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【完結】魔王を殺された黒竜は勇者を許さない  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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77.二人の魂を宿した愛すべき存在(最終話)

 ガブリエルの養い子シュトリは、壊れた魔王城の瓦礫を見上げる。初めて連れてきてもらったが、懐かしさが込み上げた。魔力による保護が働き、この場所は常に同じ状態で保たれている。


「きゅー、きゅ」


「何か気になるのか?」


 シュトリの求めに応じ、ガブリエルはピンクの幼子を玉座の前に置いた。嬉しそうに四つ足でぺたぺたと歩くシュトリが、玉座に近づく。だが触れる手前でくるりとこちらへ向き直った。両手を広げ、何かを訴える仕草をする。首を傾げたガブリエルは気づいた。


 あの場所は……ナベルス様が最期に立っていた……?


 後ろの玉座は、黒い炭が積まれている。ガブリエルが泣きながら集めた、魔王の遺骸だ。壊され崩された炭を丁寧に分け、組み立てるように並べた。椅子に座っている形に仕上げるまで、数年かかっている。


 ナベルス陛下が崩御した場所で、シュトリは両手を挙げて誇らしげに天を見上げる。誰かに己の功績を誇るように。後ろ足二本で立ち上がり、やがて元の姿勢に戻った。


 こてりと首を傾げるシュトリは、無邪気に走り回る。先ほどの行動が嘘のようだ。何かに乗っ取られたり操られたりしたのでは? と疑うほど表情や雰囲気が違っていた。全く外見の異なる存在なのに、ナベルス様と重なる。そんなはずが……。


 見上げた空には誰もおらず、当たり前の事実にガブリエルはほっとした。走ってきたシュトリは前足にしがみつき、背中に乗せてくれとせがむ。魔力で起こした風を使い、首の後ろに巻き上げた。鱗にぺたりと両手を付けて、シュトリは上手に着地する。


「きゅっ!」


「ん? 下へ行くのか」


 初めてきた場所が楽しいのだろう。探検気分だと判断し、ガブリエルは下へ降りる。ひらりと滑空した先でシュトリが示す場所に立った。


「……っ」


 父である青竜が王を守って倒れた場所。シュトリはなぜ知っている? みたことがない種族なのはなぜだ? この子は誰の……? 疑問が湧いて、すとんと腑に落ちた。


 四つ足のトカゲ姿は竜の前身、金の瞳は強者の証。ピンクは……あの人が好きだった花の色。


 ぽろりと涙が落ちた。潤んだ視界に、滑り降りてくるピンクのシュトリが映る。頬を擦り寄せ、小さな声で呼んだ。父上、ナベルス様……応えるようにシュトリが鼻を鳴らす。記憶の有無や原理なんてどうでもいい。二人の魂を、シュトリは受け継いだ。


 確証も必要なかった。あの二人が戻ってきてくれた、その事実はガブリエルだけが知っていればよい。オレが平和にした世界で、魔族として、二人は生きていく。それだけが大切な現実だった。


「愛しています。父上、ナベルス様。オレのところへ来てくれてありがとう……シュトリ」


「きゅっ!」


 鼻先に小さなピンクの手を押し当て、シュトリは幸せそうに目を閉じた。頬を擦り寄せ甘えるこの子を育て上げよう。魔王にならなくてもいい。優しい人が戦う必要のない、心を痛めず暮らせる世界があれば――そこに愛する存在がいれば、あとは何も要らなかった。








 かつて、世界と種族を纏め上げた最強の魔王がいた。竜族で唯一の黒い鱗を纏い、火竜の母と水竜の父の間に生まれ、両ツノの魔王に愛され、魔神の庇護を受けて育った。魔神の愛し子と呼ばれた王は、ピンクの養い子と幸せに暮らしたという。


 古い伝説を読み聞かせる母は、眠ってしまった娘の髪を撫でた。人族は消え、すべてが魔族の呼称に統一された。この世界に余計な争いや差別はなく、満たされた平和が広がる。その功績を讃える当代の王は、ピンクの外皮を持つ優しい金眼の竜となった。翼を持たない王は亡き先代の墓を守り、今も頂点に君臨している。








  終わり












*********************

 お付き合いいただき、ありがとうございました。サイトにより明暗が分かれた作品ですが、個人的には好きです(///ω///)ハッピーエンドですよね。シュトリはナベルス様と父竜の生まれ変わりだったのかな? ガブリエルがそう感じただけかもしれません。真実はそれぞれの結末としてお持ちください。

また次の作品でお会いできることを祈りつつ。




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新作のご連絡

【神狐の巫女姫☆妖奇譚 ~封印された妖を逃がした陰陽の巫女姫、追いかけた隣大陸で仮面王子に恋しました~】


「早く行ってっ! あなたがいたら全力を出せないわ」

「君を置いて行けない」

 狐面で忍び込む御転婆姫と、仮面で応じる英雄王子。危険な場面で助け合いながらも、獲物の取り合いが始まる。皇家や王家の思惑も入り混じる中、ドタバタする彼と彼女の恋の行方は?!

 ※ハッピーエンド確定のどたばたコメディ風?

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― 新着の感想 ―
 (*TωTノノ゛☆パチパチ良き作品をッ、あ"り"がどう"ッ!
[良い点] 完結おめでとうございます(`・ω・´)ゞ私はこの作品を読んで争いや差別について改めて考えさせられました。 個人的にもお気に入り作品になりました(^-^ゞ ガブリエルが選んだ道が、平和へと続…
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