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おばあちゃんの異世界漫遊記  作者: まめのこ
【第2章】丘の街ヴィトエート
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7 新しい土地での生活

いつも評価ありがとうございます!!!

本当に書く活力になっております。

早速アガットは初老の魔女エンカルナ・リヒルドに事情を話した。


大火傷を負った子供の手当てのために薬草が必要であること。子供の看病のために出来たら長居できる場所が欲しいこと。その両方が欲しいが手持ちは少ないため、仕事が必要なのだということ。事情を知ったエンカルナは早速給料の話をする。勢いで雇う事を了承したのにきちんとした給料と休みを考えてくれるあたり、やっぱりいい人なのだ。


「週に7日勤務の希望制だ。連休が欲しければ事前に知らせな。あんたが居ようがいまいが関係ないがね。給料は月給で銀貨2枚半。支払い時期は自分で決めな!」

「はい!ありがとうございます!ではまた後で相談させてください。」

「そういえば大通りに面したこの店の向かいって空き家だったわよね?アガットちゃんどう?ずっと宿屋住まいは厳しいでしょう?」

「でも一戸建てを借りれるほど手持ちは無いんです。」

「・・・だったら裏の倉庫にでも住めばいいだろう。」

「「え?」」


不動産に詳しいサフサと話をしているとエンカルナが口を開いた。どういう意味か分からなくて黙るとエンカルナはついて来るように言って店の奥に歩いていく。


前にレザルを追いかけた裏口から出るとそこにはツタがつたう赤煉瓦の壁がある。裏口から出て右に曲がれば大きな鉄の扉が現れた。エンカルナが鍵を開けるとそこには30畳ぐらいの開放的な空間があった。倉庫のため屋根は高く設けられているが、小さい窓が1つだけしかなく薄暗い。木箱が何十個と積み上げられているが、空間に余裕があり少しガランッとしている。


「ここを使いな。月銅貨250枚で良ければだけどね。」

「えっでもそれだと安すぎません?それにここの荷物は何処へ?」

「明日、レザルにでも店の2階に運ばせるよ。まだ仕事を続けたい物好きは心置きなくこき使うからね。」

「任せて!僕力持ちだから!!」

「俺も手伝おう。息子だけに働かせるわけにゃいかんからな。」


えっへんと胸を胸を張るレザルに負けじとロザールも進み出る。

丘の街ヴィトエートでの部屋の相場は銅貨700枚からだ。5畳の部屋ですら銅貨300枚ぐらいからだ。


幾ら何でも安すぎる。


「ふん。嫌なら他を当たりな。」

「いやいやここでお願いします。」

「え?アガットちゃん本当にここに決めちゃうの?風呂場もトイレもキッチンも窓も無いのよ?何にも無いのよ?」

「でも安いし職場に近いしでいい事づくしですよ?」

「・・・・・・アガットちゃんどうしてもここに決めるのね?」


サフサさんが念を押すように聞いてくるので力強く頷く。人間暮らそうと思えばなんとかなるのだ。


「〜〜〜〜〜ッじゃあリフォームしましょう!!!」


「「「リフォーム?」」」

「大丈夫!息子に頼むから!!!格安で!すぐに住めるようにするから!」


リフォーム・・・予想外の言葉に思わず4人が繰り返えす。

サフサにもアガットと同じぐらいの子供がいる身だ。女の子が牢屋のような環境で過ごさせるのが許せなかったのだろう、大きい声でまくし立てた。


「お金が・・・」

「お金は私とエンカルナさんが出すから!」

「なんで私が!」

「アガットちゃんを追い出したいのだろうけど、この子本当にこのままここに住むわよ?」

「ッ〜〜〜〜!!」


それでもいいの?とサフサがエンカルナに詰め寄ると苦虫を噛み殺した顔をして黙った。


「リフォームしたら後々宿として貸し出すことが可能よ?エンカレアさんは将来収入源ができる。アガットちゃんはいいお部屋に住むことができて一石二鳥じゃない。」


更にぐいぐいと笑顔のサフサに押され、結局倉庫のリフォームが決定した。



それからリフォームが出来るまでの2ヶ月間、アガットはほぼ半額のような値段で宿屋に滞在した。今までの金額でいいと言ったが、サフサは笑顔でそれを却下し続けた。自分のわがままで滞在が長くなったからだと言って。


