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4-7:嘘

「第一回!特大パフェ早食い対決ぅ〜いぇいいぇい!実況は清廉潔白純情派のイマお姉ちゃん!解説はもちもちふわふわ女子ホムホムちゃん!」


「よろしく……です」


「リーベちゃんとエウロスちゃんの戦いの火蓋は切って落とされようとしています。ホムホムちゃんどちらが勝つと思いますか?」


「リーベは甘いもの大好き。しかも甘いものは別腹派女子。最近太り気味を気にしているが、やる気になったら気にしない。対してエウロスさんは細身ながらも筋肉質。胸に私とリーベには無いものを持っている。その力は未知数……です」


「ふむふむ。これは熾烈を極める戦いになりそうですね。おっと試合が始まるようですよ」


 イマテラスさんとホムホムがスプーンをマイク替りにして楽しそうに実況解説ごっこしているのは放っておいて、目の前の巨大な糖分の塊をどう処理するか考えよう。


「怖気ずいたの?今なら不戦勝にしてあげるわ」


 どうやらリーベも頼んだもののあまりにも巨大な大きさに内心苦悶しているようだ。だが、勝負が始まってしまって後に引けなくなり、俺から敗北宣言を引き出そうとしている。


「受けた勝負は降りなくてね」


 そう言うとリーベは苛立ちを隠せてない表情に変わり。


「イマ!始めるわよ!」


「オッケー。制限時間は三十分!どちらが早く食べ終わるかの早食い対決!レディーファイト!」


 イマテラスさんの開始の合図と共に俺とリーベはパフェに口をつける。


 特盛されたクリームを口に頬張ると甘過ぎる味にしては口通りが良かった。これならば食べ続けられるな。


 そう思い上の方からクリームを食べていき、クリームが無くなって対面にいるリーベの顔が見えてきた。


 リーベは頬にクリームつけながらがむしゃらにパフェを食べて既に上に乗ったクリームが八割程なくなっていた。


「おーっと!リーベちゃんの猛攻だ!爆進爆食い!止まることを知らない暴走魔導娘だ!」


「対するエウロスさんは一般的には早い部類ですけど、リーベにはまだ及びません。ここからの追撃に期待……です」


 まだ腹には余裕はあるが、舌が甘さで馬鹿になりそうだ。先に進んでいるリーベも同じはずだが、どう対処しているのか。


 観察しながら食べるのを勧めていると、リーベは偶に底からフレークを掬っていた。なるほど、クリームだけではなく、底にあるフレークを掬って飽きを少なくしているのか。


「おおっと!あれはフレーク掬いだ!クリームとフレークを混ぜて美味しさの追求をしているんだよ!うーんホムホムちゃん、お姉ちゃんのと食べ比べっこしよ!」


 実況と解説の合間に自分たちの頼んだパフェを食べているのも放っておこう。これはエウロスの身体に入った俺とリーベの仲を取り持つための勝負なのだ。


「!?」


 急に手が動かなくなった。腕に目一杯力を入れても動かせることはできなくて、パフェの器とスプーンを持った両手だけが固まったように動かせない。


「おーっとエウロスちゃん、食べる手が止まった!ペース配分を間違えちゃったのかな〜?」


 リーベが勝ち誇った顔でパフェを食べ進めていく。


 これはリーベの加護の力か。どうやらリーベも加護を使ってまで俺に勝ちたいらしい。そこまで俺との勝負に熱くなってくれるとは嬉しいことだ。


 だが俺も勝負となれば勝ちに行く性格。エウロスの身体で品のないことは仕方なかったが致しかたなし!


「えっ!?」


「なっ!エウロスちゃんが禁断の技を発動だ!」


「あ、あれは乙女の恥じらいも外聞も捨てた技。掻き込み食い!……です!」


 クリームが少なくなった頃合いで下の方の層とクリームを混ぜ合わせて、パフェの入れ物を持って丼物を食べるように掻き込む。


 エウロスがやったらはしたないと叱っている行動を俺がやる。リーベには食べる速さがある。だがこの女神にも食べる能力があり、こういった掻き込み食いをしても、頬肉が柔らかいので口内で頬張れる。


 顎だけは強靭で、噛み砕く力も強い。砕き、飲み込み、砕き、飲み込み。


「エウロスちゃんそのまま完食だー!」


 リーベのリードなどものともせずに俺はパフェを食べきった。


「な、な、な、何で?どうして!?」


 僅差でリーベも食べ終わると信じられないようなものを見た顔をしていた。


「何か問題でもあったか?」


 リーベの加護はクロウノスの時を操る加護。俺の手だけの時間を止めて動きを制御したようだが、そんなもの俺の気合パワーの前では無力。止めるなら全身を止めなければ俺が止まらないのは昔に試している。


 リーベの敗因は俺をただのそこらにいる女性と思い込んでいることだ。まぁ当たり前か。


「な、何もないわよ……」


 加護を使う不正を言ってしまえば体裁が悪いのでなかったことにするしかなかった。


「はーい勝負に負けたリーベちゃんには罰ゲームでーす」


「えっ!聞いてないわよ!」


「罰ゲーム、これ」


 ホムホムが取り出したのは指に嵌める小さな魔導具だった。


「それは何だ?」


「嘘発見器……です」


「これを使ってエウロスちゃんに一つ質問してもらいます!リーベちゃんはその質問に答えるだけ。はい装着ぅ〜」


「なっやめ!力つよっ!」


 リーベが抵抗しようにもイマテラスさんの膂力の方が増して無理矢理指に嵌められる。


「因みにその魔導具は質問の内容に嘘偽りなく答えないと外れないから。エウロスさん質問どうぞ……です」


 質問か……俺のことを疑っているかどうかとか尋ねるのも変だしな、適当な質問にしておくか。


 頭の中で話を遡り気になることを質問に決める。


「リーベってアズマの事が好きなのか?」


 さっき本人も否定していた事だし、こんな分かりきった事を聞いても仕方ないしな。


「き、嫌いよ!」


 ほら、さっきと同じ回答だ。エンターテイメント性が無くて申し訳ないが、罰ゲームといえどリーベを貶める行為はしたくない。


「ウッソ!」


 しかし魔導具は嘘判定を出した。


「え?」


「キャーキャーリーベちゃんキャーキャー!」


「口は嘘つき身体は正直」


 恐らくだがこの嘘発見器魔導具はホムホムが加護で作った代物である。正誤は不確定要素である。


「こ、壊れてる!私があいつのこと好きな訳ない!」


「ウッソ!」


「違うもん嫌いだもん!」


「ウッソ!」


「嫌い嫌い嫌い!」


「ウッソ!ウッソ!ウッソ!」


 発言すれば発言する毎に墓穴を掘っていき、その度にリーベの顔は紅潮していく。もう肩で息してるし。


 しかし本当のことを言わないと外れないのはえげつないな。


「……好感は持ってる」


 俯いてリーベがボソリと小さく呟くと、魔導具が外れて机の上に落ちた。なんて言ったか聞き逃したんだけども。


「もう休む!!!」


 そう紅潮し涙目のリーベは叫んで店を退出してしまった。結局のところ俺のことは嫌いではなかったという結論でよろしいだろうか?いやはや、リーベに限ってまさかな。

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