婚約破棄した王太子から、建国神話が届きます。どうやら私への愛を証明するつもりのようです。
元婚約者から、恋文が届いた。
差出人はアレクシス様。
三か月前まで、レオニア王国の王太子だった方である。
王家の紋章は、黄金の獅子。
私の実家、ベルフォール公爵家の紋章は、白百合。
両家の婚約は、幼い頃から決められていた。
アレクシス様は、昔から私を愛していると公言していた。
ただし、少々問題があった。
「セレスティア! 君は私の太陽だ! 私の王妃になることこそ、君に与えられた最高の幸福なのだ!」
こういう方だったのである。
私が公爵領の穀物備蓄について意見を述べても、彼は聞かなかった。
「君は何も心配しなくていい! すべて私が守ってみせる!」
そして、ある日。
私は王家の備蓄を増やすよう進言した。
近隣諸国で不作が続き、穀物価格が上がり始めていたからだ。
しかし、アレクシス様は笑った。
「君は心配性だな! 黄金の獅子が守る国に、飢えなど訪れない!」
私は説明を続けた。
王家の備蓄が不足すれば、価格高騰に対応できない。
今のうちに商人と契約を結ぶべきだ、と。
ところが彼は、私の言葉を自分への不信と受け取った。
「私の力を信じられないのか!」
「そういうお話ではありません」
「ならば証明してみせよう! 君がいなくとも、私は立派な王になれる!」
その勢いで、婚約を破棄してしまった。
国王陛下は激怒された。
「婚約とは、感情に任せて破棄するものではない! 頭を冷やしてこい!」
こうしてアレクシス様は、王太子としての公務を停止され、国境の向こうにある王家の辺境領へ送られた。
ただし、陛下は息子を見捨てたわけではなかった。
領地には、井戸掘り職人や農業技師、行政官などが派遣された。
アレクシス様に、国を治める仕事を現場で学ばせるためである。
そして三か月後。
最初の恋文が届いた。
『我が永遠の白百合、セレスティアへ。
私は、ついに運命の意味を知った。
あの日、君は私に別れを告げた。
いや、違う。
君は別れを告げたのではない。
私に、試練を与えたのだ。
君はきっと、こう思っていたのだろう。
アレクシス様。私を迎えに来るなら、王冠に頼らない男になってください、と。
安心してほしい。
私は君の願いに応えるため、荒野へ来た。
ここには宮殿も、舞踏会もない。
だが、君への愛だけはある。
私は今日、一輪の白百合を植えた。
君の家に伝わる、あの美しい花だ。
この花が咲く頃、君も私の成長を感じ取るだろう。
そして、いつか君は言うのだ。
アレクシス様。私の試練を乗り越えてくださったのですね、と。
その日まで、私はここで待とう。
王冠を預けた君の王、アレクシスより。』
「……お嬢様」
侍女のリリアが手紙を覗き込んだ。
「はい」
「試練を与えたのは、国王陛下では?」
「そうね」
「婚約を破棄したのも、アレクシス様ご自身でしたよね」
「ええ」
私は便箋を畳んだ。
「でも、白百合を植えるのは素敵ね」
「荒れ地で育つのでしょうか」
「……そこは少し心配ね」
◇
二通目は、半年後に届いた。
『我が荒野の女神、セレスティアへ。
君と離れて半年が過ぎた。
私はようやく、君があの日、何を伝えようとしていたのか理解した。
人は、水がなければ生きていけない。
どれほど立派な宮殿を建てても、井戸がなければ誰も住めないのだ。
そして私は気づいた。
君が私に求めていたのは、宮殿ではなかった。
井戸だったのだ。
あの日、君は穀物の備蓄について話していた。
だが、それは本当の願いを隠すための言葉だったのだろう。
君はきっと、こう言いたかったのだ。
アレクシス様。私たちの愛にも、いつか枯れない泉が必要です、と。
安心してほしい。
私は君の願いに応えた。
父上が派遣してくださった井戸職人の力を借り、ついに水を掘り当てたのだ。
