キ:現場の二匹に通達を
封印関係の人員確保をカステラさんにお願い……したんだけど。
今の内に僕らはやらなきゃいけない事がある。
「あの場所がダンジョン判定なのかどうか確認しないと」
「うん」
ダンジョンは基本的に同じパーティを組んでいないと同じフィールドに入れない。
だから、ダンゴムシ精霊の精霊郷を経由して辿り着いたあの場所がどういう場所なのか、きちんと確認しておかないと。
「あと、骨ドラゴンさんとハリネズミ幻獣ちゃんと地のダンゴムシ精霊ちゃんに変装姿を見せて、変装してない時の事を内緒にしてねって言っておかなきゃ」
「そうだね」
前に行った時は変装していない状態だったから、いきなり変装して行ったら『誰だお前は!?』って言われるかもしれない。
色んな人に手伝ってもらうなら、当日スムーズに動けるように準備しておかないと。
「じゃあまずは変装無しでダンジョンに行って……」
「会ったら変装して見せて、内緒にしてねってお願いする」
「OK……それに今更だけど、事態が動いていないかも確認しておいた方がいいよな」
「確かに!」
そんなに切羽詰まってる感じはしなかったから大丈夫だとは思うけど、何か変化があるようだったら動き方も変わるもんね。
* * *
「なーんも変わってないトゲ」
「こやつが結晶を作る所を眺めるだけの時間であったわ」
はい、特に問題は起きていませんでした。
まぁひと安心って事でいいかな。改めて封印の状況を訊いても、良くも悪くもなっていなかったし。
やってきた『輝石坑道ダンジョン』。
道中でダンゴムシ精霊には話を済ませて、そのまま結晶のハリネズミ幻獣の住処へと送ってもらった。
やっぱりここはダンジョンと繋がっていないから別扱いで、ダンゴムシ精霊に頼めば他のパーティも送ってくれるって言ってくれたから、ひと安心。
というわけで、ハリネズミ幻獣ちゃんの住処。
ここは相変わらず色んな結晶がキラキラと積み上がり、晶洞で出来た宝箱の中みたいで面白い。
「今、協力してもらえそうなヒト達に声をかけてもらってるから、もう少ししたら皆で封印しに来るね」
「おおー、助かるトゲ!」
「うむ、ここで無為に待つのは退屈がすぎる」
くあ〜っと骨ドラゴンさんが欠伸みたいな動作をした。
ここ、結晶は綺麗だけど、骨ドラゴンさんはあんまり結晶に興味無さそうだったもんね。それだと確かに退屈かも。
「うーん……ドラゴンさんがここで出来る暇つぶしかぁ……」
「……肉料理でも食べます?」
「……いや、食事は生まれなおしてからの楽しみとしておこう」
そうなんだよね、スケルトンだもんね。
たぶん食べられはすると思うけど……味とかちゃんと感じるのかわかんないし。ヌカ喜びになっちゃうか。
……なんて暇つぶしを考えてたら、うっかり本題を忘れるところだった。
僕と相棒は、骨ドラゴンさんとハリネズミ幻獣ちゃんの前で、森夫婦スタイルに着替えて声も変えた。
そしてヒトの文化に慣れていない二匹に、なんとか言葉を駆使して変装して匿名で活動している事を説明する。
二匹は僕らの話を聞くと……骨ドラゴンさんはカクンと首を傾げて、ハリネズミ幻獣ちゃんはネビュラがよくする『ヒトの子よくわからん』みたいな顔をした。
「ふむ……ようは擬態か? 構わんぞ、他の者にお主らの事は話さずにおこう」
「ヒトの子はよくわからんことするトゲねぇ。まぁ滅びを片付けてくれるならなんでもいいトゲ。内緒にしとくトゲ」
素直な二匹で助かるねぇ。
無事に僕らの匿名プレイが保証されたので……後は、当日の事を少し確認しておこうかな。
「んーと、封印しに来た時なんだけど……たぶん、地面にそこそこ大きな模様を描く事になると思うんだよね。どこでやったらいいかな?」
「トゲェ〜? ……ううーん……こ、ここじゃない洞窟の中で……」
「何を言う、『滅び』を結晶に閉じ込めておくには、お前の領域であるこの場所が最適であろうが。手を打つ直前にそれが緩む場所に移してどうする」
「ですトゲよねぇ〜!」
ハリネズミ幻獣ちゃんは頭を抱えて「トゲェーッ!」とのけぞった。
「えぇえぇえぇええ〜! じゃあここ地面が見えるまで片付けないといけないトゲェ!? め〜ん〜ど〜く〜さ〜い〜ト〜ゲ〜、ハリネズミ幻獣は日がな一日ずぅーっと結晶作っていたいトゲェ〜」
うん、気持ちはわかるよ。僕も日がな一日相棒と一緒に遊んで過ごしたい。
でも骨ドラゴンさんにそんな怠惰な望みは通用しなかった。
「別にそう難しい事でもなかろう。お前がやらんのなら吾輩がやってやる」
そう言うと、ドラゴン尻尾をぐいんと結晶の山に添えて……とっても雑にガラガラガラーッと結晶の山を端に押しやった。
「トゲェエエエエエッ!?」
突然の暴挙に大慌てのハリネズミ幻獣ちゃん。
ハリネズミ幻獣ちゃんはブラックダイヤモンド化してる骨の尻尾にペトッとしがみつき、ガリガリと噛みつきながら必死に苦情を申し立て始めた。
「なんてことしやがりますトゲ! そんなぞんざいな扱いしたら結晶に傷がつくんですトゲェ!! ……くっそぉ! ダイヤ硬くて歯が通らんトゲェエッ! 我ながら良い仕事トゲねぇええっ!!」
「……怒るか誇るかどちらかにせんか」
呆れた骨ドラゴンさんが尻尾をブンブンしてもハリネズミ幻獣ちゃんは離れない。
ちっちゃな足をジタバタしながら尻尾に喰らいついている。
「ハリネズミ幻獣が! 片付けますので! ドラゴン様は! すみっこでおとなしくしててくださいトゲェ!!」
「分かった分かった……最初からそうせんか、面倒な奴め……」
そんな漫才みたいなやり取りを、僕は変装した仮面の下で苦笑いを浮かべながら眺めていた。
(この二匹、価値観が噛み合わないなぁ〜)
(悲しいね)
何はともあれ、現地の準備はこれで大丈夫そうだね。
結局、作業場が現場になっちゃうハリネズミ幻獣ちゃんには悪いけど。




