第十八話『Dylan′sFire・Magical』
今晩にでも子作りイチャラブセックスをしようと、エレクト寸前の股間を揺らしながら土下座までしてみたが……。 レオの決意は固かった。 騎士団で成り上がるために今身重になるわけにはいかないし、そもそも保留中だ、ときた。 まったくこいつには幻滅した。 ガッカリでちんぽもシナシナだ。やはりちんちんってやつは心よりも正直である。
「でも……。 ありがとう、ミナト。 なんだか勇気が湧いてきた。 ミナトは素直で良いやつだし、とっても面白いな。 どーなつも美味しかったよ! 」
「御託を並べてないでさっさと騎士団で無双してこい」
「あはは、そんなにすぐには出来ないよ。……でも頑張ってみようと思った。 なんだろうな、ミナトと話していたら勇気が湧いて、なんでも出来るような気がしてきたんだ」
いい笑顔だ……。 そうだ、必ずうまく行く。 騎士団だってお前を無視できなくなったぞ、俺がスキルブーストをかけたんだからな。
「あ、そうだレオ。 お前の一番得意なやつか……。 一番お気に入りの魔法を見せてくれ 」
「んえ? どうして? 」
「かっこよかったら真似したい」
「見せるのはいいけど……。 精霊の力を使うから真似はできないと思うよ。 普通の魔法とは違うから。 魔法というより魔法を使った剣技かな」
「ふむ、是非とも見せてくれ」
「よぉしっ。 さっきミナトにかましてやろうと思ってた技を見せてやるよっ」
レオは立ち上がり、傍らに置いてあった剣を抜く。 右手に持った剣を水平に構えて、刀身に空いた左手を滑らせた。
「『Dylan′sFire・Magical……!!』」
レオの足元に赤い魔法陣が出現。 魔法陣に描かれた紋様が浮かび上がり、赤い光の帯が白く華奢な身体を包み込んだ。 まるで足元から風が吹き上がっているみたいに、レオ真紅の髪が逆立っている。
「おぉ、かっこいいな……! 」
構えた刀身がハロゲンヒーターの如くオレンジ色に発光したと思えば、今度は火花を散らすみたいに爆ぜる。
レオは少しだけ驚いたような顔をしたが、すぐに凛々しい表情に戻り、地面を蹴って跳び上がった。 かなり高い、7〜8mは跳んだか。
「『独奏・第三楽章っ……!』 」
お、真下に撃つ。 空中姿勢も抜群にイカしている。
「『〝炎雷〟っ!』」
振り下ろした剣から凄まじい火力の炎が放たれ、火柱が上がった。 轟音がまだ残っているし、地面からビリビリと振動が伝わってくる。 これは……。 世界最強の俺に相応しいさいつよ魔法だ。 ありがとう、さいかわレオちゃん。
【ひぇー! かっこえ〜っ! 】
「な、なんだぁ……?」
「どうしたレオ。 最高にかっこよかったぞ。 さらにお前をめちゃくちゃに抱いて悶えさせたくなった」
「普段の威力と桁違いだっ……! 」
「死線を乗り越えて強くなったんだろう。 見せてくれてありがとうな」
さて、レオは歩いて家に帰るつもりだろうか? めんどくさいだろうな。
「おい、まりも、起きろ。 睡眠の邪魔をしてすまないな」
「んぁ……。 あっ! 寝ちってたでしゅ? 」
「なぜレオのさいつよ魔法で起きないんだお前は。 ところでな、寝起きですまんがミッション2だ。 この気高いさいかわ剣士を家まで送り届けてくれ。 さっきの半分の大きさでいいから膨らんでくれないか? 背中に乗せてあげてほしい」
「あ、はいっ! 了解でしゅっ。 おりゃっ」
お。 路線バスよりも一回りデカいくらいか……? 一人で乗るには少し大きいが、まぁいいサイズ感だ。
「で、でっかくなった!? マリリン……え、僕を乗せてくれるのかっ……? ミナト、良いのか? 大丈夫なのかな? 」
「当たり前だ。 きっと速いぞ」
本当は一番に俺が乗るつもりだったけどな……レディーファーストだ。 やれやれ、まるで紳士だな。
「せっ! 聖獣マリリンの背中に乗れるなんて……。 ゆ、夢みたいだっ! ミナトっ! 」
赤毛を靡かせながら、まりもの垂れた尻尾を駆け上がっていった。 なんだかんだ言ってもまだ子供なのだなぁ。
上からキャッキャと嬌声が聞こえ始めたが、まりもがデカイから見えん。 是非ともはしゃぎ回る天使ちゃんを眺めたいが……。 そうだ、あれを使うか。
「てへっ、でっかくなっちった☆」
「ぎゃーーーーーっ! 」
巨大化したらレオを驚かしてしまった。
「それは、魔法でやってるのか……? 」
「巨大化スキルだ。 安心しろ、進撃したり壁になったりする気は毛頭ない」
レオはクエスチョンマークを浮かべていたが、急に笑い出した。 楽しそうにマリモの上で駆け回ったり、寝転がってスリスリしたり、まったく……。 セックスをお預けされているのが本当に悔やまれる。
「ミナトっ! ミナトも元の大きさに戻って、登ってきてくれよっ! 」
やれやれ……。 めんどうでめんどうで仕方ないのだが、美少女の頼みは断れないのが世界最強だからなぁ。 あぁ仕方ない、面倒だが俺もまりもの尻尾を駆け上がってみるか。 別にやってみたいわけじゃないが美少女の頼みだからなぁ。
【誰にアピールしてるんですかそれ】
「おっ? 」
「あはは! ミナトはドジだなっ」