井戸の周りには農民が集まり、畑を作り始めた。
君が私たちの愛の未来を心配していたことが、今ならよくわかる。
私はもう、あの日の未熟な王太子ではない。
君が次に私のもとを訪れるときは、好きなだけ水を飲んでほしい。
もちろん、料金など取らない。
君だけの泉を守る、アレクシスより。』
「……村ができたそうよ」
「井戸掘り職人の方が優秀だったのですね」
「ええ。地下水脈を見つけたそう」
「それにしても、お嬢様は井戸をご希望だったのですか?」
「いいえ。穀物の備蓄を増やしてほしかったの」
「そうですよね」
私は手紙を机に置いた。
その横には、公爵領の穀物取引の報告書が積まれている。
近隣諸国の不作によって、国内の穀物価格は上がり始めていた。
私は商人たちと交渉し、周辺領地から穀物を運ぶ手配を進めていた。
アレクシス様が愛の泉を掘っている頃、私は穀物の値段と格闘していたのである。
◇
三通目は、さらに半年後だった。
『我が不落の城、セレスティアへ。
君は、なぜ私に穀物の備蓄を勧めたのだろう。
私は長い間、その意味を考えていた。
そして、ついに答えを得た。
君は、私たちの愛を守る城壁が必要だと伝えたかったのだ。
村が大きくなるにつれ、盗賊が現れるようになった。
私は剣を抜き、村人たちに告げた。
この村には、私の愛する女性の名が刻まれている。
何人たりとも、踏み込ませぬ、と。
だが、村人たちは言った。
殿下、叫ぶより先に柵を作りましょう、と。
私は頷いた。
その通りだ。
君が私に教えたかったのは、愛を守るための備えだったのだ。
柵を作り、見張り台を建て、兵士を雇った。
給金を払うため、税を集める仕組みも整えた。
そして、ついに村は城壁に囲まれた町となった。
ああ、セレスティア。
君があの日、備蓄を勧めた理由が、今ならよくわかる。
君は、私たちの未来を守るために、備えを求めていたのだ。
私は、その願いに応えた。
君の愛を守る城壁となった、アレクシスより。』
「……城壁ができたそうよ」
「はい。立派な町になったようですね」
「でも、穀物の備蓄と城壁は、少し違う気がするわ」
「少しどころではないと思います」
私は笑った。
その日、私は公爵領の商人組合と新しい契約を結んだ。
穀物の輸送を安定させるため、複数の商人に運搬を任せる仕組みを作ったのだ。
一つの商会に依存していては、事故や値上げで領民が困る。
私は、そういう仕事のほうが性に合っていた。
◇
四通目は、一年後に届いた。
封筒には、見慣れない紋章が押されていた。
『我が勝利の女神、セレスティアへ。
君に報告がある。
私の愛は、ついに三つの町を結んだ。
隣町が盗賊に襲われたのだ。
私は兵を率いて救援に向かった。
盗賊は退き、町は守られた。
すると、その町の代表者が私に言った。
どうか、私たちの町も守ってください、と。
私は答えた。
もちろんだ。私の愛する女性が暮らす国に、危険があってはならない、と。
その噂を聞いた別の町も、我らのもとへ加わった。
今では、三つの町が同じ旗を掲げている。
住民たちは、私を大公と呼ぶようになった。
そして、皆で新しい紋章を考えた。
白百合を抱く金の王冠。
君の家の紋章を、我らの旗に掲げたのだ。
かつて私が掲げたのは、黄金の獅子だった。
だが今、私には新しい旗がある。
ああ、セレスティア。
君の名が、ついに三つの町を結んだのだ。
白百合の大公、君のアレクシスより。』
「……大公ですって」
「はい。三つの町を治めていらっしゃるそうです」
「それは立派ね」
「はい。ただ……」
リリアは封筒を見つめた。
「公爵家の家紋を、勝手に使っていらっしゃいますね」
「そうなのよ」
私はため息をついた。
「お父様に相談しておきましょう」
その頃、公爵領では周辺の領主たちと穀物の共同備蓄を始めていた。
