第28話 『休暇』
私が地域に帰還して、一週間が過ぎた。この間に色々と動きがあった。まずオズ率いる部隊が、ポイントKの奪取に成功。
私が天使を討ったことで、女神一派の勢いは落ちた。重要拠点を取り戻したことで、補給はかなり楽になる。
オズ曰くここから体勢を立て直して、一気に女神一派を追い込むらしい。現在、地域は着実に反抗体勢を整えていた。
そして、私は……途方に暮れていた。
「………………」
今朝から私は、街中央のドームにいる。理由はシンプル、他にやる事がないからだ。ドームも最初こそ避難民でごった返していたが、仮設住宅の完成で今は人も疎らだ。
「リア、何をしているの?」
「ミア」
振り向くと、ミアがいた。私が困っている時は側にいてくれる。
「別になにも。やる事がなくてね」
私は正直に話した。今まで戦い漬けだったので、急に戦わなくなるとどうしていいか分からない。
「せっかくの休暇なんだから、思いっきり楽しんじゃえばいいのよ」
「休……暇?」
私はきょとんとした。戦うのが私の使命だと思ってたから、急にそんな事を言われてもね。
「そ。なんなら、午後から一緒にピクニックにいきましょうよ。エミリーも誘ってるわ」
「ピク……ニック?」
戸惑う私を半ば強引に誘うミア。でも、たまにはいいかもしれない。
◇ ◇ ◇
「地域の近くに、こんな見晴らしのいい丘があったなんてねぇ」
エミリーは、スキップしながら燥いでいた。ミアはクスクスと笑いながら、レジャーシートを広げた。
「そろそろお昼時ね。さ、リアも座って」
ミアに促され、私は腰を下ろした。手作りのサンドイッチ、ジャーに入れた香ばしいスープが私の鼻をくすぐった。
「おぉ~ナイスタイミングだねぇ、ミア。お腹ペコペコだったんだよぉ」
ちなみにエミリーは誘ったわけではないが、出かけるところを見つかり勝手についてきた。
「いぃじゃないの、へるもんじゃないし」
「……食べるのか喋るのか、どっちかにして」
「フフ、たくさん作ってきたからね」
サンドイッチを頬張るエミリー、呆れ気味の私、そしてニコニコ顔のミア。私もサンドイッチを一口……美味しい。
「これは……病みつきになるわ」
「でしょ? ミアにこんな才能があったなんてね」
あっという間に平らげた私たち。長閑な時間が流れる。とても女神一派と抗争中とは思えない。
「…………………」
「ミア? どうしたの?」
急に静かになったミア、私は彼女の顔を覗いた。
「……ねぇリア、いつになったら『日常』は戻ってくるのかしら?」
「え……?」
私は思わず反芻した。『日常』……本来、こういうのが当たり前なのだ。今まで考えたこともなかったな……。
私はしばし考え、ミアの手を握った。
「リア……?」
「大丈夫よ、ミア」
私はミアの瞳を覗きながら、思いの丈を明かした。
「貴女は死なないわ。私が護るもの」
「リア……」
ミアも私を真っ直ぐ見つめた。その瞳には、うっすら涙を浮かべていた。私は改めて決意した。
ミアだけじゃない。もちろんこの世界も護る。たとえ、この生命に代えてでも。
「二人とも、もう要らないの? アタシ食べちゃうよ?」
穏やかな昼下がり、エミリーの能天気な声が響いた。
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