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変わらない二人







「結局上手くおさまるようになっているのですわね、お姉様は」




うふふと扇子で口元隠しながら笑うエミリーの隣ではロイが頷いた。

季節は秋。

今日は小さな赤子が誕生し王族の仲間入りを果たした記念すべき日。


姉が王子の熱烈なプロポーズを受けてから一年と経ってはいない。

あの日、妹のエミリーが忠告したにも関わらず彼らに何事かがあったのか、はたまた婚約決定からの慌ただしく忙しい日々の合間を縫って王子が密会に及んでいたのは明白である。



そのせいで彼らは司祭による特別の手配を持って大した準備も出来ず慎ましい結婚式を行う羽目になった。

そうこうして今日、城に響き渡ったのは元気な赤子の声。侍女によると男の子だったそうだ。



「これで姉上への溺愛ぶりも治ると良いのですが…」

「リュカ殿下にそれは無理だろうね」



ロイは呆れたような、困ったような笑みで妻であるエミリーの肩を抱いた。



「次は君だね」

「ええ、順当ですわ」



エミリーは少しばかり膨らみを見せる自身の腹を撫でた。おそらく生まれるのは冬半ばになるだろう。



「はやく甥っ子に会いたいですわ」

「ああ、そろそろ行こうか」



二人は待たされていた部屋を出て姉が休んでいるであろう部屋へと向かう。

案内などされるまでもない。賑やかな声のするその部屋に二人は入って行った。





「リュカ殿下!そんな抱き方はダメです、首が座ってないのですから!あーもう!」

「すまない、ノア…ああでも可愛いね。ほら目が君にそっくりだよ」

「私たちの子ですもの、当たり前ですわ」




エミリーは思った。


(ああ今日もまたやっている)


結局二人は変わらなかった。

姉が怒って、殿下が怒られて。

それでも二人はかなり上手くいっている。

昔からそうだったように。




「立派な父になってくださいね」




ぎこちなく赤子を抱いた殿下は新たな目標を貰って嬉しそうに微笑んだ。



そろそろ私たちに気づいてもらおうか、とエミリーとロイは目配せをして彼らの方へと歩き出した。













読んでいただきありがとうございました

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