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第一話

澄んだ夜空に丸い月が浮かんでいた。

夏が終わり秋を迎えるように少し冷えた空気に身を震わせる。

彼は季節が変わる度に考える。

今の自分の事を。流されるように高校を卒業し、働かなければと就職した自分。

夢などはなかった。あれば多少は状況が違っていただろう。


今の自分に満足しているかと聞かれれば満足はしていない。けど、別段不満があるわけでもなかった。

ならば、なぜ自分はこうも考えるのか。

結局馬鹿らしくなって彼は考えることを止めた。

もはやこの問答は彼、高島孝介の定番になりつつあった。




ふと顔を上げてみる。月は変わらずそこにあった。

そう変わらないことで良いことだってある。


孝介が勝手に納得し、歩みを進めようとしたがやめた。

彼は周りに視線を巡らせる。

そして、その視線は公園の入口で止まった。彼はそのまま公園に足を向けた。


声が聞こえたのだ。


いや、普通の話し声であったなら彼は気にせず帰路を急いでいただろう。


そう、話し声ではなくそれは歌声だったからだ。

何か懐かしい旋律。

孝介はただ惹き付けられるように公園に入って行った。

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