表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/60

『戦争の天才』は神と対峙する!

「戦闘開始!」


 私の号令と同時に、辺りが砲声に包まれる。

 その音、数にして5。

 すぐに、ヴァルディオスの体には5個の穴が開き、そこから血が噴き出す。


「なんだ.... これは... 」


 今まで平静だったヴァルディオスが初めて焦りの言葉を口にする。

 その間に我々は次弾を装填する。 


 どうして戦車の徹甲弾でも傷を与えられなかった体に傷を与えられたのか。

 ヴァルディオスが弱体化したのもあるが、それよりも大きな理由がある。

 それは弾種にある。


 我々が先ほど打ったのは装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)だ。

 しかも砲弾の周りを真空化、低重力化させるスクロールを中に仕込んである。

 更に魔法石の魔力を砲弾そのものに流すことによって、硬度もあげている。


 その貫徹力は前世の装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)にも引けを取らない。

 勿論非常に高価なので連射はできないし、全部隊に配備はできないが、費用度外視の対戦略歩兵用兵器であるため生産できる。

 

「総員!防毒面装備!」


 私の指示で全員が面をつける。


「次弾撃て!」


「そうはいかない」


 次の瞬間、辺りが光に包まれる。

 それと同時、5発の砲声が響き渡る。


「残念だったな。私は人の姿にもなれるのだ」


 そう言って現れたのは人の姿にまで縮んだヴァルディオスだ。


「この姿は攻撃力は下がるが、速度が上がる。それに何より、貴様らの砲撃が当たりにくくなる」


 恐らくヴァルディオスはさっきの砲弾が装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)だと思っているのだろう。

 だが、違う。


「なんだ、この不快感は.... 」


 どうやらヴァルディオスは気づいたようだ。

 そう。

 さっき撃ったのは毒ガス弾だ。

 神に毒ガスが効くかは疑問だったが、問題なく効いているようで安心した。

 先ほど撃ったのは塩素ガス弾。

 恐らく息苦しさと、目の痛みに苦しんでいる事だろう。


 塩素ガスは空気よりも比重が重い。

 大きいままだったらたいして吸わなかったかもしれないが、小さくなったためかなりの量を吸い込んだだろう。

 小さくなったのは愚策だ。

 それと、5発中2発は塩素ガスだが、もう3つは他のガスだ。

 恐らく、後にわかる事だろう。


 これで準備は整った。


「砲兵部隊!退避!」


 私は砲兵を撤退させる。

 ここからは豹爪(パンターナーゲル)と神との戦闘だ。


「ヴァルディオス。君に恨みはないが、国民のためにここで倒す」


 エルベルトがそう言って剣を構える。


「そう言うことじゃ、潔くやられてくれ」

 

 続いてステンホルムも双剣を抜く。


「神との戦い。楽しみね!」


 エメは楽しそうだ。


「エルベルト、貴様いったいどういう弟子を取ってるんだ.... 」


 イレーナは顔を隠しているが、恐らく呆れ顔だろう。

 神を目の前に緊張でも恐怖でもなく好奇心が勝っているエメを見たら当然の反応と言える。


 次の瞬間、イレーナが魔法を放つ。


超空の天撃(ライトレイ・インドラ)


 空から光の矢が無数にヴァルディオスに向けて放たれた。

 そしてその一撃一撃が地面と接触した時に爆発する。

 超空の天撃ライトレイ・インドラは神級魔法。

 その威力は圧巻と言わざるを得ない。

 以前、エルベルトが放っているのを見たことがあるがそれよりもさらに高威力だ。


 それと同時他3人が左右、そして正面に散開しながらヴァルディオスとの距離を詰める。


「神の御業を見せてやろう」


 そう言ってヴァルディオスは杖を生成する。


分身(ミラージュ)


 魔法を使うと、なんとヴァルディオスは3つに分裂した。

 一つは体から出血していて他二つは出血していない。

 恐らく出血しているのが本物だろう。


 すぐに、一対一での戦闘が始まる。


 三体すべて、剣を交えているのを見ると、どうやら幻術などではないようだ。

 しかし、エルベルトはともかくステンホルムと、エメはやや劣勢だ。

 流石に神を相手には厳しいらしい。

 

「仕方ない。あれを使うしかないようじゃな」


 ステンホルムはそう言って一旦後ろへ下がる。

 そしてスキルを発動する。


未来視(クロノサイト)


 そう。

 ステンホルムはスキル持ちだ。

 そのスキルは少し先の未来を見ることができる。

 効果時間はそう長いわけではないらしいが、それでも強力な戦闘向きのスキルだ。

 

「さぁ、続きといこうか」


 ステンホルムはそのまま白兵戦に持ち込む。

 ただ、さっきと違って、圧倒的に優勢だ。

 相手が攻撃しようとしてもそのすべてをよけ、的確に反撃していく。

 こういうのを確か英語で「ワンサイドゲーム」というのだったか。

 ともかく、見違えるほどに優勢だ。


 さて、エメもこのままではまずいと思ったのか作戦を変える。


「さぁ、ここからは数で行くわよ」


 そう言って距離をとって、剣を構える。


氷連矢(フルアイスバレッド)


 エメは氷の矢を撃つ魔法を放った。

 氷連矢(フルアイスバレッド)は普通の魔法だが、エメのは威力と数が桁違いだ。

 もとは中級魔法だが、威力は超級に引けを取らず数は100を超える。

 そしてそれが一斉に放たれる。


(フル)連矢(ファイヤーバレット)


