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お宅訪問

「渚さん、つきましたよ!」


「へぇーここが。」


私は精々家と言ってもマンションの一室だと思っていたのに。

「まさか一軒家とは。」


十年ほど前から土地に対して人間の量が爆発的に増えたことにより、政府に高層マンションの大量移住が進められている。

こんな時代に一軒家に住めるとなれば相当の金持ち、もしくは権力者だ。


「才の両親は何者だ?」


「両親ですか?会えば分かると思いますよ。」


「会えば」か。

私は別に芸能とか興味ないしなぁ。政治もちんぷんかんぷん。どこかの社長の顔すら覚える頭はない。


「少し待ってくださいね。」

そう言うと才は玄関の前に立ち何かの認証を受けていた。

その間に周りを見渡してみる。

この家の周りは高層建物だらけで一見ビルなのか商業施設なのか全く分からない。

まったく、この辺に住んでいないと買い物すら碌にできないな。


「渚さーんせっかくだから家に上がってくださいよ。」


「いいの?私なんかが入って。」


この場所は私にとって眩しすぎる。選ばれた者だけが入れる聖域のよう。

私は恐る恐る玄関の前で深々とお辞儀をしてから家に入る。

もしこの家の玄関前に手水舎があったら全身を清めていただろう。


「お邪魔します」

一応人の家に上がるのだから挨拶は必要だろ。

玄関には靴を収納する桐の棚があるせいで狭く感じる。

最近流行りの木に見せかけた表面だけのおしゃれ。偽善者の香りがするそれかと思ったが少し指の腹で触ってみるとどうやら本物の木だ。

私の唯一持っている黒い靴を丁寧に脱ぐ。

ガサツな私がなぜこんなに丁寧かと言うと壊して買うはめになるのがもったいないから。つまり靴を買い換えるお金すらないということ。


靴を脱ぎ、リビングのような部屋に入る。

リビングはキッチンと一体化していて広々としている。


「才ちゃんから聞いてたけど本当可愛い友達ね!」


声はキッチンの方から聞こえた、オシャレのためか、薄明かりのせいでよく見えないが女の人がいた。

女は作業を止めてこっちに駆け寄るように近づく。


「近くで見たらもっと可愛いわ〜!」


可愛い可愛いって私は愛玩動物じゃないんだが。


「失礼ですがあなたは?」


女はハッとしたようで目を見開いた、そこまで驚くことだろうか。


「ごめんなさいね、私は才ちゃんのお母さんよ〜」


やはりな、しかし見た目的にはまだ30代でシワも少なく、一般的には美女と呼ばれる分類だ。


「見た目的には大分若そうですね。」


聞いてから後悔した、これは聞くべきではなかったと。


「あらあら嬉しいわね〜これでも今年で50なんだけどね。」


今度はこちらが驚かされた、とてもそうは見えない。


「そうだわ!ぜひ貴方にも私の手料理食べてもらいたいの!そこのテーブルで待っててくれる?」


「はあ、わかりました。」


なんでこんなに私に優しいんだ?なにか裏でもあるのか?いや…今あったばっかりで企むか?普通...

なにか作為のようなものを感じながら言われた通りテーブルの椅子に座る。椅子は全部で4脚、この家族は4人家族なのだろう。まさか私が来ることを見越してひとつ増やすなんてことあるわけが無い。

そういえば最初、才から聞いてたと言ってたな....もしかして私の存在を知っていた?どうなっている?

この堂々巡りな思考は5分ほど続いた、勿論結果が出ることはなかった。

何故か一緒に入ったはずの才も2階に上がったっきり降りてきていない。まあ才は中学生だし宿題でもあるのだろう。

暫くして才もリビングに来た。


「才は上でなにかやってたのか?」

暇なのでてきとうな質問をしてみる。


「上が自分の部屋だからね、やることもやりたいことも沢山あるからお母さんに呼ばれるまでは基本上にいるんです。」

ハキハキと話す両目には光があった。私には眩しすぎる光が。


「若いってのはいいね、世の中の荒波に流されない。」


「そんなこと言ってますけど渚さんも若いですよ

ね?」

「私が?なるほどな。」

私自身年齢など気にしたこともない。そんなの気にしても杞憂だと思っているからだ。

「こう見えても今年で18だったかな。」



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