捜索 その2
レーネットは、ウリセファがリルフェットらをプルヴェントから連れ出したことなど知る由もない。そのためリルフェットが所在不明という噂はレーネットの心をかき乱した。実の母親たちと共にあると思っていたからリルフェットのことは大して心配していなかったが、行方不明となると話が違う。
レーネットは、暗く沈んでいた心を再び奮い起こした。スハロートたちがリルフェットを守れないなら、自分が守らなければならない。リルフェットの安全を見届けるまでは歯を食いしばって役目を果たさなければならない。
リルフェットを守りたいという想いが、レーネットに活力をもたらした。兄弟を守ることは、レーネットにとって重要かつ価値のある義務だった。
レーネットもリルフェットの捜索を家臣に指示し、これによってリルフェット争奪戦の様相を帯びることになった。
ウィンも、「ティルメイン副伯行方不明」という話に困惑した。
「やや、一体何がどうなっているんだ?」と首をかしげる。
ルティアセスがティルメイン副伯の確保に固執するのはなぜか。そうしなければならない理由とは何か。「いなくなったティルメイン副伯を心配している」以上の何かがあるような気がするのだが、材料不足で思考が定まらない。「サインフェック副伯が探している」のではない点にも引っ掛かった。
「スハロート派がティルメイン副伯を確保しなければならない理由」と考えたとき、一瞬いやな想像が脳裏をよぎった。だが、具体的な形として捉える前に想像はかき消えてしまった。
「何か思い付いたのですね?」とアデンが尋ねた。
「思い付いた気がしたけど、分からなくなった」
「気に入らない結論だったから考えるのをやめただけではありませんか?」
「……」
「今あなたが考えていることが答えなのではありませんか?」
「……そうじゃないことを祈るよ」




