キ:思わぬ所からリクエスト
白夢草のクラウンに指示を出して、夢の幻獣に入場許可を出すと、フワッと扉をすり抜けるようにして夢のモモンガ幻獣ちゃんが現れた。
「お邪魔するモン!」
「いらっしゃーい、モモンガちゃん今日はどうしたの?」
「森の寝床に遊びに行ったら、珍しく狭い夢に集まってるから気になったんだモン。何してるモン?」
こてんと小首を傾げるモモンガ幻獣ちゃんにクッキーをオヤツにあげながら、僕らは準備している店の事を説明した。
「モン! つまりここに来たら色んなヒトの子と会えるかもって事だモン?」
「そういう事だモン」
「語尾うつってる」
モモンガ幻獣ちゃんはクッキーをポリポリ齧りながらふんふんと頷いた。
「なんか面白そうだモン。夢の幻獣もここへ遊びに来れるようにしてほしいモン!」
おや、そういうご希望?
でも確かモモンちゃんは1対1の契約をご希望だったから、こういう出会いの場が無いと契約する機会が全然無いのか。
(プレイヤーに僕らのこと内緒にしてもらえば大丈夫だよね?)
(……たぶん?)
ここはクラウンが作った夢の領域だから、牢獄坑道みたいに僕らの拠点と地続きなわけじゃないしね。
「僕らの事を他のヒトの子に話さないなら、いいよ」
「モン! それならここを支配してる夢魔に『ここの主のヒトの子の事を内緒にする約束が出来る夢の幻獣は入ってよし』っていうルールを追加すれば大丈夫だモン!」
「「なるほど」」
もしも契約してこの店から出た後も、約束済だから内緒にしてくれるって事かな。それなら確かに大丈夫そう。エフォのNPCだし。
「じゃあそういうルールを足そうか」
「やったモン!」
モモンガ幻獣ちゃんはぴょんと跳ねて喜びを表現すると、キョロキョロと部屋を見渡してから、角の丸太の柱にステテテテーッと駆け上がって半端な高さをテシテシと小さなお手々で叩いた。
「ここにモモンが入れる洞を作ってほしいモン!」
「おおっと専用席をご希望だー」
「……まぁモモンガに椅子はサイズ合わないしなぁ」
まぁそのくらいならね。【木魔法】ですぐ出来るから大した手間じゃないよ。
「はい、どうぞ」
「モン!」
モモンちゃんはいそいそと洞に入って、ピョコンと頭を出して縁に手をかけてご満悦。かわいい!
「いい感じだモン!」
「うん、かわいいねぇ」
「……スクショ撮っといたら?」
「そうする!」
数枚撮影して、ふと気付く。
夢の幻獣は、何もモモンガ幻獣ちゃんだけじゃないのだ。
「もしかして、モモンガちゃん以外の夢の幻獣も、遊びに来たりする?」
「んー……かもしれんモン」
なんという事でしょう!
いつぞやのパヤヤちゃんとかイモリちゃんとか、もしかしたらカタツムリのお爺ちゃんとかも覗きに来るかもしれない!?
「え、じゃあとりあえず……水槽と井戸作る? あとカタツムリの落ち着きポイントってなんだろ……スカンポの葉?」
「うん、落ち着こう。少なくとも井戸はこの部屋に入らない」
「とりあえず止まり木と柔らか寝床でも作っとくモン」
思いがけず『夢の幻獣あつめ』が始まりそうで、うっかり喫茶店コンセプトが旅に出そうだった。危ない危ない、とんだ罠だったぜ!
大きな家具はほぼ出来上がっているから、僕は相棒とモモンガ幻獣ちゃんと相談して、残りのインテリアや幻獣スポットの配置の詳細を詰めた。
「この柱に止まり木を作っておいてー……」
「……この角にクッションでも置けば犬とか猫とかタイプの幻獣の休憩所にはなるよな?」
「そんなフカフカの代物ならバッチリだモン」
よしよし、完成が近付いてきましたよ。
「じゃあ僕は、買い出し第二弾、インテリアの仕入れに行ってきます!」
「……じゃあ俺は棚に置く商品の準備でもしてるわ」
「モモンはここでダラダラしてるモン」
穴に入りっぱなしのモモンちゃんに見送られて、僕らは再び分担作業に突入。
僕は変装状態なのを確認してから、転移オーブで『サウストランク』へ移動。
そして、前に占いに使うあれそれを購入した『錬金術雑貨~幽世堂~』へと足を向けた。
勢いで扉をぶち開けそうなのをグッとこらえて、優しくそーっと扉を開く。
久しぶりのお店は……相変わらず安心のメルヘン仕様。
あー、ステキィイイ!!
ウキウキで店内に滑り込むと、店員の女性が僕を二度見した。
まぁテンション上がってる僕は気にしませんよ。
あ、これ、このブローチかわいい! ……って、違う違う。今日は落ち着いた雰囲気の喫茶店っぽいお店に使うインテリアを選びに来たんです。
このお店のグッズだと……装飾少な目でシンプルな物を選ぶとちょうどいいかも。
小さくてかわいいランタンとー……植木鉢カバーとー……あ、この真鍮のプレート、案内を書くのにちょうどよさそう。
他にもちょっとファンタジー風味なコースターとか、良い雰囲気の壺とかをまとめて購入。
「あ、前に買った1週間で草が生えるインクってあります?」
「ごさいますよ。同じサイズの瓶でよろしいですか?」
「はい、それもください」
よし、お買い物ミッションは完了!
完成が見えてきたね!




