第十三章 オカン、蛸を極める
オカンと真輔はクロゴネンドへ。
たこ焼きが新たな帝都の名物料理になった頃、オカンと真輔はクロゴネンドにやってきた。
馬車から降り、背伸びするオカン。真輔も軽く体を解す。
以前、来た時は魔族に乗っ取られていたが、今は人間の手に取り戻している。
「お待ちしておりました、オカン様、真輔様」
はきはきした女の子がやってきた。
「私はクロゴネンドの復興事業を任されている、ニーナです」
ぺこりと挨拶。
「ええ子や、飴ちゃん、あげよう」
オカンがニーナに飴を渡す。
「ありがとうございます」
よく解らないが、親切心で渡してくれたものなので受け取る。
オカンと真輔はニーナの案内で街を見て回った。
「まだ復興工事を始めて間もないですが、奪われる前以上に立派な街にして見せますよ」
口だけではない、ニーナは本気だと伝わってくる。ニーナだけでなく、現場作業員からも同じ勢いが感じられる。
「今、お二人の住居は建設中ですので今日はここをお使いください」
簡易宿泊施設を案内してくれた。簡易宿泊施設と言ってもしっかりと作られていて、休むには十分。オカンと真輔の来訪に間に合うように頑張って作ってくれたのであろう。
夜は焚き火を囲んでみんなで食事。
ハムステーキは一人一枚たけど厚めなので問題なし、大鍋で煮込まれた豆とベーコンのスープはお代わり自由、パンも好きなだけ食べてもいい。
上も下も関係なく、皆一緒に肩を並べて料理を楽しむ。
真輔は豆とベーコンのスープにパンを付けて食べていた。上品ぶっているのではなく、少々パンが固めなので。
少々固めのパンでもオカンは平気で食べる。例えパンが岩のように固くなっていてもオカンの咬合力は容易に噛み砕く。オカンの咬合力はメガロドンをも凌ぐ。
簡易宿泊施設のベットで寝るオカンと真輔。ベットの寝心地も悪くなく、親子揃って早々と眠りの中へ。
音をたてないようにドアが開き、ザニーグが入ってきた。
夜目が効く魔族の目は闇の中でも平気で見える。オカンを見つけ、そっと接近。
ザニーグが見下ろす中、のん気にオカンは大いびきをかいていた。
「このようなものに手こずるとは、これだから下級どもは……」
振り上げた拳が鋼鉄に変化。文字通りの鉄拳に体重を乗せて振り下ろそうとした瞬間、オカンの目が開いた。
一瞬にして飛び上がり、両足でザニーグの腰を挟みこむ。
「かかったな、ある芸人が飛騨の山奥に十余年かけてあみ出した技、かにばさみや。もがけばもがくほどに体に食い込むで」
ある芸人はその体格から振り回されてしまうが、オカンが使えば恐るべき凶器と化す。
振りほどこうとしても、本当にもがけばもがくほどに体に食い込んでいく。
「虫けらがぁ、身の程を知れっ!」
力任せにオカンを殴りつけようとした。ザニーグのパンチは鉄骨を圧し折る威力。
だが、オカンの動きの方が早い。かにばさみを外すと同時にオカン卍固めまたの名はオカンオクトパスフォールドに移行する。
完全にオカン卍固めをかけられたザニーグ。技の痛みと同時にオカンに絡みつかれる悪寒の威力。
オカン卍固めの痛みとオカンの悪寒の二重のダメージ。
たまらずにザニーグは悲鳴を上げる。
「?」
悲鳴で真輔が目を覚ます。一目で何が起こっているのか理解した。
ギリギリと全身を締め上げられるザニーグ。強引に振りほどこうする度に締め上げがきつくなる。どんなにもがいてもオカン卍固めを外すことが出来ない。剛力で抵抗しようとしてもオカンの悪寒が全身を蝕み、抵抗力を削いでいく。肉体と精神への同時攻撃。
やがて、ザニーグの耐久力の限界が来た。
ボキッバキッグギッ、そんな音がして全身の骨が砕け、ザニーグが息絶えた。
魔男爵であるザニーグを仕留めたオカンは何事も無かったように、ベットに戻って寝る。
悶絶を顔に浮かべているザニーグを見る真輔。眼差しにあるのは同情。
「オカンの寝込みを襲うなんてキラウエア火山の火口に飛び込むより、危険な行為なのに……」
オカンの寝込みを襲うなかれ。




