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2-2:三下

 昨日の腹いせにエウロスを地下送りにしたが、当のエウロスの身体を持った俺の予定というものを考えていなかった。


 まぁここにきた理由はエウロスを地下送りにするのと、エウロスの身体でギルドカードを作る為だ。


「おい姉ちゃん。一人になっちまったな。暇なら俺たちに付き合ってくれよ」


 受付へと踵を返そうとすると、俺の前に大中小と区別できる身長の男達が三人行手を阻んで、大が下衆な顔でそう言った。


 俺は無視して横を迂回しようとする為に一歩踏み出すと、また立ち塞がる。


「おいおい。無視は頂けないな。せっかくギルドランクCCのリーガル様が声をかけてるんだぜ?」


「そうだぞーランクCCのリーガルさんだぞ!」


「リーガルさんだぞ!」


 大中小とこだまのように連れて内容が薄くなっているのに突っ込んだら、こいつらの思う壺なのかもしれない。


「ギルドランクCCねぇ……あいにく俺……あたしは暇じゃなくてね」


 ギルドではギルドに残した貢献度に応じてギルドカードにランクが表記される。一番上がXでSSS、 SS、S、SA。と下がって行く。一番下はF。CCのリーガル様は平均的な部類だな。


「姉ちゃんは見たところギルドに所属ていないんだろ?」


「今からギルドカードを取得するんだ。だからそこを」


「だったら俺様が手伝ってやるよ。手取り足取りとな!」


「リーガルさんに手伝ってもらえるなんて光栄だぞ!」


「手取り足取りだ!」


 エウロスの事もあって怒りの感情がすぐに溜まってしまう。もしかしたらエウロスの身体だからかもしれないが。


 周りの者は助けようともせずに見ているだけだ。この手の輩とは関わっても圧倒的な力がないと、しこりが残る。どこの誰かもしれない俺を助けるメリットよりも、デメリットの方が大きい。


 だから周りの人間を責めるのはお門違いだ。


 俺も闘技場を出て、ここに来た当初はそういうチンケな輩に絡まれたりしたが、全て力でねじ伏せて黙らせてきた。

 俺の身体だったらいとも容易くねじ伏せられるだろうが、今はエウロスの身体だし、目立った行動は避けたい。


 なので穏便に。


「結構だ。あたし一人で間に合っている」


「ちょ、待てよ」


 そう言って間を抜けようとすると、リーガルが鼻声でそう言って、俺の細い腕を掴んだ。


 掴まれた瞬間に反射的に合気道でリーガルを地面に倒しそうになったが、理性が停止させた。


 そのせいで男と女の力の差で、強く握られた腕を振り解くことができなくなってしまう。

 振り解く手段は多々あるが、全てが暴力に直結して目立ってしまう。もう既にエントランスでの注目の的なのだが……。


「ちょっと綺麗な顔して、いい身体してるからってお高く止まりすぎじゃねぇの?俺様の事舐めてんのか?」


 綺麗な顔。確かにエウロスは黙っていれば綺麗な顔だ。あいつの中身を知れば顔の印象が百八十度変わるだろう。

 リーガルは今の言葉と共に俺の身体を選定するかのように見てきて寒気がした。


「舐めてはいない。それよりもあたしをどうしたいんだ?」


「それはここを出てからのお楽しみだ」


 ヒッヒッヒと三人で未来のピンク色な出来事を想像して笑い合う。

 ふむふむ。外に出ると。ならば人目のつかない場所へ移動するだろう。そうすれば目立つ事もないし、こいつらにお灸を据えることができる。


 よし、プランは決まった。一応か弱さを演出しとくか。


「いやっ、離して」


 か弱い女性を演じると、リーガルは舌なめずりした。


「今更遅いぜ。さぁ行くぞギルドがなんたるかを俺が手取り足取りとみっちり教えてやるぜ」


 腕を引っ張られて連れて行かれようとした時だった。


「待て」


 そう冷たい声がリーガルを止めた。この凍てつくような声、昨日聞いたな。


「あぁん何だぁ!って!?ゆ、ユウヒ!」


 止めたのは勇者であり、俺をパーティーから追放したユウヒ•フォンヌ•シュバリエ•ローゼンだった。そのユウヒが塵を見るような剣呑な目でリーガル達を見ていた。


「貴君等の諸行は少々目に余るな」


「な、なんだよ!俺はこの姉ちゃんにギルドの何たるかを教えてやろうとだな」


「ほう。貴君等がギルドを語れるとはな。公共の場で婦女を大の男三人で取り囲み、挙げ句の果てには嫌がる婦女を誘拐。まるで犯罪者だな。

 ではそんな貴君らに、教えてもらおう。ギルドとはなんぞや?」


「うっ……ぐっ……」


 ここでギルドを語ろうものならここは犯罪者ギルドですと言っているのも過言ではない。そんなことをすればギルドお墨付きのギルド員に処されかねない。だから何も反論ができない。


「今ならまだ汚名返上もできるが、わたしはさっさと去った方が身のためだと忠告しておく」


 ユウヒは腰に携えている剣の柄に手を置いた。それを見て三人は生唾を飲んだ。


「きょ、今日ところは教えるのは勘弁してやらぁ!」


「教えるのは勘弁してやらぁ!」


「勘弁してやらぁ!」


 三人は捨て台詞を吐いてギルドから出て行ってしまった。


「大丈夫か?」


「あぁ、ありがとう」


 ユウヒはいつもの声で俺の安否を気にしてくれた。ちょっと指の痕で赤くなった腕を摩りながら謝礼を言っておく。


 どうやら中身が俺だってことは気づいていない。まぁそうだろうな、俺とエウロスの身体が入れ替わっているなんて思いもしないだろう。


「………」


「何か?」


 ユウヒがずっと見つめてきていたので聞き返す。


「なぜ。なぜ、腕を掴まれた瞬間に投げなかった?」


「え?」


 嘘だろこいつ、俺が一瞬でも反撃に講じようとしたのを見抜いたって言うのか!怖えよ勇者の観察眼!


「な、何を言っているのか分からないな。こんな細い腕であの大男を投げられる訳ないじゃないか。あはは」


 苦し紛れの言い訳。ユウヒの俺を見る目が、どこか疑っているようにも見えてきた。

 嫌だぞ、ユウヒやパーティーメンバーにこんな姿になったのを見られるのは。戻るまで絶対に隠し通す!


「……確かにそうだな。貴女は危険な目に遭っていたのに失礼なことを尋ねてしまったな。すまない」


「い、いえいえ、ユウヒさんに助けていただかなければ今頃どうなっていたか。ありがとうごさいます」


 ユウヒに軽くとは言え、頭を下げさして腰を低くして対応する。


「今後もああいった輩に絡まれたら、まずは助けを呼べばいい。ここの人間は助けてくれる」


「そ、そうします。本当にありがとうございました。では失礼」


 ユウヒの背後にホムホムやリーベがやってくるのが見えたので、早足でその場を後にする。


 ユウヒの視線がまだ背中にある。中身が俺だと疑っているんじゃなくて、力を隠している事に疑問に感じているだけだよな?そうであってくれ。


「ん?ユウヒどうかしたの?」


「いや……何でもない。では行こうか先方を待たせても悪いしな」


 そんなやりとりが聞こえてユウヒ達が出て行ったのを確認して一息をついた。


「面白い!」「続きが気になる~」と感じ、お思いになられたら、


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I need more power!!!!


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