不思議な秘密
この国は、平和すぎると思う。
「ねぇ。平和なのに聖女が必要だってことは、何か裏があるんじゃないの?」
ふと、思いついた疑問。
それをフィスロに問いかけると、彼はすっと真面目な顔になった。
「どうして、そう思うんです?」
「どうしてって……。王太子殿下が隠されていることもそうだし、なんかこの国には不思議な秘密があるんじゃないかなって」
王太子殿下は、隠されている。
聖女が必要とは思えないくらい、平和な国。
そんな現状があるからこそ、平和すぎることに疑問を持ったのだ。
「王太子殿下に会いたいですか?」
「え?」
いきなりですか。
そうねぇ、会ってみたいけど緊張するよね。
だって、この国のセレブでしょ?
思い立ってすぐに会える人じゃないよ。
「会いたいのでしたら、その場を設けますよ。お菓子付きで」
「どっちかって言うと、最後の『お菓子』が重要ポイントか」
本当、フィスロはブレないな。
「一番手っ取り早いのは、聖女としての仕事をすることですね」
「はぁ?」
「聖女は王宮管轄ですが、基本的には王太子が管理しています。聖女補佐官も、王太子殿下の管轄になるんですよ」
つまり、聖女の仕事をしていれば王太子殿下に会うことができるのだ。
……会ってみたいけど、聖女の仕事をするのかぁ。
私は司書教諭で大満足なんだけど。
*
「王太子殿下、ですか」
その日の夜。
リンちゃんに髪を梳かして貰いながら、フィスロとの話をしてみた。
すると、リンちゃんは櫛を手に微笑んだ。
「意外と近くにいるものですよ」
「それ、フィスロにも言われた。やっぱり、ヒースさんなのかな」
「あら、ヒースさんにお会いされたんですね」
リンちゃんの笑顔。
フィスロの真面目な顔。
やっぱり、王太子殿下はヒースなのかもしれない。
「スイ様の図書室は、委員さんも加わって活発化してきたんですよね」
「うん。おかげさまで」
「なら、聖女としての仕事をしてみたらどうです?」
「えぇ、リンちゃんまで」
リンちゃんまでそう言うのか。
私はがっくりと肩を落とす。
すると、リンちゃんがくすくすと笑った。
「聖女の仕事のために王宮へ行くのでしたら、王宮図書館に行き放題ですよ」
確かに!
「他の図書館にも関わってみたいんだよね!」
「禁書事件のときに、けっこう顔なじみになっていましたよね。ならば、大丈夫ですよ」
よし、決めた!
司書教諭として動きながらも、今後は積極的に聖女としての仕事も入れてみよう。
そうしたら、色々な本に出会えるかもしれない。
うんうん、そうしよう。
「ありがとう、リンちゃん!」
「お役に立つことができて嬉しいです」
明日、フィスロにも伝えよう。
聖女を崇拝してそうだから、きっと喜んでくれるはず。
私は、そんな期待を持って一日を終了したのだった。




