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1-12:アズマ、崩れ落ちる

俺達は陽が落ちて暗くなった、活動拠点の街ヴェルサスの通りをとぼとぼと、俺の自宅に向かって歩いていた。


 あの後魔王をどう討伐するかと、3人で案を出し合ったが、今まで勇者が魔王を討伐した歴史が無い異常いい案が出るわけがなかった。


 事情を説明してユウヒのパーティーに再度入れてもらうように懇願する案もあったが、この入れ替わった状態ではパーティー討伐なんて出来ないので却下となった。


 ユウヒが魔王を討伐するのを待つのも、いつになるか分からないし、そもそも倒せないかもしれない。やはり、自分達で何とかしないといけなく。まずはこの入れ替わりが治る神学観点の方から試してみようということになった。


 その為世界樹の夜露が必要となり、俺の全財産てある。1000万ゼン弱が入っている通帳を取りに帰っていた。


 5000万ゼンだったが、必死に頼み込んで、とりあえず前金で1000万ゼンを払うことと、入れ替わった身体を定期的に検診させることを条件に、必要分だけ使わせてくれることになった。


「アズマ、あんた結構お金持っているのね」


「そうだな。闘技場時代の賞金とか、魔王の眷属討伐任務とかしていたからな。仕送りに結構消えているが、俺の歳では同い年よりも溜め込んで入るだろうな」


「結構凄いのね。ま、あたしの総資産の足元には及ばないけどね!」


「お前今一文なしなの分かってる?」


「帰れば沢山あるわ!」


「帰れれば、な」


 現実を突きつけて、お互いに息を合わせてため息をついた。


 今日一日、人生で一番風変わりで、奇妙な一日だった。これ以上異常な事態は起こらないだろう。


 それにしても、解決の兆しが見えたのは精神的に楽になるな。


「おいこっちだって、来てみろよ!マジですげぇんだって!」


 俺とエウロスの背後から青年が女性を手招いてから、合流して通り過ぎて行き、俺たちが向かう通路を曲がっていった。


 よくよく見ると、沢山の人がその通路に小走りで向かっていた。


「何かしら?お祭り?」


「春芸祭はもう少し先だが……」


 向かう道は同じなので気にせず通路を曲がる。俺はこの出来事から常にこのエウロスの行動を監視しようと肝に命じることになる。


 通路を曲がると俺の住んでいる借家がある通路だ。


 その通路は人集りが出来て、その人集りはそこにあるはずであった俺の住んでいた借家が土台だけを残して消えているのを物珍しそうに見ていた。


「な、なぁ、何があったんだ?あそこ、家があったよな?」


 人集りの最後尾にいた男性の肩を叩いて訊ねる。


「スゲェよな。俺も詳しくは知らねぇけど、なんか昼過ぎ頃にあそこで竜巻が起こって、そこの家だけ吹き飛ばしたらしいんだよ。どう見ても家屋も家具も残ってねぇ。住んでた奴は災難だねぇ」


 住んでいた奴が目の前にいるんですよ、お兄さん。


「すまん!ちょっと通してくれ!通して!」


 人集りを割って、土台しか残っていない家の前に行く。

 本当に何も残っていない。家屋、家具。当然通帳なんてものも無い。あるのは土台だけ。


 つまり世界樹の夜露は買えない。入れ借りの元に戻る方法が遠のいたということ。


 俺はその場で膝から崩れ落ちる。


 何で、何で俺から奪っていくんだ。

 どうしてこんなに不幸なことが起こるんだ。原因は、ウテナ。女神ウテナのせいだ。


 許せん。許せんぞ!


「あ、アズマ」


 人集りを抜けてエウロスが俺の肩を指で叩いた。怒りと悲しみでどうにかなりそうな俺は振り向くと、エウロスは申し訳なさそうにしていた。


「ご、ごめんね」


 そして目を合わせずに謝罪した。


 何でお前が謝る必要がある?なぜ罪悪感を感じる必要が……。そこでさっきの青年が言っていたことを思い出す。


 昼過ぎ。

 竜巻。

 それってエウロスが力を発動してた時間と、力の内容と一致していないか?


 立ち上がり、眉を顰めてエウロスと向き合う。


「ち、違うの、ワザととかじゃなくて……多分だけど、アズマの身体で使うの初めてだったから、座標がズレてアズマのよくいる場所で発動しちゃったのよ……」


 説明されても怒りが収まるわけがなかった。


「あ、あとね、ごめんねついでだけどね、さっきオオヤさん?って人が、保険はおりるけど、残りのローンの300万ゼンは払ってねって。い、一応寝泊まりできるところは見つけてくれているらしいわよ」


 えへへと笑いを付け足す。

 エウロスもエウロスで、こんな状況なんて初めてだから対応に困っている。それに人前だから、約束通り精一杯普通に振る舞っている。

 

 この往来で本気で怒ることもできず、身体の中に怒りが溜まっていくのを感じる。そしてプツンと何かが切れた。


「あ、アズマ?アズマ!?えっ……嘘っ……立ったまま……死んでる!?」


 沢山の異様な状況と、沢山の感情が頭の中を支配して、俺は憤死した。

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