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12・ギャル系ハンターとボスモンスター狩りに行こう



 ギルド村のハンターたちの話によるとだ。


 雅隆が転移した例の荒野、どうやらあそこは誰の土地でもない空白地で、強いて言うなら蟲モンスターの領土、と言うか棲息地であるらしい。


 雅隆たちの想像していた通り、やはりあの荒野は広大な不毛地帯で、蟲以外の生物は殆んど棲息していなかった。

 と言うか、ぶっちゃけ蟲と荒れ地以外何も無いどころか、迷い込んで力尽きたら最後、骨も残さず食い尽くされる地獄の様な所であるらしい。むしろ、よくあんな場所を通り抜けて来たもんだと呆れられたくらいだ。

 しかもあの蟲、驚いた事に食べ物が無ければ岩をも齧るらしい。なんてバカげた生き物だ、もしかしたらあいつらある意味最強なんじゃないの?。


 そして、今居るギルド村だが。

 ここはバルモラと言う国の領域で、アッサバ地方と呼ばれる辺境地との事。


 ハンターと言うのは、この様な国境に押し寄せるモンスターや、諸外国との鍔迫り合いの防波堤として、国内を流動的に転戦する遊軍みたいな役割を担っているのだそうだ。

 で、雅隆たちのお世話になったギルドは「剣閃バルロネッジ」と言う名のギルドだった。


 このギルド村の人口は季節にもよるが、だいたい200人前後。そしてその内の3割くらいは下男など村を運営する非戦闘員で、他は全て荒っぽいハンターばかり。

 もちろん女もいない訳ではないが、職業柄女もまたみんな荒々しい。何しろ男ばっかりだと思ってたら、実は女も男勝りな格好をしてたのでさっぱり気が付かなかっただけの様である。

 まあモンスターを相手にする命懸けの職業だから、男も女もそうなのは仕方ないだろう。


 そして、そんな数少ない女ハンターたちと共にエヴァは今、モンスターを狩りに村を出ていた。


 このギルド村に着いて1週間、なんと次の日からエヴァは彼女らに連れられてモンスター狩りに来ていたのだった。

 ちなみに今回は、荷物持ちとしてモフ大トカゲの「ディメ」も連れて来ている。


 で、この狩りは、ただモンスターを狩るだけではなく情報収集も含まれていた。

 当然ながらエヴァは戦う事が一番得意だ。そして情報を収集するにしても何かしら作業しながらの方が自然に出来るし、それが戦闘関係ならまさにハマり役。

 それにどうせ相手の女ハンターたちも、エヴァたちがどんな素性の人間かをそれとなく探る様に言われている筈だろうし。


 で、エヴァを狩りに誘ってくれたのが「ニムロンナ」と言う3人の若い女パーティーだった。

 色白と色黒と原色ふつう、そんな見た目がギャル系のハンター3人組。

 ま、ハンターってそう言うものかも知れないが、いきなり知らない人間を狩りに誘うだけあってかなりコミュニケーション能力の高い、と言うかノリの良い女たちだった。


 ちなみにこの日は、今までで一番時間を掛けて遠出していた。ただエヴァとニムロンナの3人の他に、エヴァ目当ての男パーティーが数チーム後を付いて来ているけど…。

 そう、そいつらは同行を許可した訳でも無いのに勝手に付いて来たのである。


 周囲をうろちょろされるのは正直あまり気分は良くないが、かと言って同じギルドの人間なので真っ向から追い払う訳にもいかない。 しかも、俺たちもたまたまこっちの方向に用があるだけだ、とかしょうもない嘘を吐くし。

 ニムロンナの女たちも最初は全力で追っ払っていたのだが、それでもしつこく残ったのがこの数パーティーと言う訳だ。


 ただ狩りが大人数になるのはそう悪い事ばかりでもない、それなりにメリットも存在する。

 その一つが、野営だ。

 野営はその人数が多ければ多いほどより安全になるからだ。


 で、少し話は変わるが、ギルド村は狩りに便利な人里離れた猟場を選んで設置してはいる。だが一度腰を落ち着けたらほぼ再移動はしないので、だんだんギルド村近辺から獲物が減っていくのは当然の話だ。

