表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愚者たちの輪舞 ―ブランタール公の凱旋―  作者: 中里勇史
帝国監察使

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/204

出陣

 ベルウェンは、どこかで何かしているらしい。ふらりと出ていって、ふらりと戻ってくる。

 この日もふらりと戻ってきた。


「お姫様に付けた連中が戻ったぜ。プルヴェントには向かわず、アルデプロートとかいうところに行ったらしい」

「スハロート派の領地ですね。プルヴェントよりもっと東の辺りかと」


 ムトグラフが答えた。いつの間にやら、彼はナルファスト公国における各陣営の配置まで頭に入れつつある。


「そこにサインフェック副伯(スハロート)がいるのかな」


 居眠りしていたウィンがむくりと起き上がった。一応聞いていたらしい。


「それが姫さんも空振りだったようだな。しばらくするとそこから南の方に向かったんだと」

「妹にすら居場所を知らせてないなんて、サインフェック副伯(スハロート)は用心深いねぇ。それとも居場所を教えられない理由でもあるのかな」

サインフェック副伯(スハロート)公女(ウリセファ)様の間に対立が生じているということでしょうか」


 アデンが口を挟んだ。


サインフェック副伯(スハロート)と公女殿は仲が良かったそうじゃないか。ワルフォガル退去時も二人は行動を共にしてる。それなのに、今じゃ公女殿までサインフェック副伯(スハロート)を探してる。公女殿は自分の判断でここに来たような口ぶりだったし」


 ウィンが赤毛の頭をボリボリとかく。

 ムトグラフは呆けたような顔でうむむと唸ってから、一同を見渡した。


「サインフェック副伯陣営は一体どうなっているのでしょう。サインフェック副伯(スハロート)は居所不明。公女(ウリセファ)様もサインフェック副伯(スハロート)の居場所を知らない。ティルメイン副伯(リルフェット)は行方不明で、ルティアセス卿が血眼になって探している。もはや「陣営」と言える状態じゃありませんね」

「お姫さんの護衛もあの二人の騎士だけのようだ。公爵様のご令嬢ってのはもっと厳重に守られてるもんじゃないのか」


 ベルウェンが「納得いかねぇな」と言わんばかりに口をひん曲げていると、一人の傭兵が天幕に入ってきた。ひとしきり報告を受けたベルウェンが、ウィンたちにその内容を説明した。


「ふん、まぁ予想はしていたがな。デルドリオンから西に、まあまあ整備された道が延びている。大将も通ったから知ってるだろう」

「ああ。えっと――何となく」

「おい……。まあいい。とにかく、ここには襲撃者の馬の蹄跡が残ってた。しばらく行った先でやや道を外れて南に向かったらしい。で、ラモリーン街道に出たようだ。ラモリーン街道は整備されている上に往来も多いから蹄の跡は確認できなかった。この宿営地からの痕跡を自然に伸ばすと、ラモリーン街道を南、つまりプルヴェントへ向かうような線が描ける」

「なるほど。それが偽……」

「偽装かどうかは判断できねぇな」

「最後まで言わせてくれよ」


 ウィンは悲しそうに抗議した。


 ――何もかも決め手に欠ける。


 ウィンは、天幕にいる面々の顔を眺める。一同の考えも概ね同じだろう。

 スハロート派と交渉しようにも、やって来たのはスハロートと意思統一しているようには感じられないウリセファだけ。スハロート自身の意思表示はいまだなされていない。


 監察使の宿営地に夜襲を掛けてきた連中はスハロート派であるという状況証拠だけを残していった。あれだけ正体を隠していた襲撃者がスハロートの紋章だけ落としていくなど、もはや笑わせようとしているとしか思えない。


 おそらく、ここに座して交渉を呼びかけても事態は変わらない。であれば無理やり状況を変化させるか……。


「よし。明後日、全軍を動かす。ベルウェン、副伯(フォロブロン)、準備してくれ」

「目的地は?」

「取りあえずプルヴェントへ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