表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/70

現場

「禁書ってことは、持ち出しが難しいってことだよね」


 王宮図書館。

 国内外の本が、ほぼ全て揃った図書館だ。

 分類分けをしっかりとされているし、読書空間としても最高な場所。

 いつか、ここで1日中本を読みふけりたい。


「そうですね。保管されていたのは、司書しか立ち入ることができない書庫だそうです」


 フィスロが、書類を見ながら教えてくれた。

 図書館の中をぐるっと見てみる。

 大きな本棚がずらりと並んでいて、司書カウンターからは死角が多い。

 犯人は、なんらかの方法で書庫に潜り込んで、この死角を利用して逃げたに違いない。


「盗まれた当日には、どなたが図書館にいらしたんですか?」

「私です」


 問いかけに応じたのは、壮年の女性司書さんだった。

 柔らかい栗色の瞳をそっと伏せて、遠慮しがちに口を開く。


「その日は、本棚の整理を主にやっていて。カウンターから離れることが多かったんです」

「他の司書さんは?」

「あと1人いました。今日は非番で、飼いネコの買い物に行くそうです」


 あら、そうなんだね。

 ネコは癒されるからおすすめだよ。


 そんなことはさておき、図書館の中を調べることにする。

 まずは、禁書が保管されていたという書庫へ行こうかな。





 書庫は、カウンターの後ろにある扉の向こうだった。

 司書全員が持っているという鍵を使って、扉を開ける。


「うわ、すごい!」


 扉を開ければ、そこは本の香りがぎっしりと詰まった場所。

 紙の匂いと、ほのかに香る陽の香り。

 書庫には、小さな天窓が付いていた。


「窓があるんですね、スイ様。珍しいです」

「陽が差し込むと、本が焼けちゃいません?」

「えぇ。だからいつもは閉まっているんですけど」


 天窓は、開いていた。

 向こう側から、陽の光と澄んだ青空がこちらを見ている。


「犯人は、ここから入ったんでしょうか?」

「そうかもね。でも、少し狭い気がする」

「私も、それを疑いました。でも、その窓は小さすぎて人が通れないんです」


 確かに、人が通ることができる幅ではない。

 ならば、転移魔法で入ってきたという可能性は?


「ここは結界魔法を使っています。悪用されると大変なことになる本も多いので」


 なるほど。

 そうなると、ますます不可解な事件だ。


 王太子殿下にこの話がいったのが、なんだか納得できる気がする。

 一歩間違えれば、国全体を危機に陥らせてしまう事件。

 次期国王として、解決しなければならない事案なのだろう。


「ねぇ、フィスロ」


 ふと、気になったことをフィスロに聞いてみた。


「王太子殿下は、この場にいなくていいの? 聖女の私が解決しちゃったら、王太子殿下の手柄じゃなくなっちゃわない?」

「大丈夫ですよ」


 フィスロは、即座に頷いた。

 そして、自分の背後の方に意識を向ける。


「王太子殿下は見ておられます。そして、きちんと指示を出してくださいます。聖女様と王太子殿下は、どこかで繋がっているものなんですよ」


 最後の言葉は、よく分からなかった。

 ただ、フィスロの視線の先には、険しい顔をしたヒースが佇んでいた。





「捜査はどうです?」


 スイ様が、司書と話し込んでいる最中。

 静かに近づいてきたヒースに、こっそりと話しかけられた。


「まぁ、なんとか」

「なんとかって、お前なぁ……。犯人は分かっているんだろう?」


 ヒースは砕けた口調になった。

 おもしろそうに眉を上げ、フィスロを見つめる。

 聖女補佐官は、淡く微笑んだ。


「これは、聖女様が解決するべきことだ。スイ様の領域だからな」

「そうか。まぁ、健闘を祈る」


 そう言って、ヒースはフィスロの肩をぽんと叩いた。


「これは、王太子殿下の事案だからな」

「分かってる」


 そんなこと、痛いくらい分かっている。

 フィスロは、スイの方へ視線を向けた。

 将来の『──様』は、いとも真剣に司書の話を聞いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