重臣たち
ベルロントは公領の重臣を招集した。ウィンが持ち込んだ縁組について吟味しなければならない。
だが、この縁組の異様さに、一同は困惑した。内容はともかく、皇帝を通していること、ウィンが使者であることなど、妙な点が多い。
「なぜセレイス卿なのか」
とヴァル・ニレロティス・ソウレインが疑問を呈した。
全員、そこに引っ掛かっている。皇帝の正使なら、普通は宮内伯や士爵が立てられる。監察使が立てられたことも異例だし、よりによってウィンが選ばれたというところに作為を感じる。
「二人にあまりにも酷ではないか」
ニレロティスは憤慨し始めた。疑問を反芻している間に、何者かの悪意を感じ取ったのだ。ベルロントとしても、立場を受け入れる覚悟ができたアルリフィーアをこのような形で刺激されるのは迷惑千万だった。
憤慨するニレロティスを見たヴァル・レンテレテス・バロエンが、なだめ役に回る。
「その点はひとまず置こう。まず、縁組について検討すべきと考えるが」
「そうであったな」
ベルロントが同意した。
「ダルンボック伯家はカーンロンド家の傍系とはいえ、ワルヴァソン公の甥御に当たる。家格的にはつり合いが取れており、悪くない話であろう」と、ヴァル・ゾルトアエル・ワイセトール。
「オールデン川下流にはワルヴァソン公のご領地もある。縁組がなれば通行税の減額も期待できよう。オールデン川流域の貿易にも有利に働くと存ずる」とヴァル・レオテミル・ポストリザが応じる。
「ワルヴァソン公が背後につけば、貿易船を狙う賊も減るであろう。誰もワルヴァソン公を敵にしたくはないからな」
「ふむ、当家にとっては良いことずくめということか」
ベルロントがうなずいた。
しかし、ニレロティスとレンテレテスが異を唱えた。
「ワルヴァソン公の力が強過ぎる点が気掛かり。ワルヴァソン公の力を背景に、ダルンボック伯の家臣が我が公領に介入する恐れがあります」
「子が生まれれば、カーンロンド家の男系ということになる。いずれカーンロンド家に同化されましょう。それを是とするか否か」
ゾルトアエルとレオテミルがうむむと唸って天を仰ぐ。いずれアルリフィーアが生むであろう次期カーリルン公がダルンボック伯家、ひいてはワルヴァソン公の影響下に置かれるのは火を見るより明らかだ。そのとき、カーリルン公譜代の家臣がどうなるのかも考えておかねばならない。
「ワルヴァソン公には嫡子がおありだからダルンボック伯の継承順位は低いが、ともかくダルンボック伯家にもワルヴァソン公の継承権があることもお忘れなく。カーリルン公の子孫から、ステルヴルア家から、ワルヴァソン公が出る可能性もあり申す」
「ステルヴルア家からワルヴァソン公……」
今度はニレロティスが絶句した。
ベルロントは、通常の縁組の感覚に引きずられていることに気付いた。男性君主の下に女性が妃として輿入れしてくるわけではないのだ。この感覚を捨てないと足をすくわれる。
「これは、慎重を期す必要があるな」
ベルロントは討議をいったん切り上げた。
実際にはもっとややこしいことを考えなければならないはずですが、大幅に単純化しています。
当初、家系面、経済面、政治面そのほか、この3倍くらいあーだこーだという議論をさせたのですが大幅に短縮しました。




