第9話 漫画版五作目では被らなかったもの
アイとリンの見事な連携の下に、難なく『この星』が用意する試練をクリアした一行。そして、彼等は順調に洞窟の探索を続けていくのであった。
そんな中、リンはふとこう一同へと言った。
「課題もクリアして問題なく進めていますから、『そろそろ』だと思いますね?」
そう思わせぶりな言い回しをするリンに対して、すぐにアイは合点がいき言葉を返すのであった。
「それは、お主の友達の魔物がもうすぐ近くにいるという事じゃろう?」
「その通りですよ♪ 僕はこの『ザファイブ』地方では顔が広いですからね♪」
そう言ってリンは得意気に膨らみかけの胸を張って見せるのであった。
そう、このリンは野性味溢れる生活をしていながら、ちゃんと魔物同士の関わりを持っているという事なのであった。
その事を認識しながら、ミナトは感心したように彼女に言う。
「リンさん、ちゃんと友達付き合いというものをしているのですね?」
その一言を聞いたリンは、心外だと言わんばかりに抗議してくる。
「むぅ~☆ ミナトさん、それは偏見ってものですよ。魔物を見た目で判断してはダメってものですからね!」
そう言って頬をぷっくりと膨らませるリンの何と愛らしい事か。
これでノーパンではなければ模範的な乙女そのものなのになあ、とミナトは思う所であるのだった。
ともあれ、リンの言う通りにアイ一行のお目当ての者へとは刻一刻と近づいているのであった。
その期待を胸に一行が洞窟の中を進んでいると、その途中でリンが口を開くのだった。
「……ここですね」
そうリンが言う所は、特に目印もない道の途中も途中な所であるのであった。
無論、お目当ての者など一行の視界には見えていないのである。
だが、この一行は何人とも『誰もいないじゃないか』等という無粋な発言をする者はいなかったのだった。
「成る程、おでましのようじゃの?」
「そのようですね」
そう一行が言うのと同時であった。彼等に突如として声が掛かって来たのである。
「え~、もうバレちゃったの? 折角のサプライズだと思ったんだけどなぁ~……」
そう残念そうに呟く声に対して、アイはこう言葉を掛ける。
「いや、わしとて『その発想は無かった』って所じゃからの? 自信を持っていいぞ♪」
「でも、ネタはバレちゃっているんだよね~。でも、アイ様のお墨付きは得られたし、気を取り直すとしますか♪」
声の主がそう言うのと同時であった。突如として辺りに何者かの気配が現れたのであった。
その気配の出現先は──一行の『足下』である。
そして、次の瞬間にそれは起こったのであった。
『とうっ!』
そのような掛け声と共に地面に一気にひびが入ったかと思うと、そこからそれが爆ぜるのであった。
そこから瓦礫に混じって何者かが飛び出してきたのであった。そして、その者は華麗に着地を決め込む事が出来たのであった。
その後、その者は着地を決めた状態でその姿を露にしたのである。
そこにあったのは、犬をそのまま擬人化したかのような、犬人間とでもいうべき姿であった。
それは、『コボルド』と呼ばれる種族であろう。だが、そんな彼には他のコボルドとは違う要素があるのであった。
彼の頭には、工事現場で使うような黄色に前方中央に十字の入ったヘルメット、通称『ドカヘル』が被せられていたのである。
だが、彼の姿はまだ子供のコボルドであったので、そこに屈強な大人が被るようなドカヘルを身に着けている辺りに、アンバランスさや悪戯っぽさが感じられるのだ。
そして、その悪戯っぽさは彼の立ち振る舞いによっても引き立てられる所となるのであった。
「あ、アイ様はじめまして~♪ オレは『サイコメットーラー』と言います~♪」
そう言って気さくに自己紹介する彼は、正に無邪気な少年そのものといった感じだ。
そんな彼に好感を感じるアイであったが、一方でこんな事も思っていた。
(うむ、その名前はちと長ったらしいのう……)
はてどうしたものかと思案していると、まるでそれに助け舟を出すかのようにリンが彼に話し掛けるのであった。
「あ、『メット』君、ごぶたさするね~☆ やっぱり今日もヘルメット被ってるんだね~。似合ってるからいいけど♪」
この瞬間、アイの頭の中にあった問題は一気に解消されたのであった。実にシンプルな解決の流れとなったのである。
アイがそんな事を思っていたとは露知らず、リンに話し掛けられた『サイコメットーラー』通称『メット』は言葉を返すのであった。
「リンちゃんこそごぶたさ~☆ リンちゃんこそ相変わらず今日もノーパンなんだね~☆」
「あ、分かる~?」
そんな二人のやり取りは正に仲の知れた友達同士の微笑ましいやり取りであるのだった。──その中に『ノーパン』等というキーワードが出なければ、であるが。
そして、ミナトはここで思わずにはいられない所であるのだった。──何故『分かった』のかと。
もしかして、先程地面に潜っている時に何らかの方法で直に見たのだろうか。だとすると、物凄く犯罪の臭いがしてしまうなと。