……ふむ、尻尾を勢いよく駆け上がっていたら八合目くらいで転げ落ちてしまった。 全裸で尻尾から転げ落ちる世界最強か……。 親しみやすくていいだろう。 やっとの思いでまりもの背中に登頂すると、レオが大の字に寝転んで、ニコニコしながら空を眺めていた。
「レオ、今日はお前を想像しながら自慰に耽ることにしたぞ。 ……あまり世界最強に惨めな思いをさせるな」
「じいにふけるってなに? 」
やれやれ……。 子供にはまだわからんか。
【分からせたら前科が付きますからね? 】
「あの、ミナト……! ちょっと耳を貸してくれるか……? 」
「ん? なんだ、内緒話か? 」
「ちゅ」
……ほう、これはたまげた。 ほっぺにキスか。 なるほどなぁ。 ……チェッ! これは近い将来子作りイチャラブセックス確定の証ってやつか。
「みっ、ミナト。 僕が……。 僕が騎士団で偉くなったら、また会ってくれる!? 」
「当たり前だろうが。 偉くならなくたって会いに行くぞ。 それまで女を磨いておけ」
「さっきの話だけど……。 まっ、まだ決めた訳じゃないからなっ! 」
ふぅ。 赤毛のさいかわ騎士団長と近いうちにえっちなことが出来るとはなぁ。 やれやれ、まるで企画モノAV、つまり夢のようだ。
「いいかレオ、俺から一つお願いがある。 もし騎士団長になったら髪型をショートボブに変えてくれないか? 俺はあれが好きだし、女騎士はショートボブと相場が決まっている」
「ん? しょーとぼぶってなんだ? 」
女のくせにショートボブも知らないか。 まったく、さいかわというのは世話がやけるものだ。
「あいてむぼっくす」
「あ、また変なタンスだ」
レオが声を上げて笑っている。 この短い時間で随分打ち解けたものだ。 まぁ子作りを誓い合う仲だしな、こんなものか。
さて……。 ショートボブを説明できるサンプルはと。 うむ、陰茎操作でコンビニの雑誌のコーナーを探ったが、こういう時に限ってショートボブの表紙がない。 パラパラめくって探すのも面倒だからな。
「ミナト、どうして引き出しを覗きながら……。 その……。 お、おちんちんを弄っているんだ? 」
「ん? あぁ、これがつまり『自慰に耽る』だ。 一つ勉強になったな」
【お巡りさ〜ん。 こっちでぇす】
『いらっしゃいませぇ』
……ほう! このコンビニ店員は茶色のショートボブだな。 何という偶然、奇跡か? キューティクルもあってお手本のようなショートボブだ。 顔はどうだ……62.5点か。 よし、少々レンタルさせてもらおう。
「271円のお返……ヒィッ! だ、誰」
「チョリーッス。 悪いなコンビニ店員さん。 これから異世界のロー村までヘルプに来てもらう」
「キャーっ! 触らないでぇ! イヤァ! 変態っ! いやぁーーーー! 」
「大人しくしろ! どっせぇぇい! 」
「えっ!? タンスから女の人が出てきたっ……! なに? そのタンスどうなってるの」
青と白、縦縞のユニフォームを着た店員は狼狽えている。 俺とレオを見て、目を丸くしながら周囲を見回すと、座り込んでしまった。
「え、なに……? どこ、ここ。 ゆ、ゆめ……? 」
「はぁ、はぁ。 レオ、この髪型がショートボブだ。 記憶しろ」
「あ、うん。 なんか中途半端な長さで、うっとおしそうだけど……。綺麗だね? で、その女の人は……? 」
「この女はレジ打ちマスターだ。 近年レジの自動化が進み、絶滅危惧種に指定されるだろう」
「よくわからんけど、レジウチ・マスターか。 強そうだ」
「手荒な真似をして悪かったな店員さん。 今度から雑誌コーナーにヘアカタログ的なものを置いておけ。 さぁ、引き続きレジ打ちに精を出してこい」
「キャーーー! 来ないで! 触らないで! 変態ぃ! キモい、キャーーーーー! やめてぇーーー! 」
店員を担いでタンスに押し込んだ。 最後に蹴りかコブラツイストでもキメてやろうかと思ったが、悪いのは全裸で異世界に拉致した俺だしな。 まぁ、何はともあれこれでよし……と。
「今日は不思議なことばかりだっ! 騎士団の依頼に命を懸けて……。 失敗して、死を覚悟した。 ついさっきまで犯されて殺されると思っていたのに……。 今は聖獣の背中に乗って、家に帰ろうとしてる! ……なんて日なんだろうっ! 」
ふむ、楽しそうだ。 楽しそうな女ほど見ていて癒されるものはないな。
「レオ、人より寿命が短いくらいで卑屈になんかなるなよ」
「もちろんだっ! 僕はこれからも全力で生きる! 決して悔いの残らないよう、一日たりとも無駄にするもんかっ! 」
よし。 俺はここで見送って、カルネロ兄妹やチョリスのアホに振る舞うたこ焼きパーティの準備でも始めるとするかな。
「……なんだぁ? ミナトはよく泣くなぁ。 よしよし」
「やめろ。 セックスの機を逃したのがくやしいだけだ、大人の頭を撫でるんじゃない」
顔を上げると、レオは誇らしげな顔で指を三本立てていた。
「見てろよ、ミナト。 三年だっ。 僕は三年で騎士団を上り詰めてみせるからなっ! 」
「そんなに待てるか馬鹿者が。 三ヶ月で騎士団長まで駆け上がれ」




