復興
オデファルス公領の騒乱はまだ続いているが、沈静化に向かいつつある。
ロレンフスは荒政に取りかかった。荒政が実を挙げれば領民はさらに落ち着きを取り戻すだろう。
オデファルス公領以外にも目を向ける余裕が出てきた。テルメソーンらに周辺の諸侯や帝国直轄領の状況を調べさせると、やはり甚大な被害が生じていた。
ロレンフスは、焼け出された領民のための家屋を公費で建設すること、公領の蔵を開放して小麦を領民に配給すること、足りなければ周辺地域から買い上げて自領および被害を受けた諸侯らに分配せよとゼルクロトファらに命じた。
ゼルクロトファは難色を示した。
「オデファルス公領以外にもお配りになるのですか?」
テルメソーンもゼルクロトファに賛同したが、ロレンフスは二人の意見を退けた。
「私はいずれ皇帝になる身だ。オデファルス公領のことだけを考えておればよいという身分ではない」
まずは領民が冬を越せる状態を作り出し、領民を元の生活に戻す。鍬や鋤は領主に歯向かうためではなく、畑を耕すために使わせなければならない。生活を立て直すには、他の村や領主の館を襲うのではなく、自分の畑を耕すべきであることを領民に思い出させねばならない。
一通りやるべきことを指示した後、ロレンフスはフィーンゾルを呼んだ。
「プルテワイト副伯、貴公が今すべきことは何だ?」
「さて……」
フィーンゾルは居心地が悪そうに目を背けた。
「私は貴公を責めてはいない。これからどうするのかを問うている。皇帝陛下が貴公を罷免せぬ以上、帝都には戻れぬぞ。何もなす気がないのであれば、貴公はオデファルス公領で侮蔑と嘲りの目を甘受せねばならぬ」
「……」
「陛下から賜った副伯領があれば生きるのに困るまい。侮りを受けながらただ無為に生きるのが望みなら、好きにするがいい」
フィーンゾルの表情に、初めて逡巡の色が浮かんだ。
フィーンゾルにも不満があった。
自分には皇帝の直臣であるという誇りがあった。だが、ロレンフスの付家老になったことで皇帝の家臣から大公の家臣になってしまった。これは、フィーンゾルにとって格下げを意味する。これがフィーンゾルの心に引っ掛かった刺となり、不誠実な態度となって表出した。
ロレンフスに当たり前のように忠誠を尽くすゼルクロトファも目障りだったし、屈託なく働いているテルメソーンの存在も不快だった。なぜ彼らは大公の家臣で満足なのか。
要はふてくされていたのだ。改めてロレンフスと話してそれを自覚はしたが、帝国爵位を持つ大人がふてくされていたとは言えない。いまさらどう振る舞うべきか、分からなくなっていたのである。
「副伯にも考える時間が必要であろう。今すぐ返答せよとは言わぬ。オデファルス公領で何かをなそうと思ったら、ダウポロス副伯に協力してやってほしい」
ロレンフスは、そこで会見を切り上げた。
数日後、隣の伯爵領に支援物資を送る手はずを相談するテルメソーンとフィーンゾルの姿があった。
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