しかし、取り敢えずミナトはこれ以上考えないようにするのであった。何せ、これは余り踏み入ってはいけない領域の話であるからだ。
なので、今はこうして仲睦まじくやり取りをするリンとメットの友達関係に心地良いものを感じておく事にするのであった。
「リンさんが友好関係が広いっていうのは、本当だったんですね?」
その問いに、今しがた出会ったばかりのメットは答える。
「ミナトさんだっけ? リンちゃんの顔の広さを侮っちゃダメだよ? 何たって、彼女はこのザファイブでは知らない魔物はいない位だからね?」
「そうなんですね」
その事実に、ミナトは感心する所であったが、すぐにそう思った事を後悔するに至る事となるのであった。
「何たって、リンちゃんのノーパンの話はザファイブ中に広まっているからね♪」
「結局雄のスケベ心ですか!?」
その世知辛い事実に、ミナトは頭を抱えるしかなかったのである。だが、どうやらメットはそんなミナトに首を横に振るのであった。
「いや、リンちゃんは雌の魔物からも憧れの対象だよ。穿かないという開放的な暮らしでいながら見せずに済んでいるというのは、雌からしてみれば是非とも倣いたいスキルだからって事らしいよ」
「いえ、倣わないで下さいそんなもの……」
ミナトのその主張は全くを以って正論であるのだった。だが悲しいかな、世の中とはそういった正論が通らないケースが割りと嫌という程に多いのである。
このように、初登場したのはメットだというのに、いつの間にか話題が自分に向いてしまっている事を申し訳なく感じたリンは、ここで話題の流れを変える事にしたのであった。
「と、脱線はここまでにしておこうよメット君。今回のメインディッシュは僕じゃないんだからね?」
「と、言うと?」
そんな意味ありげな物言いをするリンに対して、メットは思わず首を傾げてしまった。では、話はどういう事なのだろうか、と。
「ここにおわす村雨アイ様は、自国の皇国を繁栄させる為に自分の下で働いてくれる逸材となる魔物をスカウトしていて、丁度今がその旅の最中って事なんだよ?」
「そういう事じゃ」
そうリンに助け舟を出してもらったアイは、それに便乗するようにより詳しくメットへと説明をしていくのであった。
そして、その内容を把握したメットは、ただただ感心する所であるのだった。
「アイ様が、直々にオレら魔物達の所へって事だよね?」
そう、メットはそのアイの行動力と律儀さを聞いて感銘を受けるに至っていたのである。
皇帝ともあろう、大勢のトップに立つ人間である。故に、大衆へと語り掛ける際には面倒なので演説等で纏めて行うのが普通というものであろう。
それが、自らの足で実地へ赴いて丁寧に魔物一体一体へとアプローチを掛けるという律儀さにはメットは心を動かされない訳にはいかなかったのであった。
そんなメットの気持ちを後押しするかのように、リンが口を開いた。
「それで、僕もアイ様の課題をクリアしてスカウトして貰ったばっかりなんだよね?」
「リンちゃん、君がかい?」
いつも森の中で野性味溢れる生活をしているイメージが強いリン。そんな彼女がつい先程皇帝アイのスカウトを受けたばかりだという事実に、ますますメットは心を動かされる気持ちとなってくるのだ。
そこまで話がいっている事を知れば、最早メットには迷う意味は無かったのであった。なので、彼は今の自分の混じり気なく思う気持ちを、そのまま口にするのであった。
「それじゃあ、アイ様。そのチャンスをオレにも下さい!」
そう言って彼は付け加える。──自分は正しいと思った事や興味ある事は、まず自分から率先してやるのがモットーだという事を。
実際は、彼の前に先客は二名まで出ている事となっているのだが、それでも彼から興味を持った事を自分から申し出るという気持ちに変わりは無かったのであった。
そんなメットに感心しながら、アイは言葉を返す。
「感心じゃな、メットとやら。その心意気をこれからも忘れてはいけないぞ」
「ありがとうアイ様」
そんな二人のやり取りを見ながらミナトは少し口を挟む。
「父さん、今回はすんなり話が纏まりましたね?」
「そうじゃの。このメットのような心意気の者は大切にせねばならんのう」
そう言い合う村雨親子の雰囲気も和やかなものとなっているのであった。
このような話の流れになれば、事が早いというものなのである。なので、アイもやり易さを感じながら、これから自分の遣いが戦う事となる相手であるメットの事を一瞥するのであった。
ちなみに、ここは洞窟である。
ビデオゲームでは平然と洞窟の中で戦うというのは日常茶飯事なのであるが、現実観点からみれば、それは自殺行為に等しい事であろう。
だが、この点もやはりパロディアスでは安心なのだ。先程落盤が起こっていたばかりだが、そういった事故は人や生き物がいる場所では『絶対に』起こらないという保障付きなのである。
何とも都合の良いシステムの惑星だが、だからこそ我々の地球にはない独自の感性が育つに至っているのだった。