 間髪入れずに今度は無数の炎の矢を放つ。

 そしてついに、その一発がヴァルディオスの複製体を捕らえた。

 見事に命中し、爆発する。


 すると、ヴァルディオスの複製体は一瞬にして消えた。

 どうやら、どんなに弱い攻撃でも当てるだけで消えるようだ。


 少しして、ステンホルムの方も決着がついた。

 ステンホルムは見事、敵の心臓と頭両方に剣を突き刺した。

 そして複製体は消えた。


 エルベルトの方は、いまだに激しい戦闘をしていた。

 段々と、両者の出血が目立つようになってきた。


「神の御業を見せてやろう」


 そう言ってヴァルディオスはエルベルトと距離をとる。

 次に杖を生成する。


黒い悪魔(コラプサー)


 そして、なにやら黒い球体を生成する。


 次の瞬間、とてつもない吸引力が発生する。

 それは大きさに関係なくあらゆるものを飲み込んでいく。

 まさしくそれは、ブラックホールだ。

 しかし、エルベルトは微動だにせず、剣に魔力を込める。

 そして、黒い球体に向け、剣を一振りする。


 すると、黒い球体は真っ二つに斬られ、消滅した。


「これは莫大な魔力を込めればあらゆるものを切断する剣『レーヴァント』だ。貴様のその魔法も切断できる」


「人間風情が付けあがるな!」


 そう言ってヴァルディオスは杖を構える。


終焉の黒日(ノクス)


 すると、ヴァルディオスを中心にとんでもない爆発が起こった。

 音はしない、しかし一瞬にして辺りが漆黒に包まれる。

 全員が身構える。

 しかし、その威力は絶大で、3人とも地面に倒れこんだ。


超級治癒(ハイヒール)


 しかしすぐエルベルトは立ち上がった。

 ただ、ほか二人は気絶している。


「爆発を食らったものは大ダメージを負い、良くて気絶悪ければ死ぬ魔法だったのだが。なぜ立てる?」


「気合いだ」


 そうとだけ言ってエルベルトは剣を構える。




「なんだ.... 今度は.... 」



 いきなりヴァルディオスは声をあげる。

 そう、ここにきて最後の仕掛けが発動した。

 

 我々が撃ったガス弾。

 二発は塩素ガスだが、他三つは違う。

 その正体はマスタード・ガスだ。

 吸入してから効果が出るまで少し時間がかかるが、その効果は絶大。

 本来は数時間した後に効果が出るが、この異世界仕様ガス弾では吸入してから30分もすれば効果が出てくる。

 

 気づけば、ヴァルディオスの皮膚は焼けただれ水ぶくれができている。

 それにさっきとは比べ物にならないほど息苦しそうだ。


「石原の作戦が効いてきたようだな」


「つけあがるなよ人間。恐らくこの原因は瘴気だ。あたりの空気が澱んでいるのが分かる。おそらくそれが原因だ」


 凄いな。

 空気の成分が何なのかもわかっていないこの時代にそこまで理解するとは。

 しかし、我々は防毒面をつけているが、ヴァルディオスはつけていない。

 今更防毒面を奪い取ってつけたとしても、もう遅い。

 万事休すだ。


「まさかこれほどまで追い詰められるとは思わなかった。良いだろう我が最強の魔法を見せてやろう」


 そう言ってヴァルディオスは杖を天高々に掲げる。


創成回帰(リ・ジェネシス)


 次の瞬間、なんとヴァルディオスの傷は癒え、開いていた穴は塞がり、皮膚の損傷もなくなった。


「素晴らしいだろう?これは周りのものをもとの状態に戻す魔法だ。我の傷も辺りの瘴気もすべて戻った」


 エメとステンホルムは気絶し、エルベルトもかなり消耗している。

 一気に形勢が逆転してしまった。


 そんな中、エルベルトがヴァルディオスに質問する。


「魔力は戻っていないようだが?」


「魔力が戻らなくてもこの万全な状態の我なら問題ない。魔法無しでも貴様を倒せるそれに私のもとの魔力は絶大。かなり消耗してしまったが、それでも貴様と同じだけは残っている」


「そうか。だが、イレーナの魔力は私よりずっと多い。ということは君よりも多いということだ」


「それも問題ない。所詮は魔法使い。今は剣士に守られているが、貴様を倒した後、近距離戦に持ち込んでしまえばいい」


「そうか。じゃあ、私はこれで失礼する」


 そう言ってエルベルトは剣を納め、そのまま後ろに下がった。


「エルベルト、流石に舐めすぎだ」


 そう言って前に出たのはイレーナだ。

 そして、魔法を放った。


私の思い通りの世界(ワールドイズマイン)


 次の瞬間、神は消滅した。


 そう。

 イレーナはエルベルトの秘儀『私の思い通りの世界(ワールドイズマイン)』を使用したのだ。

 私の思い通りの世界(ワールドイズマイン)は半径500米の範囲を使用者の思い通りにする魔法だ。 

 放出した魔力量より相手が保有する魔力量の方が多ければ効果は受けないが、今回ヴァルディオスはかなりの魔力を消耗した。

 『神の御業』は相当魔力を消耗するようだ。

 故にヴァルディオスはイレーナよりも魔力が少なくなったのだろう。


 今回の作戦はこうだった。

 まず、対戦略歩兵を使用して敵を弱体化させる。

 そのうえで豹爪(パンターナーゲル)が戦闘する。

 その際、イレーナは最初に大きな一撃を放って、打撃を与えた後は戦闘をしない。

 そして消費した魔力はポーションによって回復する。

 他剣士3人はイレーナがポーションを飲むッための時間を稼ぐ、並びに相手の魔力を消耗させる。

 そして魔力が低下した時イレーナが私の思い通りの世界(ワールドイズマイン)を使用する。

 

 そして今、無事、神は撃ち滅ぼされた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