第23話 『天使』
「くやしいくやしいくやしい~~~」
「……いい加減、機嫌を直したら?」
寝そべって、駄々をこねているエミリーに私は嘆息した。子守りをしに来た覚えはないけどね。
「それはそうと、懸賞金とはどういう事かしら? オズが貴女に依頼したの?」
「ふーんだ! なんでそんな事、教えないといけないのよっ⁉」
「いいの? 貴女がどうやってここまで来たのか知らないけど、帰りの足とか考えてるの? 歩いて地域まで帰るなら別にいいけど」
「………………」
エミリーはしばし沈黙して……
「何でもききなさいな。このエミリー様が、特別に答えてあげるわ!」
あっさり手の平を返す。分かりやすいコだ。
「そ、それは……ちょっとしたアルバイトよ」
「アルバイト……?」
私は思わず眉をひそめた。
「私たち腕利きの傭兵は、地域以外に臨時で雇われることがあるの。主に野良の異形狩りね」
成る程……だから『アルバイト』ね。
「地域以外ってことは、女神一派?」
「なによ、悪い? おカネがイイから、傭兵ならみんなヤッてるよ」
全く悪びれた様子のないエミリー。そういえばオズも報酬次第で、汚れ仕事をやるって言ってたな。確かに黄泉人、はぐれ警備兵、処刑人など、女神一派にとっても邪魔な存在だ。
「成る程ね……貴女は今後、どうするの?」
「は? どーするって何がよ?」
「オズの『計画』は知ってるでしょ? 貴女はそれでも『バイト』を続けるつもりかしら?」
「………………」
エミリーはまたも黙り込み……
「ったく、仕方ないわねぇ。特別にこのエミリー様が、力を貸してあげるわ」
両手を腰に当て、小さな胸を張るエミリー。
全く調子のいいコだ。その時、私は背後から刺すような『殺気』を感じた。
「――危ないっ」
私は反射的にエミリーを抱えて、後方に大きく跳んだ! 直後、凄まじい炸裂音が響き地面が抉れた! 殺傷力はエミリーのマスケット銃と同等、或いはそれ以上か。
見上げると、奇妙な存在が私たちを俯瞰していた。顔がなく純白のローブ、背丈以上の両翼、天使のような輪をかざしていた。
それを見た瞬間、エミリーが「あ……」とか細い声を上げた。横目で見ると、小刻みに震えて顔面蒼白だった。
「エミリー、アレを知ってるの?」
「は…? アンタ、知らないの?」
こちらには見向きもせず、ひたすら頭上を凝視するエミリー。確かに異彩なプレッシャーを感じるけど、それほどなの?
「アレは『天使』……女神一派の主力部隊で、女神の忠実な下僕でもあるわ」
要するに『幹部』といったところか。
「……アタシたち傭兵の間でも、天使には手を出すなって言われてるわ。って、アンタ何して……⁉」
聖刃を抜く私に驚くエミリー。どのみち見逃してくれるワケじゃない。なら、死中に活は自ら求めるべきだ。
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