど」


 今、ウィンは一〇〇〇騎の騎兵しか連れてきていない。眼前のニークリット公国軍騎兵よりは多い。だが敵の本隊が追い付いてきたら勝ち目がない。

 ニレロティスらと共にじりじりと後退しているが、敵の騎兵もそれに合わせて前進している。

 彼我の距離は変わっていない。


 ニレロティスがウィンの横に並んだ。


「どうも、我々を逃がすつもりはないようだ」

「逃げ切れないかな?」

「かなり馬を酷使してきた。もはや大して走れまい」

「あの騎兵の動き、どう見る?」

「数が少ないのに、撤退せずにこちらの動きを牽制している。本隊はそう遠くないところにいるのだろう」

「やっぱり本隊を待ってるのか」

「こうなったら、こちらも本隊の到着を祈るしかないな」


 ニレロティスは、騎兵と歩兵の進軍速度と移動距離を概算した。


「こちらの本隊も、一〇キメルは離れていないはずだ」

「敵の本隊が到着するのが先か。こっちの本隊が到着するのが先か……。ドキドキするねえ」


 ウィンはわははと笑った。


 騎兵同士のにらみ合いは続いている。

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