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第21話 『傭兵』

 スッ……武士(もののふ)が『居合い』の構えを取る。私も(なら)って、対称的に同じ構えを取る。チャンスは一度きり……生死を別つ立ち会いだ。


 お互い、ほぼ同時に地を蹴った! 一呼吸置く間もなく、死線に踏み込む! 武士の(さや)走りから繰り出される十の斬撃! 私は()た……十のうち『九』はやはりフェイク。殺気を(はら)んだ、刹那の『一』を私は見逃さなかった。


――ザクッッ‼


 パリィからの致命撃(ファタール)が決まり、武士は赤い塵へと還った。ふぅ……手強かったな。下手したら、地下鉄のロキより格上かもしれなかった。


「あぁ~⁉ アタシの獲物だったのにぃ~!」


 それまでの緊張が一気に緩むかのように、能天気な声が響いた。振り向くと、小柄な『少女』が私を(にら)んでいた。

 年齢(トシ)は私より、やや下だろうか? 金髪カール、ピンクのゴスロリ衣装が特徴的だ。こう言ってはなんだけど、明らかに場違い感があった。


「幼女……?」

「誰が『幼女』よ……⁉」


 私がポツリと呟くと、少女は間髪(かんはつ)を容れずツッコミを入れた。身長は私より一回り小さく、どう見ても『幼女』だ。


「いや、どこからどう見ても……」


「うるさいうるさいうるさ~い! アタシを子ども扱いすんなっ! てか、なんでアタシの『獲物』を横獲りすんのよっ⁉」


 少女は激しく地団駄を踏んだ。『獲物』というのは、あの武士(もののふ)のことらしい。


「あの賞金首、高い懸賞金が掛かってたのにどーしてくれるのよっ⁉」

「どーしろと言われても、私は降り掛かった火の粉を払っただけで……」


 私はなんとか弁明を試みたが、少女はまるで聞く耳を持たなかった。


「あっ、そーだ! アンタを亡き者にして、アタシが討伐した事にすればいいのよっ! 元々、アタシの獲物だったワケだし! いやぁ我ながら賢いなぁアタシ!」


 サラっと、とんでもない事を口にする。というか、このコが例の『傭兵』だろうか? 普通の幼女が、こんな物騒な場にいるわけがない。


「というワケで、ちょいと狩らせてもらうわ♪」


 少女がパチンと指を鳴らすと、多数のマスケット銃が即展開された! なっ⁉ 予備動作は全くなかった。あんな瞬時に……⁉


――ズガガガガガガッッ‼


 一斉掃射される銃弾っ、雨を私はなんとか(かわ)す! マスケット銃は、私を追尾(ホーミング)するかのような形で展開された!


「くっ……⁉」


 足を止めると狙い撃ちにされる! 私はなんとか掻い潜りながら、接近を試みた。が……


「へぇ? なかなか粘るじゃん。んじゃ『ギア』をアゲるよん♪」


 少女の周囲に『倍』のマスケット銃が展開された! あまりの苛烈さに、私は距離を取るしかなかった。接近(ちか)づけない……!


――実力(ウデ)はお前さんと『互角』に立つ。


 今さらながら、オズの言葉を思い出した。互角どころか、下手したら8られかねない。私は認識を改めた。


 目の前の少女は、間違いなく私の存在を(おびや)かす『敵』だと。

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