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愚者たちの輪舞 ―ブランタール公の凱旋―  作者: 中里勇史
反撃

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202/242

ミラロール偵察

 ウィンらは、ミラロールを囲っている丘陵地帯を観察した。


「確かに、ほとんど崖だね。登れる?」

「無理だな」


 ベルウェンの返事は素っ気ない。

 彼は、一度ここに来たことがある。そのときも「陸から攻めるのは無理だな」と思った。


「切り通しを通るのも自殺行為ですな」


 バルエインはつぶやくように発言すると、口を閉ざした。


 切り通しは丘陵部を掘削して作った道で、両側は切り立った崖になっている。崖の上は平らに削られており、そこに兵の詰め所が設けられている。切り通しを通ろうとすると、両側から矢が降ってくるだろう。


「しかしまた、妙なところに港を作ったね」

「入り江が天然の良港になっています。オルドナ伯は、『昔は山だったのではないか』とおっしゃっていました」

「山?」


 ウィンは目を丸くしてザルヴァーエルを見る。


「海側の入り江からこの崖まで、一続きの弧を描いているのです。元は、大きな火山だったのではないかと」

「どうしてこんな形になっちゃうのさ」

「噴火で海側が吹き飛んで入り江になり、南側は山体がわずかに残ったのでしょう。何十年か前、北海の島が噴火して、似た形になったそうです」

「山が吹き飛ぶの!? 見てみたいなあ」


 ウィンは崖を見上げながらわははと笑った。


「笑っている場合か。ミラロールがヌヴァロークノ側にある限り、まだまだ人がやって来るぞ」


 フォロブロンが、苦虫をかみつぶしたような顔で崖を見上げた。


「こりゃ、海から入るしかないか」

「海だと!?」

「ファッテン伯領の水軍の力を借りよう」


 ポロウェスが眉間に皺を寄せてウィンを睨む。


「しかし、水軍には伯爵(ウィン)といえども命令などできませんぞ」

「そこ、そこなんだよなぁ。私のことを覚えてるとマズいかもしれない」


 ウィンが頭をかきながらわははと笑う。

 ベルウェンがこめかみを押さえながらうつむく。

 フォロブロンは、ウィンとベルウェンの不審な雰囲気に目を細める。


「貴公、また何かやらか……って、七年前の海賊騒ぎか!?」

「いやー、参ったな」


 ウィンはわははと笑った。


「ガロナ水軍も大打撃を受けたと聞いています。兵の輸送力はたかがしれておりましょう」


 ザルヴァーエルが懸念を示す。


「海賊のような連中などあてにせぬ方策を考えるべきではあるまいか?」


 ポロウェスが再び苦言を呈す。

 レンテレテスは、ポロウェスの言に含むものを感じて彼を睨んだ。

 バルエインは腕を組んで目を閉じたまま何も言わない。


「水軍は海賊じゃないよ。彼らは役に立つ。もちろん、海から攻めるだけで勝てるわけじゃない」

「貴公がそこまで言うなら、私が交渉してこよう」

「……いや、私が行くよ。世話になった礼もしたいしね。アレス副伯(フォロブロン)には、陸側の大仕事がある」

「大仕事?」

「ヌヴァロークノ王の本隊が来たら、撃退しといてね」

「そいつはまた……大仕事だな」


 フォロブロンは天を仰いだ。

ウィンとベルウェンが思い出していた7年前の事件。

ウィンとガロナ水軍のドタバタ劇『居眠り卿とファッテンの海賊』

https://ncode.syosetu.com/n2168lj/

もぜひご笑覧ください。


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