飢饉に備え、余裕のある領地が不足した領地を助ける仕組みである。
私は各領主の利害を調整し、ようやく協定をまとめたところだった。
国を治めるには、剣よりも契約書が役に立つこともある。
◇
五通目が届いたのは、その翌年の春だった。
『我が国の太陽、セレスティアへ。
君への愛が、ついに法律となった。
我らの土地に、国境を越えて人々が集まり始めたのだ。
戦乱を逃れた家族。
土地を失った農民。
新たな商機を求める商人たち。
私は彼らを受け入れた。
君の花園に、行き場のない者を拒む門など必要ない。
だが、人が増えれば争いも起きる。
そこで私は、住民たちと法を定めた。
土地を奪ってはならない。
働いた者には、正当な報酬を払う。
争いは、剣ではなく裁判で解決する。
ああ、セレスティア。
君を愛する心が、ついに法典となったのだ。
私は法律の第一条に、こう記そうとした。
すべての民は、セレスティアを敬愛しなければならない。
だが、宰相に止められた。
陛下、それは法律ではなく、個人的な願望です、と。
私は深く考え、第一条を変更した。
すべての民は、法の下に平等である。
君への愛が、万人の幸福へと姿を変えたのだ。
白百合の大公、君のアレクシスより。』
「……法律になったそうよ」
「はい。第一条が変更されて何よりですね」
「宰相の方が優秀なのね」
「そうですね」
私は微笑んだ。
その日、王都から届いた報告書には、国王陛下のご病状が悪化していると書かれていた。
王位継承を巡り、貴族たちが対立し始めているという。
私は父と相談し、公爵領の備蓄を増やすことにした。
争いが起きれば、最初に困るのは民衆だからだ。
◇
六通目は、さらに一年後に届いた。
封筒には、金色の封蝋が押されていた。
『我が永遠の王妃、セレスティアへ。
ついに、この日が来た。
私は王となった。
周辺諸国の使節が、我が宮殿を訪れたのだ。
彼らは、我らの土地を独立した国家として認めると告げた。
そして私は、王冠を戴いた。
ああ、セレスティア。
かつて王冠を預けた男が、今、再び王となったのだ。
だが、あの日の私とは違う。
この王冠は、生まれながらに与えられたものではない。
荒野に花を植え、井戸を掘り、町を築き、人々とともに作り上げた国の証なのだ。
私は、この国をセレスティア王国と名づけた。
君の名を、永遠に残すために。
我が愛しきセレスティア。
この国の王妃となってほしい。
私は君のために王国を築いた。
もはや、私たちの結婚を妨げる者は、国際法に逆らうことになる。
建国王となった、君のアレクシスより。』
「……リリア」
「はい、お嬢様」
「国ができてしまったわ」
「はい。国が一つ増えましたね」
「しかも、私の名前がついているそうよ」
「はい。セレスティア王国だそうです」
私はしばらく考えた。
「……国際法に逆らうことになるのかしら」
「ならないと思います」
「そうよね」
私は便箋を畳んだ。
「でも、アレクシス様が立派な国王になられたのは嬉しいわ」
「はい」
「国を治めるのは、大変なお仕事だもの」
私は微笑んだ。
「いつか、気づいてくださるといいのだけれど」
「何に、でしょう?」
「国は、恋文の返事をもらうために作るものではない、ということに」
◇
七通目が届いたのは、建国から半年後だった。
いつもの白百合の封蝋ではなく、黄金の獅子が刻まれた封筒だった。
『我が愛しきセレスティアへ。
祖国レオニアで内乱が起きた。
国王陛下が崩御され、王位を巡って貴族たちが争っている。
王都では火が上がり、多くの民が家を失ったという。
そして今日、祖国から使者が来た。
かつて王太子を廃された私に、帰還してほしいと。
正統な王家の血を引く者として、国を救ってほしいと。
ああ、セレスティア。
