Episode・fin
「ギャハハ、何だよオッサン」
おっさんを見て笑う姿は勇者のそれ。
髪は召喚からの月日を示すかの如く半ばまで黒くなり、当初の金髪は名残を残すのみ、指差す手には、あったはずのネイルアートは無い。
顔もメイクなどなく、おっさんには誰だか分からなかったほどだ。
それでも、その笑い声と仕草で、召喚された勇者一行のギャルだと判断出来たに過ぎない。
「アルパカに乗る変なオッサン〜」
気の抜ける様な喋り方をする緩い聖女。
元は喋り方のネタ元であるタレントを真似た髪型やメイクだったのだろうが、今や何とかオカッパにして原型を維持しようと努力した痕跡だけが認められる状態の少女。
おっさんはやはり、喋り方でしか判断がつかなかった。
「おい、何で怠け者がそんなカッコしてんだよ」
地味な魔法使いらしい装束をした邪険少年がおっさんへガンを飛ばして文句を言う。
派手さは消えたが、おっさんが顔で誰かを判断出来ない唯一の存在が彼だ。
街では有名な議員の荒くれ息子で、取り巻きふたりと召喚されていた。
「まあ、ぶしょう者って言われたから、武将の格好したんだよ」
おっさんは、つまらないオヤジギャグとも言えない返事を返した。
「オカシイだろ、勇者、聖女、賢者が居るんだから、オッサンは戦士だろ、何だよ武将って」
邪険者少年が顔を歪めながらツッコミを入れる。
「ギャハハ、武将って、白馬に乗ってんじゃん。オッサンのソレ」
「アルパカ〜」
ギャル勇者と緩聖女がふたりでそう言った。
「いやいや、白馬に乗ってんのは将軍さまだよ」
「武将はアルパカに乗らない〜」
おっさんの反論はすぐさま緩聖女によって掻き消された。
「コイツはエクウスって言う、この世界の騎乗動物らしい」
おっさんは、やれやれって感じで返す。
「良いけどよ。オッサンも着いて来んのか?」
邪険少年はとくにアルパカに興味はないらしく、勇者の冒険に同道する事に懸念があるらしかった。
どう答えるべきかと思案するおっさん。
その時、パカパカと後ろから新たな登場人物が現れた。
「うっわ、アルパカの王子さまじゃん!」
ギャル勇者がそう声を挙げ
「将軍さま〜」
と、緩聖女が訂正する。
おっさんが振り返れば、大鎧が似合うイケメンがそこに居た。
木曽義仲か源義経か、昔の大河ドラマでも観ている様な光景。
「オラ、ちょっと待ってね」
おっさんはイケメンへそう声を掛ける。
「何?ソイツも着いて来んのか?」
邪険少年が嫌そうに顔を歪める。
「トータ、話していないのか?」
邪険少年に反応し、オラから問われて苦笑するおっさん。
「いやぁ、まだ話すとこまでいってないんだ」
おっさんはそう言って3人へと振り返り
「実は、俺は編成した武士団を率いて別動隊として動く事になった」
邪険少年はそれを聞いてどこかホッとし、ギャル勇者は残念そうな顔をする。
「なんだ〜、イケメン来ないのかぁ」
緩聖女はハッキリ言葉にした。
「済まないな。私はトータの副官を仰せつかっている。君たちの案内役は別に用意しているから安心して欲しい」
オラは緩聖女に対してそう謝る。
「BLか!『真実の愛』が花咲くのか!」
突如、まるで別人の様に喋りだす緩聖女。
「抑えろし!」
ギャル勇者がそれを抑え、邪険少年が呆れた様にその姿を見つめている。
「愛、か。確かにそうかも知れないね」
オラが混ぜっ返す様に返事をする。
おっさんもなぜか照れている。
「おい!冗談じゃない。BLはイケメン同士だから成立するんだ!おっさんの出る幕なんかねぇんだぞ!」
邪険少年並みにガンを飛ばしながらおっさんに詰め寄る緩聖女。
「冗談に乗るな。抑えろ!」
ギャル勇者が緩聖女を何とか抑え込もうとし、オラへと視線を向けた。
ギャル勇者の意をくみ取ったのだろう、オラが微笑みを返し口を開いた。
「彼からではなく、私から求めたのだ。聖女殿、外見にばかり気取られていては、その人物の事を真に知ることは出来ないんだ」
そう言葉にされ、おっさんはさらに照れてしまっている。
そのやり取りを見る邪険少年は、もはやその場からすぐにも離れたそうな様子だ。
「おい、おっさん!今すぐ別れろ!お前にこの男は全く似合わん!!」
もはや緩さをかなぐり捨てた緩聖女が吠える。
邪険少年は脚を動かそうとする。
「聖女殿、どうやら貴殿は本当に何も見えていないらしい」
オラがそのイケメン度を全開にしたかのように、緩聖女へと嘆きのポーズを取って魅せる。
「オラ、そんな遊ばないでよ」
おっさんが照れながらもそう口にした。
邪険少年はもはや興味を失い、数歩その場を離れている。
「何が本当の姿じゃい!」
もはや緩聖女の面影を無くしたナニカが吠える。
「女王陛下の近衛騎士団の人だよ、彼女の名前はアレクサンドラ」
おっさんがそう、オラを紹介する。
「・・・」
緩聖女だけでなく、邪険少年まで固まっている。
「おんなぁ~、マジかっこいい~」
緩聖女は秒で復帰し正気に戻ったが、ギャル勇者はついて行けないまま固まっている。邪険少年は振り返り、目を見開いている。
「勇者諸君、我々が君たちをサポートする。安心して旅に出てくれたまえ」
オラは、何事もなかったかのように眩しいイケメンオーラを振りまいている。
「かっこいい~」
ギャル勇者が落ちた。
「反則だろ、お前・・・」
邪険少年が呟いた。
「勇者諸君の案内と、そして前衛としてわが騎士団の騎士が付き従う事になっている。きっと城門のところで待っているはずだ」
勇者一行の混乱など全く見えないらしいオラが、そう言葉を継いだ。
「トータ、我々も行こう」
オラはそう言うと、颯爽とエクウスを翻し、来た道を戻っていった。
「じゃ、そう言う事だから」
おっさんもオラのケツを追うようにその後に続く。
「何だよ、あれ・・・」
取り残された勇者一行は、何とも言えない顔をして2人を見送るのだった。
後に伝説となる、勇者一行と弓騎兵団の旅立ち。これが、その真の姿なのであった・・・・・・




