第1話 『私』
――『私』は、ゆっくりと目覚めた。
最初に視界に入ったのは、モノクロの空。空気は澱んでいて、外なのに息苦しい。
……何故、私は『ここ』に?
ダメだ、何も思い出せない。辛うじて、自分の『名前』だけ覚えている。
私の名は『リア』……だったと思う。少なくとも、以前はそう呼ばれていた。記憶が混濁して、ハッキリと思い出せない。
まぁいい。そのうち諸々、思い出すだろう。私は上体を起こして、辺りの様子を探った。
どこかの『研究所』だろうか? 損壊が激しく、残骸からなんとか推測できる。天井は崩壊し、機器類は見る影もない。
経緯はどうあれ、ここから出よう。まずは自分の『記憶』を取り戻すのが先決だ。
――ガシャーンッ!
派手な音が響き、私は振り向いた。カプセルを割った無機質な瞳が、私を捉える。
……確かアレは『警備兵』
主に施設に配置され、無許可で侵入した者を迎撃する『自律メカ』だ。面白いものね……自分のことは思い出せないのに、こういうのは覚えている。という事は……
――キィイィイインッ!
背中の聖刃が反応する。私は躊躇わず、柄に手を掛けた。手に馴染んだ感覚……記憶は失くしても体は覚えている。
――バババババッ!
警備兵は問答無用で、私に機銃を乱射してきた。フム? どうやら、私は『部外者』らしい。教えてくれたお礼に、丁重に葬ってあげよう。
私は『一歩』踏み込んだ。
ドンッ! 一気に警備兵との間合いが詰まった。警備兵は標準し直すが、私には全ての動作が緩慢に見えた。
――ザンッ!
一閃。
警備兵の右腕が、宙を舞った。尚も左腕からナイフが伸びて戦闘を続行しようとするも、私のブレイドが無慈悲に動力源を貫いた。
沈黙する警備兵。超人的な動き……どうやら、私は『普通の人間』ではないらしい。
ゴゴゴゴ……!
崩壊を始める施設、長くは持たないだろう。私は足早に走った。自分が『何者』かも判らないうちに死ぬのは、御免蒙りたい。
ただ……
私には『すべき事』がある。それだけは、深層に刻まれていた。私は失くした記憶を求めて、駆け出した。
面白いと思いましたら、モチベになるので是非ブックマークをお願いします。