こうと決めたおばあちゃんは強いのである・・・・


アガットはエンカレアもといカレナばあさんの店で働き、夜はサフサの宿屋で夕食のしたくを手伝う。休みの日は宿の掃除、洗濯も手伝った。


更に嬉しいことにリフォームを待っている間、子供の意識が戻った。


ロザールとサフサは目に涙を溜めて喜び、カレナばあさんはこっそり作ったお守りを握りしめ、アガットはホッと一息ついた。


子供は何が起きているのか分からないのだろう、唯一動かせる目で周囲を確認している。


「目が覚めた?」


アガットが話しかけるとビクッと体が跳ね、急な動きで生じた痛みに呻く。引きつった皮膚と肉が引っ張りあって全身に鋭い痛みが走ったのだろう。


カンツーオを取った体は皮膚が引きつっていたが、赤みは消え、ふにふにとしている。全身ツルツルだ。ロザールの話では子供は爬虫類と人間のミックスらしいため、もしかしたら脱皮をするのではないかとアガットは考えていた。


食事を作り、毎晩薬湯に入れて、アロエ入りの塗り薬を全身に塗っていく。倉庫に引っ越す予定日が近づくにつれ子供の皮膚は脱皮する状態になってきているのか、皮膚と筋肉の間に隙間ができ始め、痒いのかもぞもぞしている姿をよく見かけた。


そして引っ越しが終わりそうな頃には白くて滑らかな皮膚と金とも黄色とも言えぬ美しい模様のヤモリのような姿が現れた。


まるまるとした顔にふっくらとしたほっぺたと真っ暗な瞳がとても可愛く、人馴れしてないのだろうおどおどした姿と名を呼べば首を傾げるその仕草にアガットは母性がくすぐられた。


名前がないというのでアガットが命名した。ビルケッタ、ビルケッタ・トランドット。通称ビケ。


新しい環境に慣れていないはずなのに、助けてくれたアガットにお礼したいのだろう、引っ越しの手伝い以外にもアガットの後ろを2本足で拙くついて来るのだ。こんなに慕われ可愛くないはずがなかった。めろめろである・・・


「じゃあこれを奥の部屋に運んでくれる?ちょっと重たいかも。」

「・・・だぃじょゔぶ、でぎぅ。」


火傷は喉にも達していたため回復しても声はひしゃげてガラガラだ。だが声を出すのに問題はない。それだけでも幸運といえる。あれだけの大火傷だったのだ、幸運としかいい表しようがなかった。


アガットの新しい家は赤煉瓦の壁が美しい小さな家だ。倉庫だったため天井が高くその近くに4面横長の窓が取り付けられたため家の中は明るい。大きい扉を開けるとキッチンがある。その隣には吹き抜けの居間があり、奥にはタイルが敷き詰められた風呂場とトイレが一緒になっている。隣に階段があり、上がっていくと2階の2つの寝室に繋がっている。大きい鉄の扉を全開にすると居間と庭がつながるよう設計されている。


こんな素敵な家に住めるとは、全くもってカレナ婆さんとサフサさんとその息子さんさまさまである。


前からカレナ婆さんに提案していた薬草の栽培を店の裏、アガットの家の前の庭でやるため、引っ越しの作業が終われば早速庭いじりをする予定だ。



澄み切った空の下、アガットは新しい家族と新しい家、新しい土地で生活を始めた。


ついにヤモリの子供をだせました!!!長かった・・・

私がレオパード・ゲッコーの写真に出会ってメロメロになったのがうまく伝わりますように。


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