 それでも長期間稼働しているギルド村でなお美味しい獲物を狙おうとするなら、やはりさらなる遠出を覚悟しなければならないのだ。


 と言う訳で、どうせ邪魔なくらい人手が溢れているのなら、ついでに一泊二日の遠出をしようとなったのである。

 勝手に後ろを付いて来る男たちの顔ぶれもほぼ固定され、それなりに気心が知れて来たと言うのもある。

 ちなみにその中には、エヴァへ襲いかかった例の大男もいたが。


「ねえ…、でもほんとに「平原」で豪角獣アムタルクスが出たらどうすんの?」


「それはそれでエヴァが見たいって言ってたからいいじゃん?」


「だからぁ、アムタルクスが居たら狩りになんないでしょーが、その時はどうすんのよ?、何もせずに帰るの?」


「だから、もしソレが出たら私が狩るって」とエヴァ


「「はいはい、それはもういいから…」」


「キャハハハッ、エヴァ頼もし〜」


 豪角獣(アムタルクス)、それは通称「平原」と呼ばれるこの地域最強の巨獣だ。

 硬い剛毛に覆われてずんぐりした巨体、そして盾の様な大きな双角を持つ超重量級モンスターである。

 そしてこのアムタルクスは縄張り意識が高いせいか、草食性な癖に無茶苦茶気が荒かった。ちょっとでも見つかった速攻で追い掛けて来るらしい。マジでウザそう…。


 まあここら一帯では無敵を誇るモンスターであり、自分に敵が居ないのを知ってるからこそ調子に乗っているのでしょう。とにかくバカみたいにデカくて硬くてタフ。そんないかにも強い野生動物の典型みたいな要素を兼ね備えた生物だった。

 なので、流石に数百人ものメンバーを抱えるギルドと言えども、こんな化け物級のモンスターを狩ろうとはしない。

 何故ならそれは、絶対に死人が出るからだ。


 ハンター稼業は一般的に最も危険な職業の一つであり、確かに命知らずなバカ野郎も少なくはない。

 しかし、間違いなく死者が発生すると分かってるモンスターなんかに手を出すバカも又いない。ハンターもそこまでバカでは生き残れないと言う訳である。


 ただエヴァとしては、手っ取り早く大金を稼ぎたいと考えている。ハンターたちの意外と堅実でしたたかなやり方は、参考にはなるが今は必要なかった。

 そしてなんとか割りのいいモンスター(豪角獣)を見つけたものの、周りがそれを許してはくれない。


 確かにそんな化け物モンスターに手を出すのは危険だ、そう言いたくなる気持ちが分かるくらいの常識があるだけに、エヴァもなかなか強引な行動が取れないでいた。

 が、そんなに言うのならとりあえず一度見てみれば?と言う提案がなされ(ノリで)、とりあえず「平原」へと繰り出した次第である。


 ま、エヴァにしてみれば獲物を見つけてしまえば後はどうにでもなる。実際に豪角獣アムタルクス自体はクソデカいだけのフィジカルモンスターらしいし、他のハンターたちを危険に晒す事もなく狩る自信がエヴァにはあった。


 そんな事を考えながらエヴァたちは「平原」へと辿り着く。


 するとそこはまあまあ平原だった。


 背の低い草木が生い茂り、これまでの道程と比べてかなり見晴らしも良い。ただ所々で途轍もなくどデカい巨木が点在する不思議フィールドでもあった。


 聞くところによると、この開けたフィールドはアムタルクスが喰い尽くした結果であり、アムタルクスの手が出せない程の巨木だけが取り残されてこんな光景が出来上がったとの事。


 つまりアムタルクスが喰い尽くして平原となり(※少し食い残しあり)、アムタルクスが次の森へと移動する。そしてゆっくりと時間を掛けて平原が森に成長する頃、またアムタルクスに襲われる、と…。

 そんな壮大な環境の破壊と創造のヘビーローテーションが、延々と繰り返されて来たらしい。


 などと、ここぞとばかりにウゼぇ薀蓄うんちくを垂れ流す男ハンターの話を軽く聞き流しながら、エヴァたち女性陣は黙々と平原を進んだ。

 一応、男ハンターたちがいい所を見せようとして斥候や探索をやってくれるのはありがたいのだが、こう言う無駄話をぶっ込んで来るのだけはやめて欲しい。


 とか思ってたら、出た。


 さっそく居ました豪角獣アムタルクスが。しかも群れで…。


 その姿はまるで海外の巨大ダンプカー並の存在感。なんだか遠近感が狂いそうな光景である。


「うわぁ、なんか思ってたよりデカいなぁ…」とエヴァ


「「「でしょでしょ、ヤッバいでしょ〜っ?!」」」


 見晴らしのいい平原を遮る巨木の一つ。その陰からこっそりと顔を出す女ハンター「ニムロンナ」の声が綺麗に三つ重なったと言う。







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