1/9
第一話
澄んだ夜空に丸い月が浮かんでいた。
夏が終わり秋を迎えるように少し冷えた空気に身を震わせる。
彼は季節が変わる度に考える。
今の自分の事を。流されるように高校を卒業し、働かなければと就職した自分。
夢などはなかった。あれば多少は状況が違っていただろう。
今の自分に満足しているかと聞かれれば満足はしていない。けど、別段不満があるわけでもなかった。
ならば、なぜ自分はこうも考えるのか。
結局馬鹿らしくなって彼は考えることを止めた。
もはやこの問答は彼、高島孝介の定番になりつつあった。
ふと顔を上げてみる。月は変わらずそこにあった。
そう変わらないことで良いことだってある。
孝介が勝手に納得し、歩みを進めようとしたがやめた。
彼は周りに視線を巡らせる。
そして、その視線は公園の入口で止まった。彼はそのまま公園に足を向けた。
声が聞こえたのだ。
いや、普通の話し声であったなら彼は気にせず帰路を急いでいただろう。
そう、話し声ではなくそれは歌声だったからだ。
何か懐かしい旋律。
孝介はただ惹き付けられるように公園に入って行った。




