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居眠り卿とナルファスト継承戦争  作者: 中里勇史
帝国監察使

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捜索 その1

 その噂は人々を困惑させた。

 「ルティアセス卿がティルメイン副伯(リルフェット)探しに血眼になっている」というのだ。


 いろいろな意味で不思議な噂だった。

 サインフェック副伯(スハロート)と共にワルフォガルから退去したティルメイン副伯がなぜ行方不明になるのか。スハロート派の重鎮であるルティアセスがなぜティルメイン副伯を見失うのか。そして、この噂があらゆる陣営になぜ流布しているのか。

 最後の疑問への答えは簡単だ。ルティアセスがなりふり構わず捜索しているから、自然に広まったのだ。スハロート派のみならずレーネット派の領内にまで捜索の手を伸ばしているのだから、隠す気がないとしか思えない。あるいは隠す余裕すらないと言うべきか。そのため次の疑問も浮かんでくる。

 ルティアセスはなぜそこまで焦って探しているのか。

 無論、ナルファスト公子たるティルメイン副伯が行方不明ともなれば一大事だ。慌てもするだろう。だが、それであればサインフェック副伯の名において捜索するのが自然だ。なぜ「ルティアセス卿が探している」となるのか。サインフェック副伯ではなくルティアセス卿がティルメイン副伯を必至で探す理由とは何か。


 この噂はウリセファの耳にも当然入った。

 「ルティアセス卿がなぜそこまでティルメイン副伯にこだわるのでしょうか」とファイセスが首をひねった。当事者の1人であるファイセスにとっては、さらなる疑問がある。「なぜ公妃アトストフェイエ公女ウリセファを探しているという話がないのか」。3人ではなくティルメイン副伯だけ探しているのだ。妙な話である。

 「私や母上には利用価値がないということでしょう。むしろありがたいことです」とウリセファは答えたが、別にすねているわけではなく本心だ。にしても、スハロートならば3人を探すはずだし、ルティアセスにしても3人とも庇護下に置いた方が保護者としての存在感は増すというものだ。ウリセファや公妃に利用価値がないはずがないのだ。リルフェットの居場所に公妃も公女もいると思っているだけなのか、それとも他の2人を考慮する余裕がないほどリルフェットが必要なのか。

 「いったん村にお戻りになりますか?」とファイセスがウリセファに確認した。恐らくリルフェットだけが捜索対象になっている理由を考えても答えは見つからないだろう。だとすると、今考えるべきことは次の行動をどうするのかだ。「村に戻るのか否か」の二択に絞ることで、ウリセファの思考に方向性を持たせたのだ。

 「村に戻ってもできることはありません。……兄を探すことを優先します」とウリセファは答えた。答えながら、ファイセスの質問の意図を理解した。ファイセスは常にウリセファの意図を理解し、必要であれば思考を正しい方向に導いてくれる。この男がそばにいてくれたら、自分は判断を誤らないだろう。少なくとも、自分の判断力の範囲では。

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