私はずっと、君を迎えに行く日を夢見ていた。
王冠を取り戻せば、君は私を見直してくれるだろうか。
立派な宮殿を築けば、君は私のもとへ来てくれるだろうか。
そんなことばかり考えていた。
だが今、私の前には別の道がある。
祖国には、救いを待つ人々がいる。
私は、彼らを見捨てることができない。
君が今も祖国にいることは知っている。
君の安全が、何より心配だ。
だが、君一人を救うために兵を動かすことはできない。
私は、王都に残されたすべての人々を救うために進軍する。
どうか、無事でいてほしい。
白百合の国王、アレクシスより。』
私は手紙を読み終えた。
「……リリア」
「はい、お嬢様」
「アレクシス様が、祖国へ帰ってくるそうよ」
「はい。内乱を鎮めるために」
私は窓の外を見た。
王都の方角には、黒い煙が上がっていた。
国王陛下が崩御されてから、貴族たちの争いは激しさを増していた。
王都の一部は焼け、多くの民が避難を始めている。
私は公爵家の倉庫を開放し、避難民を受け入れる準備を進めていた。
備蓄していた穀物を放出し、商人たちには追加の輸送を依頼した。
「お嬢様。避難民の受け入れについて、領主会議から返答が届いております」
「ありがとう。すぐに確認するわ」
私は手紙を机に置いた。
君一人を救うために兵を動かすことはできない。
その一文が、胸に残っていた。
かつてのアレクシス様なら、きっと違うことを書いていただろう。
君のために王冠を取り戻す。
君のために敵を討つ。
君のために勝利を捧げる。
けれど、今のあの人は違った。
私への恋心よりも、救いを求める人々を選んだのだ。
「……立派になられましたね」
リリアが静かに言った。
「ええ」
私は頷いた。
「本当に、立派になられたわ」
そして、生まれて初めて思った。
あの人に、会いたい。
◇
内乱は、さらに三か月続いた。
その間、私は公爵家の領地を拠点に、避難民の受け入れと食料の輸送を続けた。
王都へ続く街道は、戦闘によって何度も封鎖された。
私は商人たちと協議し、迂回路を確保した。
食料を運ぶ荷馬車には、公爵家の白百合の旗を掲げた。
その旗は、やがて避難民たちの間で知られるようになった。
白百合の旗を見れば、食料が届く。
白百合の旗を見れば、安全な避難所がある。
そう言われるようになったのだ。
一方、アレクシス様は黄金の獅子の旗を掲げ、王都へ進軍していた。
彼の軍は反乱軍を退け、各地の街道を解放していった。
戦いが終わったのは、秋の初めだった。
◇
八通目が届いたのは、王都が解放されてから十日後だった。
『セレスティアへ。
戦いが終わった。
祖国の内乱は鎮まり、王都に平和が戻った。
私は黄金の獅子の旗のもとに兵を率いた。
だが、勝利をもたらしたのは私一人ではない。
故郷を守ろうと立ち上がった兵たち。
飢えた人々に食料を届けた商人たち。
敵味方を問わず負傷者を救った神官たち。
そして、白百合の旗を掲げて人々を救った、君たちだ。
セレスティア。
私は戦場で、何度も白百合の旗を見た。
最初は、我が国の兵が来たのかと思った。
だが、違った。
それは君の公爵家の旗だった。
君は、私が知らないところで、多くの人々を救っていたのだな。
私は君を守ることばかり考えていた。
けれど、君は自分の力で立ち、多くの人々を守っていた。
今ならわかる。
かつて私が王太子だった頃、君がどれほど優れた人だったのか。
私は、何も見ていなかった。
貴族たちは、私に王位を継ぐよう求めている。
私は、その責任を引き受けようと思う。
そして、白百合の国と獅子の国を、一つにまとめるつもりだ。
君のためではない。
両国の人々が、二度と戦乱に苦しまないために。
セレスティア。
私は君に、何度も恋文を送った。
君のために花を植え、町を築き、国まで作った。
