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4-6:魔法の呪文

「何で!?どうして!?」


「なんでもどうしてもないの。私達は遊びに来たんじゃないのよ」


 リーベはため息混じりに俺と同じことをイマテラスさんに言う。


「うぅ。リーベちゃんはお姉ちゃんと仲良くお茶してくれないんだ。お姉ちゃんのこと嫌いなんだ」


 そんなつっけんな態度のせいかイマテラスさんは目に涙を溜めて訴える。


「イマテラスさん、リーベさんも忙しいんで、あっちで馬鹿共の勝負でも観戦してましょ」


 えーんと泣くイマテラスさんの肩を叩いて、エウロスとクエピーの方を指さしながら提案する。


「ま、待ちなさいよ。誰も行かないなんて言ってないわよ」


 提案したところでリーベが急に意見を変えたこと言ってきた。確かに嫌とだけ言ったが、それは行かないって意味合いでは?とツッコミを入れたい気持ちをグッと堪える。


「ホント!じゃああっちのお茶屋さん行こ行こ!」


 イマテラスさんはケロッとした表情でリーベとホムホムを茶屋と導く。嘘泣きだったのか?


「あのあの私も?」


「勿論!ホムホムちゃんも!」


 イマテラスさんは今度はホムホムの手を引いて二人で茶屋に向かっていく。


 リーベは俺を睨むように見つめてから、イマテラスさんの後を追っていく。俺、エウロスの身体になってからリーベに対して心象を損なうことしたかな?やたら敵意を持たれている気がする。


 よし、ならばこのお茶会でリーベとの親睦を深めて、蟠りを解いておこう!そうすれば俺が中にいるなんて疑うことも無くなるだろう。


「すご〜いこの時期はセルフサービス何だって!お姉ちゃんはアンミツマシマシサクランボホイップアマメパフェにしちゃおーっと。ホムホムちゃんは?」


「アンミツマシアズキマシホイップマシマシ抹茶パフェにします……です」


 店の空いた席に着くや否や二人が呪文のようなことを言ってメニュー表見ながら話していた。


 店の人はおらずに、この時期はセルフサービスで魔導具が勝手に作ってくれる仕組みになっているようだった。


「リーベちゃんとエウロスちゃんは?」


「お…あたしは、えーっと」


 メニュー表を見ると甘味がズラリと並んでいて、この弛んだ体を絞っている最中の俺には悪魔的な食べ物の一覧にしか見えなかった。


「アンミツマシマシサクランボマシマシホイップマシマシグランドパフェよ」


 ふふんと勝ち誇ったような表情を向けてリーベは注文を決める。敵意というか対抗意識的なのを感じ取れる。も、もしかして俺がポッと出てきた変な女に騙されると思っていて、その変な女である俺を試しているのか?そうだとすればなんと心優しいのか。


 そんな心優しさに俺は応えなければいけない。俺は変な女では無いと証明しなければ。ここは全員に合わせた注文をするのがベストだ!


「じ、じゃあこれで」


 三人が長い注文をするので、とりあえずメニュー表で長い一文を指さす。


「はーい。じゃあ注文しちゃいまーす」


 イマテラスさんが店に置かれている魔導具を弄って注文をすると、奥の方から注文した品を作り出す音が聞こえ出した。


「えーっと、そういえばホムホムちゃんとエウロスは初めてだったよね?」


「はい。あたしはエウロス、よろしく」


「ホムホム……です」


 ホムホムへと手を差し出すと弱々しく握り返される。相変わらずホムホムは恥ずかしがり屋だな。


 イマテラスさんが注文している間にお冷を持ってきたが、余計リーベに睨まれた。何で?気を利かせたらいけないのだろうか?


「エウロスちゃんはねアズマちゃんと一緒に暮らしてるんだよ」


 いきなりのカミングアウトに水を吹き出しそうになる。なぜかリーベも吹き出しそうになってむせていた。


「あ、貴女達同棲してるの!?」


「あぁ、仕方なく……な」


「何!?仕方なくって!!!」


 物凄い剣幕でリーベに詰め寄られる。


「あーっと、シェアハウスだ。お互いお金に困ってるから。家賃が安いところに住んでるだけだ」


「それを同棲って言うんじゃない!!!てかアズマは持ち家あったでしょ!」


「アズマちゃんのお家は不幸なことにも竜巻で消し飛んじゃったんだって」


「だ、だったら私のところに来ればいいじゃない」


「えっ?リーベの家に行っても良かったのか?」


「貴女のことじゃない!い、家になんて入れないわよ!相談なり何なり来れば良かったのよ!あいついつも一人で抱え込んでばっかり!」


 リーベの言い分にホムホムも同意したようでコクコクと頷く。


 目の前に当の本人がいるとは思っていないので、本音を言われると騙して聞いているみたいで歯痒く、申し訳ない気持ちになる。


「リーベちゃんはアズマちゃんの事が好きなんだねぇ。くぅわぃい〜」


「んなっ!んなんなんな!そそそそそんな訳ないでしょ!誰がアズマなんか好きになるもんですか!」


 頬を紅潮させて身振り手振りで大きく否定するリーベ。リーベが俺に好意を抱いている訳がない。


「だよな。好きになる要素ないもんな」


「はぁ!?貴女に何が分かるのよ!?」


 俺のことなのに怒られてしまった。俺ではなく、エウロス自体に敵意があるとみた。


「喧嘩駄目……です」


 ホムホムが俺とリーベの間に注文した甘味を置いた。


「え、なに……これ」


 俺の目の前には俺の顔を隠すほどに大きく、色んなトッピングがされたパフェが存在していた。見ているだけで胸焼けがするんだけど。


 同じくしてリーベの前にも俺と同等の巨大なパフェが置かれる。


「喧嘩駄目……です。早食いで白黒つける……です」


「ふん。私にスイーツ勝負を挑もうっていうの?」


「いやいど……」


 いきなりこの巨大なパフェの早食い競争をするなんて無理がある。と言い返そうと思ったが、ここでリーベらに付き合って親睦を深めた方が今後のためになるのでは?と思いついた。


 それにこいつらとこういった遊びをするのも久々なのでやってみたい。


「どうするの?私はやめてあげてもいいけど」


「そんな気遣いは要らない。勝負だリーベ!」

 

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