帝都にて
帝都のある邸宅で、秘密の会合が催されていた。出席者は複数の宮内伯とその家臣。帝国の重要案件の幾つかは、こうして決められる。
「ナルファストに動きはなしか」
豪奢な調度品で調えられた部屋に、低い声が響く。
「あの男、存外使えんのう」
「しょせんは蛮族と小競り合いをしているのがお似合いの田舎貴族にございます」
嘲笑が口々から漏れ出た。
「途中まではうまくいっていたのですが」
「道化どもはそれなりによく踊ってくれた」
「それよ、あの監察使が余計なのだ」
「あれを担ぎ出したのは誰なのだ」
「陛下直々の人選だと伺っております」
「どうせあの男が陛下に余計なことを吹き込んだのであろう」
「あの監察使に因果を含めましょうか」
「やぶ蛇になりかねん」
「去年、海賊騒ぎを起こした監察使だろう。何をするか予想できん」
「それよりも」
部屋の最も奥に座していた男が口を開いた。
「我々の手に予備を確保しておくべきではないか」
「あの方にお任せしていたのではありませんか?」
「わざわざナルファストの近くまで出張っておきながら、事態を全く制御できておらぬではないか」
「無能な男よ」
「で、またあの犬を使うのか」
「便利な犬でございます」
「予備があれば後ですげ替えることも可能、というわけか」
「では早速使いを出しておきましょう」