今思えば、ずいぶん身勝手なことをしていたと思う。
君の気持ちを、一度も尋ねなかったのだから。
だから、これが最後の恋文だ。
私は君を迎えに行かない。
君が望まない限り、二度と求婚もしない。
ただ、一つだけ伝えたい。
私は今も、君を愛している。
そして、もし君が許してくれるのなら。
いつか私とともに、この国を守ってほしい。
アレクシスより。』
私は、何度も手紙を読み返した。
最初に届いた恋文を思い出す。
王冠を預けた君の王、アレクシスより。
あの頃の彼は、王冠を失ってもなお、自分を王と呼んでいた。
それから、荒野に花を植えた。
井戸が掘られ、村ができ、町が生まれた。
人々を守るために兵を率い、法を定め、国を築いた。
そして今、祖国を救い、再び王冠を手にしようとしている。
けれど、最後の手紙には、王も、大公も、建国者もいなかった。
ただ、アレクシスと書かれていた。
「……お嬢様」
リリアが心配そうに私を見つめた。
「お返事は、いかがなさいますか?」
私は便箋を机に置いた。
「書くわ」
「まあ」
リリアが目を丸くした。
「初めてでございますね」
「ええ。初めてよ」
私は新しい便箋を取り出した。
今度は、私の番だった。
◇
『アレクシス様へ。
お手紙を拝見しました。
内乱を鎮め、多くの人々を救われたこと、心からお祝い申し上げます。
そして、これまでのお手紙も、すべて読んでおりました。
荒野に植えられた一輪の花が、村となり、町となり、ついには国となったこと。
その一つひとつを、私は嬉しく思っておりました。
ただ、私はずっと、あなたの求婚にお答えすることができませんでした。
あなたが愛していたのは、私ではなく、あなたの思い描いた理想の王妃だったように思えたからです。
けれど、今は違います。
あなたは、私がいなくても人々を守れる方になりました。
そして、私が望まないことを、無理に求めない方になりました。
そんなあなたに、私は初めて、お会いしたいと思いました。
アレクシス様。
あなたが守ろうとしている国を、私にも見せてください。
そして、もしよろしければ。
これからは、私にもあなたの隣を歩かせてください。
セレスティアより。』
手紙を書き終えると、リリアがそっと微笑んだ。
「……お嬢様」
「なあに?」
「これは、恋文でございますね」
私は頬が熱くなるのを感じた。
「……そうね」
「アレクシス様が、どれほどお喜びになることでしょう」
私は封筒に封をした。
「きっと、また長いお返事が届くわ」
「英雄叙事詩でしょうか」
「いいえ」
私は微笑んだ。
「今度は、普通の恋文がいいわ」
◇
それから三か月後。
私は、王都の大聖堂でアレクシス様と結婚した。
大聖堂の前には、二つの旗が並んでいた。
祖国レオニア王家に伝わる、黄金の獅子。
そして、アレクシス様が荒野に築いた国の、白百合。
かつて王冠を失った王太子は、白百合の国を築き、獅子の国を救った。
そして今日、その二つの旗が一つになった。
新しい王旗には、黄金の獅子と白百合が並んで描かれている。
黄金の獅子は、祖国を守ったアレクシス様の象徴。
白百合は、民を救った私たちの象徴。
二つの旗が並んだとき、ようやく一つの国が生まれたのだ。
「セレスティア」
アレクシス様が、私の手を取った。
「君を愛している」
私は微笑んだ。
「存じておりますわ」
「……そうだな。ずいぶん手紙を書いたからな」
「ええ。国が一つできるほどに」
彼は照れくさそうに笑った。
「これからは、君の話も聞かせてほしい」
私は、その手を握り返した。
「もちろんです。これからは、二人で決めましょう」
大聖堂の外で、新しい王旗が風にはためいていた。
黄金の獅子と、白百合。
二つの国が一つになり、二人の未来も一つになった。
こうして、長い長い恋文は、ようやく返事をもらった。




