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第74話 『倍返し』

「グス……お爺ちゃん、それにみんな……どこいったのぉ……」


 幼い少女は無惨に焼け落ちた民家から、なんとか這い出た。突如、少女を襲った爆音。


 何が起きたのか、理解不能だった。辛うじて分かるのは、自分はまだ生きているという事。

少女は覚束(おぼつか)ない足取りで、家族を探し回った。


 そこで、『見てはいけないもの』を見た。


 変わり果てた故郷、長閑(のどか)だった里は跡形もなく破壊され、炭化した『黒いモノ』があちこちに転がっていた。


 それが住民『だった』など、幼い少女には到底理解できなかった。


「……ヒッ⁉ なにコレっ、お爺ちゃああああんっっ」


 ガシャアアンッ! 幼い少女に答えたのは祖父(オズ)ではなく、無機質な機兵(メカ)だった。生体反応を取りつつ、なんの躊躇(ためら)いもなく幼い少女に銃口を向けた……!


 グシャ! 引き金(トリガー)が引かれる事はなかった。少女の祖父、オズワルドが怒りの鉄槌でメカを粉砕したからだ。


「――この外道どもがぁああああっっ‼ ワシの目が黒いうちは、エミリーには指一本触れさせんぞっっ」


 よく見ると、オズもボロボロだった。精神力だけで、立っているようなものだ。


「……お爺ちゃああああんんっっ、怖かったよぉおおおおっっ」


「エミリーっ、無事だったかっ! お前の身に何かあったら、ワシは……!」


 お互い、強く抱き締め合う。激しく泣きじゃくる孫、オズはひたすら頭を撫でた。


「お爺ちゃん……何がどーなってるの? 里のみんなは……」


「エミリー、すまぬっ! ワシがもっと早く『決断』していれば……! 皆の者、本当にすまぬっっ」


 オズは額を地面に擦り付け、ひたすら犠牲になった者たちに詫び続けた。止まない雨が、二人を容赦なく打ちつけた……。


 ◇ ◇ ◇


 これが後に、『地域』を創るきっかけとなった。成長したエミリーは、祖父お手製のマスケット銃で戦場を駆け抜けた。


 二人は固く誓った。必ず女神一派を痕跡も遺さず、地獄へ送ると。


 ◆ ◆ ◆


「な……なんですの、アレは……? 『翼』にも見えますが……??」


 突如、眼前に現れた換装パーツに戸惑うモニカ。動揺してエミリーを拘束していた、光の十字架も解除された。


「……間に合ったんだ」


 翼を(かたど)ったパーツこそ、オズの『最高傑作(マスターピース)』ともいえる究極決戦呪装だった。モニカの最大火力を持ってしても、外装が多少焦げただけ。


 エミリーは確信した。これならイケる……!


「くっ……小細工を(ろう)したところで、何も変わりませんわ!」


 エミリーの周囲を高圧ボルトが襲った! 『天国への入口(ヘヴンズゲート)』は、チャージに時間が掛かる。光がエミリーを包み、雷撃は霧散した!


「な……なんとぉおおおおっっ⁉⁉」


「ちょっとぉ! 『変身中』は攻撃しないのが、『お約束』でしょ⁉ これだから、余裕がないオバサンは(ーдー)」


 換装パーツ、装着完了! 純白のバトルスーツ、天使の両翼に輪っか、今までの『倍以上』の武装の数々……!


 アタシは強い(確信)! ていうか、敗ける要素ゼロ! 見た目も可愛いし、言うことなし! ありがとね、お爺ちゃん!


「ぐぬぬぬ……! ですが、私の『空間内』にいる限り、いくら武器を持とうと……」


「ターゲット、マルチロック! まとめて撃ち落とすわ!」


 何やら喚いているモニカをガン64して、エミリーは両翼を展開した! 全身砲門が火を噴き、空間ごと焼き払った!


「なっ…………」


「思った通り、特殊なマイクロ波を使った装置ね。ネタが割れちゃえば、どーという事はないわ。年増らしいセコいやり方だけど」


「ぐぬぬぬぬ……こんなハズがッ! チクショー……チクショオォオオオオ~~~~ッッ‼」


 全身で悔しさを露にするモニカ。もう勝てる要素はない。あらゆる魔術を駆使しても、高機動力のエミリーに全て見切られてしまう。


 やがて、モニカはニヤリと笑った。これにはエミリーも眉をひそめた。


「ウフ……ウフフフフ……」

「あれ? ついに壊れちゃった?」


「まさかセラさん以外で、私をここまで追い詰めるとは。これは認めざるを得ませんね。私も『最後の賭け』に出るしかありません」


「あのさぁ……分かりやすい『時間稼ぎ』やめなよ。どーせさっきのヤツ、チャージしてんでしょ?」


「いいえっ、正真正銘の賭けですわ! 私の全ての魔力を放出して、貴女を討ちます! 今度こそ……サヨナラですわっっ」


――カッ!


 辺り一面に閃光が走り、白光がエミリーを包んだ。



「ゼェ……ゼェ……思った以上、手こずりましたわね。ですが、最後に勝つのはこの私です。オッーホッホッホッ☆ ざまぁみろですわ!」


 モニカは荒く息をしながら、勝ち誇る。もう余力は残ってない。後は○んだ事にして、バックレる……ハズだった。


「で? そんなに慌ててドコいくの?」


 ギクゥ! 振り向くと、無傷のエミリーの姿が。モニカは血相を変えた。


「な……なぜ……」


「いやいや……もう魔力はスッカラカンで、浮いてるのが精一杯でしょ? で、目眩ましをして、どさくさ紛れでトンズラする。ったく、下手なメイク以上にお粗末よね」


 モニカの顔面が崩壊した。なんとか、この場を逃れる術はないものか? 


「あー、逃げようたってムダだから。床一面に爆薬を仕込んでおいたわ。アンタのヘヴンズなんちゃらなら、解除できるかもね?」


 血の気が引き、もう言葉を発することも出来なくなった。要するに魔力切れで墜落○するか、ヘヴンズゲートを使って爆風に巻き込まれるかの二択だ。


 なら、ほんの僅かでもイキ残れるほうに賭けるまで。我ながら悪運は強い、とモニカは高を括った。


「…………………………………………あら?」


 モニカは目を疑った。何故、砲口がこちら(・・・)を向いているのか? さっきの目眩ましの間、細工されてるとは露知らず。


 ゴォオオッ! 迸る閃光が右半身を消し飛ばし、残った左半身は墜落。モロに爆薬を受け、塵一粒残らず消滅した。



「やられた分は、やり返す……お爺ちゃんの教えね。利子分は地獄で返しなよ? 何年経ってもね」




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